表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/204

野宿をするようです

 「ふわあ……おはよ、カトレア」

 「……ユート様、言っておきますが今はもう夕方ですよ?夜寝られるんですか?」

 「そんな子供じゃないんだから大丈夫だよ……多分………」

 「多分!?今多分って言いました!?寝かしつけるのは私なんですから少しは考えてくださいよ!」

 

 よかった、いつものカトレアだ。一言余計だけど。


 「でもなんでここで止まったの?今日はここで野営ってこと?」

 「そうですね。ここから先は頻度は少ないとはいえ、魔物が現れますから。安全な場所で一夜を明かそうということなんだと思います」

 「そっか。じゃあ、準備をしなきゃいけないのかな?」

 「はい。野営の準備は各々でしろということでしたので。とは言っても、馬車を貸してくれるのでしたらそこまですることもありませんが………」

 「そこまでってことはやることあるの?」

 「馬車の護衛のためにいるのですから、夜に備えて火は必要ですよ?見張りをするのに明かりがなければ何も見えませんし」

 「それもそうか。じゃあ、薪とかが必要?」

 「はい、できればたくさんあるといいですね。夜に切れたら困りますし」

 「わかった、じゃあ取って来るね」

 「え?それは私もついていった方が………」

 「馬車のことを忘れるな。自分で言ったばかりだろう」

 「ひゃっ、クロさん!?脅かさないでください!」

 「考え事をしていたお前が悪い。主のことは我に任せろ。どうせ大量の薪を収納しておかなければならないだろうしな。何度も行って帰ってを繰り返すのも馬鹿らしいだろう?」

 「そ、それは………」

 「それに何かあったときお前の方が早く気付ける。危険を察知するのならお前の方が適しているさ」

 「わかりました………」

 「まあ、主のことを心配しているのはわかるがな。お前は単に離れたくない気持ちの方が強いだけではないのか?なにせ、お前は………」

 「わあぁぁぁぁ!何を言ってるんですか、クロさん!ユート様、誤解、誤解です!」

 「うん………?何かよくわからないけどわかったよ?」


 変なカトレア。いつもの調子に戻ったのはよかったけど。


※               ※               ※

 「これくらいでいいかな?」

 「そうだな。問題ないだろう。むしろ多いくらいだ」

 「そう?よくわかんないや」

 「それもそうだろう。主にとって野宿など初めての経験だろうしな」

 「あれ、僕のことは話せないんじゃなかったっけ?」

 「これくらいは構わないだろうさ。そもそも野宿をしたことがある人間は元の世界でもこの世界でも少ないだろう。向こうに比べれば、こちらは多いがな」

 「そうなんだ」

 「それよりも早く帰った方がいいのではないか?カトレアは一人にしておくとトラブルに見舞われやすいからな」

 「そうだね、心配だし早く戻ろっか」


 カトレアを一人にしておくと変なことばっかり起こる。僕が元の世界に帰った後が心配だよ。大丈夫かな?


 「?誰かいるよ?」


 元の場所まで戻ってきたのはいいのだけれど、カトレアが知らない人たちと話してる。知り合いなんだろうか?格好を見る限り三人は冒険者のようで、皆女の人だった。


 「カトレア?その人たち誰?」

 「あ、ユート様。こちらの方々は同じ依頼を受けた冒険者の人ですよ。挨拶に来てくれたんです」

 「そうなんだ。僕はユート。よろしくね」

 「ああ、短い間だろうがよろしく頼む。私はシンシア。このパーティーのリーダーを務めている」

 「……アーネストよ」

 「アリスです。よろしくお願いします」


 シンシアさんは自分の身長ほどもある大きな盾を背負っている。重くないのかな?って思ったけど、そんな風には全く見えないから凄い。あ、あと僕よりも背が高かった。そんなに小さくないと思うんだけどなあ?シンシアさんの背が高いだけなのかな?何というか綺麗っていうよりかっこいいって言葉の方が合いそうだった。

 アーネストさんは腰に細身の剣――――レイピアって言うんだっけ?それを挿していた。この人はシンシアさんに比べるととても小さくて、かわいいって言葉の方が似合いそう。ただ、どうしてなのか僕を睨んでいる。勘違いっていうこともあるだろうし、あまり深くは考えなかったけど。

 アリスさんは魔法使いなのかな?杖を持っていて、優し気に微笑んでる。それを見て何故かシルヴィアさんを思い出したのだけど、これもまたよく考えず流した。


 「ところで、ユート君でいいかな?君はこの子を残して何をしていたんだい?」

 

 あ、それでアーネストさんは怒ってたのかな?


 「薪を取りに行ってたんだ。夜に必要になるだろうからって」

 「そうかい?でも、成果はなかったみたいだね」


 苦笑しながらシンシアさんがそう言う。むむ、失礼な。


 「カトレア、これくらいで足りるかな?」

 

 そう言って、クロに影から大量の薪を取り出してもらう。


 「多すぎですよ!絶対に余ります!」

 「え、でも、いっぱいあった方がいいんじゃないかな?」

 「……普通は余って捨てますけど………クロさんがいるからそんなことにもならないんですよね…………」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ。これは一体どこから取り出したんだい?」

 「そこからだけど」


 自分の影を指さす。クロがいると本当に助かるよね。そういえば元の世界に戻ったらクロはどうなるんだろう?あの頃は普通の犬だったから、元に戻っちゃうのかな?それはちょっと寂しい。


 「……ということは君のスキルで貯めておいたということなのかな?」

 「僕じゃないよ?クロのスキルだよ?」

 「クロ?それは誰かな?」

 「全く主よ。もう忘れたのか?いつものことではあるが」


 クロが影から出てきた。忘れたって言っても何のことやら……あ。


 「そういえばカトレアと約束してたんだった」

 「もう忘れてたんですか!?」

 「いつものことだ、諦めろ」

 「これは驚いた。君は魔物使いなのかな?」

 「魔物使い?うーん、そうなのかな?」


 一応、魔法も使えるし………


 「取りあえず、座りながら話そうか。君たちのことを知りたいしね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