あなたは誰?
結局、また時間が空いたという……学校が忙しいから………はいわかってます、言い訳です
さっきのラルフさんの話を纏めるとこういうことらしい。
まず、5つの馬車のうち1つは人を乗せるための馬車であること。それは縦に並んだとき、真ん中に位置するものがそうみたい。で、残りの馬車はすべて荷馬車みたい。
次に、この依頼を受けた冒険者グループは4組であること。カトレアの話だと少ないみたい。お金を使うのが嫌だったのだろうってクロは言ってた。まあ、乗合馬車の中には冒険者の人がいるみたいだから大丈夫なのかな?
で、最後に僕たちが守るのは一番後ろの馬車。荷物に触らず、後で馬車の中を掃除してくれるなら自由に使っていいらしいよ。後、注意事項として乗合馬車には近づくなって言われた。なんでも客に不快になられるのは困るからだとか。明らかにカトレアに向けて言っているのだろうけど、カトレアは気にしてないみたいだったから黙っておいた。変な感じにはなったけど。
そして、出発したわけなんだけど………
「ふわあ~………」
馬車の中ってやることないんだねえ。天気も良くて暖かいからなんだか眠くなってきちゃったよ。
「ユート様?眠いのですか?」
「うん、何もないからさ」
「まあ、確かにそうかもしれませんね。何かあったら起こしましょうか?」
「お願い」
それだけ言って、意識を手放す。もう限界だったからね………
※ ※ ※
(ああ、また記憶の夢か)
ここではないどこか。ふわふわと浮いた感覚。何度も経験すると慣れてしまう。自分はここにいるのにもう一人自分がいる、という状況にもまたか。っていう気持ちしか湧いてこない。
(今日はどんな記憶なのかな?いつもとは場所が違うみたいなんだけど)
いつもはなんだかごてごてしたものがいっぱいあるところだったり、殺風景な部屋だったり、異常なまでに広い室内だったりするのだけれど、今日はまた違う場所だった。一面どこを見渡しても真っ白。境界線なんてものはどこにも確認することができない。
(随分と変わった所だねえ……こんな所なら忘れそうもないんだけど………)
それとも、僕のいた世界では頻繁にこんなところがあったのだろうか?僅かな手掛かりから推測しようとするも全然集中できない。カトレアにもシルヴィアにも言われたのだけれど、どうも僕は集中力が極端にないらしい。そんなことはないよ、って言っても否定された。なんでだろ?
(あれ?あの人誰だろう?)
この真っ白な世界でたった一つ異色な存在――――いや正確には、記憶の中の僕とここにいる僕を含めれば二つなのだけど――――一人の子供がいた。金色の髪に幼く、可愛らし気な目鼻立ち。背丈は140くらいだろうか?更に、軽く抱きしめれば折れてしまいそうなか細い体型をしている。
こんな所に一人でいれば、普通は迷子かなと思うだろう。なのに、何故か自分の意思でそこにいるかのように思えた。
一方、記憶の中の僕は随分と憔悴しているようだった。何があったのだろう?
「………君は誰?ここはどこ?」
おもむろに過去の自分が口を開く。その言葉を聞いて、金髪の子供は笑顔を浮かべた。
「よかった。どうやら話す気力はあるみたいだね」
「そんなことはどうでもいいよ……元の場所に戻らないと………やることがあるんだから…………」
「行ってどうするんだい?」
その子は蒼穹の瞳に記憶の中の自分を映す。急に違和感を覚える。目の前の子供は本当に子供なのだろうか?確かに見た目は子供なのだ。だが、態度やその目、雰囲気は大人のそれと同じ……いや、それどころか超越者、とでも言うのだろうか?そんなことを考えさせられた。
その間にも話は進む。徐々にノイズが走り始めた。
「確かに君ならばそれもできるだろう。けれど、そうしたところで何があるのかな?君の元には何も戻りはしないさ」
「……君は何なの?」
「そうだな……僕のことは神とでも呼びたまえ。不完全だけどね。まずは謝ろう。君に災難ばかり降りかからせてしまったことを。それにこれからも降りかかることを」
「―――――――――――は君のせいなの?」
「正確には、僕の手を離れてしまった運命とでもいうもののせいだね。もっと僕が気を付けていればこんなことにはならなかっただろう」
「なら―――――」
「君に僕は殺せない。感情や覚悟云々はなしにしてもね。そんなことよりももっと建設的な話をしようじゃないか」
「……建設的?」
「そう。君には二つの選択肢がある。一つは――――――――――。これはお勧めしない。今の生活がずっと続く……いや、もっと酷くなるだろう。今まで以上に辛い日々が待っていることになる。もう一つは―――――――――――。こちらはこれからのことはわからない。何しろ僕の手を離れることになるのだからね。ただ、自分の手で運命を切り開くことができる。時間は多くはないが、まだある。ゆっくりと考えて………」
「……もう決めたよ」
「早いね。それで?どちらを選んだんだい?」
「僕は―――――――――」
「ユート様、起きてください」
段々とそこから離れていく。起きる時間が来たようだ。でも、本当はもう少し寝ていたかった。なぜなら――――
(あの子は僕の記憶のことを知っている気がする………)
何の確証もないのだけど、そう思った。
(ねえ、君は誰なの………?)




