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お祭りに行こう 後編

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 「ところで、カトレアという者はもともとユート様専属のメイドではありませんでしたか?」

 「うん、そうだよ。なんで?」

 「いえ、何故その名前が出てきたのかと思いまして」

 「えっとね、確かお城を追い出されたところでたまたま会って一緒にいるんだよ」

 「そうなのですか?それはよかったかもしれませんね」

 「なんでさ?カトレアもお城を追い出されたんだよ?」

 「ええっ!?ユート様が追い出されたから追って行ったのではないのですか!?」

 「違うよ?僕が追い出されるからお役御免で追い出されたみたい。なんか悪いことしちゃったよね………」

 「それは……何とも言えませんね………」


 この国のことを見てるとなんだか酷い人ばっか、って気がしてくるよね。勿論中にはシルヴィアさんやアルバートさんみたいにいい人もいるんだけど。あ、そういえば。


 「そういえばシルヴィアさんって、カトレアのことを差別しないよね?どうして?」

 「そもそもそういうことをしている人がいるということが許せないのですが……質問に答えるとするなら母の影響かもしれませんね」

 「お母さん?」

 「はい。母からはどんな人であっても偏見を持たずに接しなさいと言われ続けてきましたので。勇者様たちには持っていたのが恥ずかしい所ではありますけれど」

 「ふーん、僕は気にしてないからいいんだけど。いいお母さんなんだね」

 「そうですね。あの人の娘で幸せでしたよ」

 「……もしかして今聞いちゃいけないこと聞いちゃった?」

 「いえ、そんなことはありませんよ?こうして母のことを話す機会などほとんどありませんでしたから。ユート様には感謝しています」

 「そう、よかった」

 「こちらからも聞きたいのですが、カトレアさんはどこにいるのですか?一緒にいませんが………」

 「……聞かないで」

 「……もしかしてですが………はぐれちゃったんですか?」

 「ち、違うよ………」

 「ちなみに何に気を取られたんですか?」

 「べっこう飴……はっ!」

 「やっぱりはぐれたんじゃないですか」

 「うう……後でカトレアに怒られる………」


 思い出さないようにしてたのに……怒られるのは変わらないんだけど。


 「まあ、今はお祭りのことを考えましょうか。見たいところなどはありますか?」

 「うーん、じゃあ………」


※               ※               ※

 「……結構周りましたね」

 「うん、流石に足が痛くなってきたかな?」


 近くに座れそうなところがあったからそこに二人して座る。クロはどうやら影の中にいるみたい。お金を渡してもらってるから好きそうなの買ってあげたんだけどね。あ、調味料なんかはつけてもらってないよ。塩分の取り過ぎになるし。クロはもう犬じゃないから適切な塩分量はわからないけど。


 「それにしても食べ物ばかりですね」


 シルヴィアさんが苦笑する。


 「だって、見たことないもの……って言っても、記憶ないから見たかどうかもわからないけど。それでも、知識で持ってないものがいっぱいなんだもの。どんな味か知りたくならない?」

 「少しわかるかもしれませんね。私たちの国は海に接していないのでありませんが、接しているところでは魚がよく食べられていると聞きます。私は食べたことがないので気になります」

 「でしょ?」

 「そのためにも、頑張らないといけませんね。頭に平和になったらがつくでしょうし」

 「?シルヴィアさんは頑張ってるじゃない」

 「もっと頑張らないといけない、ということです。魔族のことで不安になっているでしょうし、私の力もまだまだです。だから………」

 「えい」


 シルヴィアさんの頭を小突く。……ちょっと痛かった。


 「な、なんですか?」

 「また、一人で背負いこもうとしてる」

 「そ、それは………」

 「全部人に押し付けないことはシルヴィアさんのいいこところだと思うよ。でも、気負いすぎだよ。何でもかんでも一人でできるわけじゃないでしょ?」

 「そうかもしれませんが………」

 「例えばさ。僕が頼まれごとをされたとするじゃない?でも、その頼まれごとが重いもの持って、だったら僕はできないよ。だから誰かに頼る。クロでもいいし、いたらジリアンさんとかアルヴァさんでもいい。それは人に頼り過ぎてると思う?」

