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閑話 恋愛相談?‐2

 気がついたらもう食堂に。とても便利なスキルだよね。僕にも使えないかなあ?


 「あ、居た居た。エリサさーん」

 「ん?ああ、あんたかい。どうしたんだい?まだ昼には早いと思うけど」

 「そんなご飯のことしか考えてないみたいに言わないでよ。今日はエリサさんに聞きたいことがあって来たんだよ」

 「へえ、なんだい?」

 「エリサさんって、アルバートさんのことどう思ってるの?」

 「……主よ。普通そのまま聞くか?」

 「え?」

 「クロさん!間に合いましたか!?」


 そのとき、カトレアが駆け込んできた。全力疾走したあとみたい。


 「大丈夫?なんでそんなに慌てて………」

 「ユート様は少し静かにしていてください!」


 ……カトレアが酷い。そんなに怒るようなことした?


 「残念だがカトレアよ。間に合わなかったぞ」

 「そ、そんな………」


 あれ?カトレアが落ち込んじゃった。何か悪いことしちゃったかな?


 「はあ。そういうことかい」

 「エリサさん?どういうこと?」

 「あんたたち、アルバートに恋愛相談でも受けたんじゃないかい?」

 「ほら、ユート様!ばれちゃったじゃ……って、え?」

 「なんでそのことを知ってるの?」

 「逆になんであいつはばれてないと思ったんだろうねえ………」

 「でも知ってたならなんで教えてあげないの?」

 「そうだねえ……まあ、あんたたちには話してもいいか。昼は遅くなるだろうけどいいかい?」

 「僕はいいよ。カトレアは?」

 「私も構いません」

 「そうかい。じゃあ、何から話したもんかねえ………」

 

 そう言ってとある昔話を始めたのだった。


※               ※               ※

 昔、って言ってもそこまで昔じゃないか。まあ、あるところに一人の娘がいたんだよ。その娘は宿屋の一人娘でね。その宿の看板娘として誇れるくらいには美人だったんだよ。それに加えて働き者でね。宿に泊まる人たちにはよく付き合ってくれと言われてたようだね。

 だがある日、その女の子は一人の男の子と出会った。その子はやんちゃで後先考えないようなとんでもない子だったけど、困っている人を放っておけない優しい子でね。偶々水くみをしていた女の子を手伝ってあげたのさ。助けられた女の子とその男の子が仲良くなって、恋に落ちるまではそう長くはかからなかった。

 大きくなった二人はそれぞれ別の道を歩み始めた。女の子は宿屋の女将として。男の子は冒険者として。だけど二人は仲のいいままで、お金がある程度たまったら結婚しようと約束するほどだった。そんなときだね、事件が起きたのは。二人の住んでいたところに魔物が近づいてきてたのさ。その魔物はとても強力で、冒険者たちの力をすべて注ぎ込まなければいけないくらいだった。勿論、冒険者であるその男の子も参加しなきゃいけなかった。男の子は必ず戻ってくると女の子に約束して魔物と戦いに行ったよ。

 結果はたくさんの死人が出ながらも、そこに被害が出ることはなかった。これで終わればめでたしめでたしだったんだろうけどねえ。そのたくさんの死人の中に男の子がいたのさ。女の子は悲しんで、悲しんで、神様を呪った。どうしてこんなことになったのかとね。けどどれだけ悲しんだところで男の子が帰って来るわけでもないし、女の子がいなきゃその宿は回らないくらいにはその宿にとって女の子は必要な存在だった。女の子はその悲しみから逃げるように仕事に勤しんだ。そうして働いているうちに可愛らしかった女の子は年を取って、誰も付き合ってとは言わなくなった。まあ、言われたところで男の子のことがあるから付き合えなかったかもしれないけどねえ。

 結局、何の話かって?さあ、何の話だろうね。え?お腹が空いた?じゃあ、昼を作ろうかね。


※               ※               ※

 「結局、あれ何の話だったの?」

 「ユート様、察しましょうよ……多分ですけど、エリサさんの昔の話だと思います。アルバートさんの気持ちに応えられないのもきっと………」

 「……そう、なんだ」


 困ったなあ。アルバートさんになんて言えばいいんだろう?アルバートさんの部屋に向かうまで頭を悩ませ続けたのだった。

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