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それでも、代償は大きく

 コルネリア様が治療を続け、ひとまず峠は越えたとのことだった。その言葉にカトレアと二人でホッとし、看病を続けることにした。父も八魔将がすべていなくなったことで安堵したらしく、咎めて来るようなことはなくなった。

 けれど、やはり何の代償もなかったとは言えないようだった。コルネリア様は治療を終えてから、非常に言い辛そうに私たちにユート様の状態を教えてくれた。


 「命に別状はないと思います。これから状態が急変することも、恐らくですがないでしょう。でも………」

 「でも?」

 「寿命は間違いなく縮んでいると思います……身体機能もこれまで以上に低下するでしょうし………一生、ベッドの上で過ごさなくちゃいけないかもしれません………」

 「そう、ですか………」


 覚悟はしていたけれど、やはり状況は厳しいようだ。コルネリア様の申し訳なさそうな顔で、それが真実なのだとはっきりわかる。


 「大丈夫ですよ。生きてさえいてくれれば、それだけでいいんです。ここにいてくれれば………」

 「……すみません………」

 「謝らないでください。コルネリア様がいてくれて、本当に助かっているのですから」


 コルネリア様はそれから定期的に顔を出してくれるようになった。その気遣いは嬉しく、素直に受け取っておくことにした。ユート様の身体がよくなるのなら、それに越したことはないから。今日も私たちが外出する前に来てくれていた。

 外出した先は先ほど訪れた墓だった。あの魔物を連れ帰った私たちは、後宮にある中庭へと埋めたのだ。ユート様を救ってくれたことの感謝と、これまで共に戦ってくれたことの労いの意味を込めて。私は1日1回程度、カトレアは1回、ないしは2回向かっている。多いときは3回以上向かうときもあるようだ。それだけ伝えたいことがあるのだろう。……カトレアの方へは優しかったようだから。


 「それではよろしくお願いします」

 「はい」


 カトレアが体を拭いてあげたいというので、私は外に出る。実のところ、私がやりたい気もあるのだが、そういうわけにもいかない。いくら相手が勇者様とはいえ、私は一国の姫である。そんなことは侍女にやらせろ、と言われるのがオチだ。

 それに、今の私にはやらなければいけないこともある。それが終わるまでは、浮かれた気分でいるわけにはいかなかった。


 (そろそろ時間になるでしょうか………?)


 カトレアに一言を掛けて、何かあったら呼ぶように頼む。彼女は頷いて、再び作業へと戻った。

 私は部屋を出て、次に行くべきところへと歩いていく。そこまで離れているわけではないので、さほど時間を掛けることなく着くことができた。だが、着いたのは私が最後のようだ。


 「すみません、遅れました」

 「ああ、構わねえよ。次は別にそこまで急ぐことはねえんだろ?」

 「そうですが、早めに対処するに越したことはないでしょう。それで平和が戻るのですから」

 「そうかい。ま、俺はどちらでも構わねえよ」


 部屋には凛花様、ジリアン様、コルネリア様、アルヴァ様が揃っている。私は一つ深呼吸をし、それを口にした。長かったこの生活を終わらせることを。


 「本日集まっていただいたのは、最後の戦いについて……魔王を倒すことについて話すためです」


 場の緊張度は一気に上がった。それはそうだろう。ようやく終わりが見え……そして、八魔将を超える存在と戦わなければならないのだから。クロノに手も足も出なかったのだから、考えることは山ほどあるのかもしれない。

 けれど、そもそもの問題として考えなければならないことがある。それが今回話し合おうとしたことなのだ。


 「まずなのですが、魔王のことについてです。魔王は人の住むところへは出て来ないらしく、その姿すらわかりません」

 「ん?じゃあなんでいるってわかんだ?」

 「八魔将や魔族などが口にしてきたからですよ。それがなければ、私たちも一番の敵は八魔将だと思っていたでしょう」


 そして、問題は他にもある。魔王の姿がわからないことも厄介なのだが、それ以上に厄介なことがある。


 「また、魔王がどこに存在するのかもまったくもって不明なのです。私たちがやらなければいけないことは、魔王を見つけることからとなります」

 「とはいえ、この世界も広い。しらみつぶしに探すとなると、時間が掛かり過ぎるのではないか?」

 「ええ、わかっています。ですので各国の協力を得て、捜索にも協力してもらっていたのです。その結果、このようなことがわかりました」


 アルヴァ様の質問に答えるため、侍女に地図とペンを持って来てもらう。用意はしてあったらしく、すぐに地図を広げて、説明を始めることができた。


 「問い合わせた国々では魔族、または魔王といった存在を見つけることはできなかったようです」

 「ああ?それじゃあ意味がねえじゃねえか」

 「いや、そうとも言えないみたい。でしょ?シルヴィア」

 「はい。見ていてほしいのですが………」


 私は国に×を付けて、魔王がいないところを消していく。シュレンブルク王国。隣にあるヘイム帝国。バーホルト国。サクラ連邦。他にも、いくつかの国を。すると、一つだけ×が付いていないところが存在した。それはこの大陸ではないが、十分な大きさを持つ島。人ではとても住むことができないと、大昔に人が去っていった場所。それこそが………


 「クアト島。多くの人を収容できるだけの面積を持ちつつも、一年を通して寒さに包まれる島。ここだけは人が住むことができず、踏み込むこともできないと言われています」

 「……ってことは………」

 「はい。魔王はここにいる可能性が最も高いでしょう」

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