 「…………」

 「誰だって苦手なことやできないことはあるよ。だから誰かの力を借りなきゃいけない。シルヴィアさんが気に病むことはないんだよ」

 「でも……辛いんです。何もできない自分が。私は役立たずなんじゃないかって、そう思って………」

 「そんなことはないよ。だってシルヴィアさんは助けてくれたじゃない」

 「え………?」

 「ほら、お城を追い出されたとき。王様にせめて元の世界に帰すことだけでもって言ってたじゃない」

 「でも、結局何もできませんでした………」

 「それでもだよ。それにあの場でジリアンさんたち以外に助けようとしてた人がいた?それにそれだけじゃなかったでしょ?前にジリアンさんがお風呂で凛花さんとコルネリアさんを見に行ったとき、シルヴィアさんは部屋まで付き添ってくれたし。僕の方こそ申し訳なくなるよ」

 「……本当に、いいのでしょうか。私は人の力を借りて………?」

 「うーん、そこまで気にしちゃうんだったらさ。他のところで助けてあげたらどうかな?さっきも言った通り、誰だってできないことはあると思う。それはジリアンさんでも凛花さんでもコルネリアさんでも。それこそアルヴァさんでも。その人たちが困ってるときに助けてあげれば少しは楽になると思うよ?」

 「そう、かもしれませんね。すみません、このような話を聞かせてしまって」

 「ううん。やっとシルヴィアさんの役に立てたみたいでよかったよ。それにシルヴィアさん、笑ってるし」

 「それはどういう………」

 「シルヴィアさん、お城にいた頃からあんまり余裕がない感じだったから。それにシルヴィアさんが笑ってるとこ、苦笑してるの数えなかったら召喚したときくらいじゃなかった?」

 「数えてたんですか、そんなことを?」

 「そんなことじゃないよ。何となくだけど、シルヴィアさんのことは気になってたしね」

 「そうですか……って、ええっ!?」

 

 あれ?なんだか驚くようなこと言ったかな?


 「取りあえず、困ったら誰かを頼ってね?誰でもいいんだから。なんなら僕でもいいし」

 「……どうやって頼るのですか?私たちと一緒に行動するわけではなさそうですが」

 「うーん……まあ、助けてって言われたら助けに行くと思うよ?クロの力借りるなり何なりして」

 「ふふっ、しまらなくなりそうですね」

 「そうなんだよね……結局クロ頼みだからなあ………」

 「……頼りにさせていただいてもいいのですか?」

 「うん、約束」

 

 そう言って小指を差し出す。


 「ええと、これはどうすればいいのですか………?」

 「ちょっと小指出して」

 「は、はい」

 

 そう言って差し出してくれた小指を絡める。口を開けば言うべき言葉はすらすらと出てきた。


 「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます。指切った」

 「……なんだか物騒な言葉が聞こえたのですが」

 「こういうものだから。ちゃんと約束したよ」

 「主よ。カトレアがいたぞ」

 「え、本当に?早く戻らないと怒られるかな?シルヴィアさんはどうするの?送っていこうか?」

 「大丈夫です。知り合いがいたので。それではまた」

 「うん、またね」


 そう言ってカトレアの所に向かった。遠くからでも怒った顔でこっちに走ってきているのがわかる。さてと、どうやって謝ろうかな?


※               ※               ※

 「行ってしまいましたか………」


 まだ小指にはぬくもりが残っているような気がする。勇者の中でも一番弱くて、そして不思議な人。きっとこれからもどこかで会うのだろう。それに助けを求めれば来てくれると言う。根拠はないというのになぜか信じてしまっていた。不思議な雰囲気であるせいなのか、それとも………


 「おいおい、見失っちまったぞ。どうすんだ?」

 「ど、どうしましょう……また、あんなことになったら………」

 「どうしたのですか?」

 「いや、カトレアを見失って……って、シルヴィア!?」

 「あまり大きな声を出してはだめですよ。気付かれてしまいます」

 「え?どうしてここに?」

 「それは後で話しましょうか。それにカトレアさんの方も心配ないと思いますよ」

 「そ、そうなんですか?よかったです………」

 「ねえ、シルヴィア」

 「なんでしょう?」

 「何かいいことでもあった?」

 「秘密です」

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