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閑話 恋愛相談?‐3

 「……俺の気持ちに気付いてたってのは本当なのか?」

 「それは間違いないと思うんだけど………」

 

 結局、エリサさんから聞いたことを包み隠さずすべて伝えることにした。話が進まないと思ったし、正直どうしたものかと二人で頭を悩ませても最後はアルバートさんが決めることだと思ったしね。ちなみにクロは何も言ってこなかった。そんなに興味がないのかな?

 

 「……実を言うとな、俺もエリサの過去のことは知ってんだ」

 「え!?」

 「俺はエリサの姿見たさに宿に泊まりこんでた一人でな……その冒険者とエリサが仲良くなってんのを見ては嫉妬してたもんさ。魔物が近づいてきたときにそいつが死んでほっとしてたよ、最低なことにな。でもその後はひどかった。エリサは今でこそあそこまで回復しちゃいるが、その頃はもう生きる気力なんかなくしちまったんじゃねえかってほどに憔悴してたよ。それを見て許せなくなっちまったんだ。一瞬でもそいつがいなくなって安心した自分自身に。だから俺は………」

 「……そういうこと、だったんですか」

 

 話を聞いてて思ったんだけど………


 (なんか段々僕の手に負えない話になってきてない?)


※               ※               ※

 「大変なことになってしまいましたね………」

 「うん。正直どうすべきかわからないよ。なんで軽い気持ちで聞いてくれみたいな感じから始まって、物凄く重い話になったのかな?」

 「主がお人よし過ぎるからではないのか?」

 「クロって時折僕を馬鹿にしてるよね?本当に慕ってるの?」


 クロの方を見ると暢気にあくびしてるし。怪しいなあ………


 「これからどうしましょう?」

 「うーん、別れ際に気にしなくてもいいって言われたけど……でも、ここで放り出すのも何かねえ………」

 「ユート様は本当にお人よしなんですね」

 「……馬鹿にしてる?」

 「いえいえ、たぶんそれはユート様の美徳だと思いますよ」

 「そうかな?」

 「はい」


 そう言われると悪い気はしないなあ。頑張って何とかしないと!


 「……別に悪く言うつもりではなかったからよかったんですけど………ユート様って鈍感過ぎませんか?」

 「……主らしいと言えば主らしいのだがな。少し心配している。だからこそ周りがしっかりしなければいけないのだが………」


※               ※               ※

 「あれ?アルバートさん?」

 「ん?なんだ、坊主か。どうした?」

 「いや、別にどうしたってわけじゃないけど………」


 あれから考えても考えてもどう言ったらいいのかわからなかった。そんな矢先、食事をとって部屋に戻る途中にアルバートさんに会ってしまった。


 「そういやすまなかったな。どうしていいかわからなくなっちまっただろ?」

 「え、ああ、いいよ。悩んでたら普通は誰かに聞いてほしいものだし」

 「そうか、そう言ってもらえると助かる。それとそのことなんだが……別に聞いてもらうだけでもよかったんだ。だから無理にどうにかしようとしなくてもいいぞ」

 「……アルバートさんはどうするつもりなの?」

 「ああ、別にどうもしねえさ。これまでと同じように………」

 「それでいいの?」

 「どういうことだ?」

 「本当にそれで後悔しないの?たぶんだけど、何もしないで後悔するよりは何かして後悔する方が後ですっきりできると思うよ」

 「……そうは言ってもな。俺はあいつが死んだことに………」

 「これもたぶんだけど、誰でも同じようなことがあったら同じことを思ってたと思う。それでも許せないんならエリサさんとその人にきちんと謝ればいいんじゃないかな?」

 「それでいいのか?」

 「僕にはわからないよ。大事なのはアルバートさんがどうしたいか、だし」

 「そうか……いや、そうだな。なんだか胸のつかえがとれた気がするな。坊主は先に部屋に戻ってろ。俺はもうちょっとやることがあるからな」

 「うん。いってらっしゃい」


 僕がそう言うとアルバートさんは来た道を戻っていった。エリサさんの所に行くんだろう。


 「随分といい助言だったな、主よ」

 「そうかな?思ったことを口に出したまでだったんだけど」


 やっぱり、僕には気の利いた助言なんてできそうもない。記憶はないし、あったとしてもこういった場面があるかどうか。だとしたら、自分が思ったことをそのままぶつけるしかなかった。無責任すぎるかもしれないな、とも思うけど僕にはこれ以上の答えは用意できないかな。

 なんだか気になるから少し待ってると、アルバートさんが出てきた。暗い表情ではなかったからフラれたわけじゃないのかな?見つからない方がいい気もしたから、クロに言って隠れさせてもらった。ただ、結果は気になるから当事者に聞いてこようかな?

 アルバートさんが出ていった食堂に入る。この時間ならまだエリサさんは働いてると思うんだけど。


 「ああ、あんたかい。どんな入知恵したんだか。アルバートのやつが付き合ってくれって言ってきたよ」

 「別に大したことは言ってないよ。エリサさんはなんて返したの?」

 「悩んでるんだよ。あいつの気持ちを無下にはできないけど……あたしはあの人のことを忘れることはできないしねえ」

 「うーん、なんでこの二人が付き合えてないのかわかった気がする」


 要は難しく考えすぎてるんだ。自分の気持ちを素直に伝えればいいのに、自分が許せないからとか忘れることができないからとか。そのまま伝えてだめならだめでいい気がするのに。それに――――


 「アルバートさんと付き合うのに、その人のこと忘れなきゃいけないの?」

 「……何言ってるんだい。忘れるようなものじゃないか」

 「え、だってアルバートさんに伝えればいいじゃない。その冒険者さんのことを忘れることはできないよ、って。それでも構わないっていうならそれはそれで考えればいいことだし」

 「……そういうものかね?それに、あの人が許してくれるかどうか………」

 「それはエリサさんが一番わかることなんじゃないかな?その人のことを一番知ってるんだから」

 「あんたは自由だね………」

 「そうかな?」

 「そうさ。だからこそ、眩しいのかもしれないね………」

 「眩しい?」

 「そうだね。気を付けた方がいいかもしれないよ。あんたのそういった性格は好む人もいるだろうけど、嫌う人もいるだろう。いや、寧ろできないからこそ嫌われる方が多いかもしれない」

 「よくわからないけど、心配してくれてるんだよね?ありがとう」

 「はいはい。ほら、もう部屋に戻りな。明日は依頼を受けに行くんだろう?」

 「あ、そうだった。おやすみなさい。クロ、戻ろう」

 

 そうして、部屋に戻った。上手くやれるといいな、あの二人。


※               ※               ※

 数日してだけど。アルバートさんとエリサさんは一緒にいる事が多くなった。上手くいってよかったね。二人を見かける度にそう思った。

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