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従魔

 「終わったかな?」

 「終わっただろう。あれで生きていたらそれはもはや化け物だ」

 「そうだよね。カトレアはどう?怪我とかない?」

 「ええ、ありませんが……その子は一体………?それにさっきの魔法は………?」

 「ああ、ええっとね、この子は………」

 「主よ。取りあえず帰ってからの方がいいのではないか?また別の畜生共が襲ってくるかもしれないぞ。それに野宿用の道具はないのだろう?」

 「それもそうか。帰りながら話そうかな」

 「は、はい………」


 なんか驚きすぎてかける言葉が見つからないって感じに見える。でも、僕も驚いてるんだよ?

 移動しながら話し始める。クロのことと自分との関係、そして思い出したことなどを。魔法のことも聞かれたからこんな感じで使えるんじゃないかなって思ったんだよ、と言ったら呆れた目で見られた。どうしてさ?


 「何というか……無茶苦茶ですね………」

 「おかしいだろ……なんで無詠唱でいけると思ったんだよ………」

 「え?いけないの?」

 「普通はできませんからね………?」

 「おそらくだが主は必要ないものと考えたのだろう。幼少期から魔法の存在を知っているならまだしも、主には記憶がない。何のための詠唱かわからなかったのがこの結果なのではないか?」

 「クロは頭がいいねえ」


 そう言って、頭を撫でてやる。クロも嫌がる様子はなく、なされるがままになっていた。


 「ところでなんだけどさ、クロ。聞きたいことがあるって言ったじゃない?」

 「ああ、言っていたな」

 「じゃあ、聞くんだけどさ。いつから君は狼になったんだい?」

 「聞くな、主よ。自分でも戸惑っているところだ」

 「喋れるようになったのもその影響かなあ?」

 「そうなのではないか?」

 「それともう一つ聞きたいんだけど……なんで主って呼んでるの?」

 「もう一つがそれか……てっきりなくした記憶のことかと思っていたぞ。まあ、その答えは主が主だからだ」

 「答えになってないよ?」

 「捨て犬だった我を救ってくれたのだ。主でなくて何だというのだ?」

 「え、捨て犬だったっけ?そこらへんは覚えてないけど、友達とか家族とかあるんじゃないかな?」

 「相も変わらずおかしな考え方だ。我が自分で勝手に思ってるだけなのだから、主も我のことを好きに思うといい」

 「わかったよ」


 意外と頑固なところがあったようです。ちょっと新鮮。


 「そういえばクロのステータスって見れるのかな?」

 「見れると思うぞ」

 

 あっさり言うなあ。まあ、いいか。早く見よう。気になるし。そうやってステータスを確認しようとするとカトレアから声がかかった。


 「ユート様。普通は人間や獣人といった種族にしかステータスはないんですよ?それに自分以外のステータスは見ることができませんし……例えその子が魔物でも見ることはできないです」

 「そうなの?でも物は試しって言葉あるし。やってみるだけやってみるよ」


 クロのステータスを見ようと念じるとそこにはステータスらしきものがあった。ただ………


 「ステータスが載ってないよ、クロ。あるのはスキルだけみたい」

 「そうか。やはり見れるか」


 む~。僕の話ちゃんと聞いてるんだろうか。この世界に来てからクロが悪い子になっちゃった。


 「ええ!?なんで見れるんですか!?」

 「うーん、それは宿に戻ってからにしようかな」


 カトレアにはすべて話しておきたいし。ちょっと疲れたしね。ゆっくりできるところで話したいかな。


※               ※               ※

 宿に戻り、後は寝るだけという状態になってから。僕はカトレアとクロを交えて話をしていた。

 クロのスキルはこんな感じだった。


   クロ  (種族:影狼(シャドーウルフ)


    【所持スキル】《影潜伏》、《影移動》、《影分身》、《影収納》、《従魔の証》


 「なんでしょう……もう滅茶苦茶なスキルですね………」

 「そうかな?すごいと思うよ?」

 「だから困ってるんです………」


 カトレアが頭を抱え込んじゃった。頭でも痛いのかな?


 「いいですか、ユート様。くれぐれも外で大っぴらにクロさんを出さないでくださいね?」

 「なんで?」

 「狙われるからです。間違いなく何としてでも捕まえて、自分の言いなりにさせようとする人が出てきます。そういった人は大抵荒事も辞さない考えですから知られないことが一番なんですよ」

 「そっか。カトレアがそう言うならそうするよ」

 「お願いですからもう少し危機感を持ってください………」

 「ふむ、苦労しているな。カトレアとやら」

 「それがわかるんだったら協力してくださいよ………」

 「次からはそうするとしよう。どうやらお前は信用できそうだからな」

 「今まで助けなかったのはそれが理由だったんですか!?」


 カトレアとクロも仲良くなったようで何よりだよ。そういえば。


 「ねえ、クロ。僕の記憶のことなんだけど知ってることない?」

 

 すると、クロはこっちを向いて目を見た。そしてなぜか謝ってきた。


 「すまない。我はそれに答えることはできない」

 「どうして謝るのさ。知らないならいいよ」

 「そうではない。知っているが答えることを禁じられているのだ。それがなければ話せているというのに」

 「ん~、でもそれでもいいよ。クロがどうにかしようと思ってくれているみたいだし」

 「すまない」

 「だからもういいって。さっき自分のステータスも確認したし、やり残したこともなさそうかな。今日はもう寝るよ」

 「おやすみなさいませ」

 「おやすみ~」


 そう言って、布団に潜る。今日はいろいろなことがあったからだろうか?すぐに瞼が重くなり、夢の世界へと旅立った。


 ユート Lv10


MP 2500

STR 7

VIT 6

DEX 4

AGI 5

INT 18

LUK 110


 【所持スキル】《------》、《従魔の証:クロ》、《特殊水魔法》


※               ※               ※

 「ふう、寝たか」


 主はいつも寝るのが遅かったから不安だった。いつ倒れるのかと。落ち着かせるために後ろをついて回ったのも、ブラッシングをしてもらったのも懐かしい。ブラッシングするのが好きなのは流石におかしな主だとも思ったが。心地よかったからなされるがままにはされていた。

 この世界はいいところだ。魔族がどうだの言っていたが人はたくましく生きている。それに………


 「カトレアとやらも主に何か思うところがあるようだしな」


 あれは裏切るということはないだろう。主が死にそうになっていたとき、本気でどうにかしようとしていた。大事な人になりつつあるのだろう。


 (なればこそ、主にはあれ(、、)を思い出せてはならんな)


 主の記憶喪失は半分が外的要因、もう半分が自身によるもの。だが、正直思い出さなくてもいいと思っている。ここで骨を埋める方が幸せなのではないか、とも。

 いずれにせよ、今の自分は見守るだけだ。クロはそう結論付け、主の影へと潜った。




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