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みんなの態度が変わったようです

第8章スタートです。ここから完結まで頑張っていきたいと思っています。

 最近、みんなの様子がおかしい。というか、変わった。もっと言うなら、変わり過ぎた。


 「ご飯食べに行くね」


 前と同じようにベッドを立とうとしたのだが、すぐにカトレアが押し留めてきた。


 「いえ、私が持ってきますので!ユート様はここでお待ちいただければ………」

 「いや、でもさ。一人で食べるのもなんか味気ないし………」

 「それなら、私の食事も持ってきますから!それでどうでしょうか?」


 僕をこの部屋から出すまいと、必死の形相だった。瞳の中には、はっきりとした不安も見受けられる。


 「カトレア?心配しなくても、すぐに死ぬことはないよ?だから………」

 「……聞けません」


 それなりに長く付き合ってきた獣人の少女は、今にも泣き出しそうな顔になってしまう。そんな顔を見て、何も言えなくなってしまった。


 「……失礼しました。食事を持ってきます………」


 カトレアが部屋から出ていく。余命一年という宣告は、恐ろしいまでに影を落としていたのだった。


※               ※               ※

 レインさんが王城を占拠した事件から、2ヶ月。アンラ・マンユの宣告から1ヶ月が経った。今では限定的とはいえ、城下町も以前のような賑わいを取り戻しつつ在るらしい。勿論そのつけもあって、お城の中はバタバタと忙しそうだった。やる仕事が多いみたい。

 勇者のみんなもみんなで忙しそう。この頃は遠征ばっかりだし。転移で送ろうか?と言おうものなら、物凄い勢いで否定される。一応、冗談のつもりなんだけどな。クロもシルヴィもそっちに向かっているから、僕に毎日会っているのはカトレアだけ……って、わけではない。クロとシルヴィだけは体調を確認するために、毎日会いに来てるんだ。そんなに心配しないでも大丈夫なのにね。


 「だから、こんなことをしなくてもいいと思うのだけど」

 「駄目です」

 「いや、恥ずかしいんだけど………」

 「駄目です」

 「あのね?」

 「駄目です」


 うーん、駄目の一点張りだ。カトレアは頑として、僕の意見を受け入れる気はないみたい。僕はカトレアに背負われながら、どうしたものかと頭を悩ませた。ちなみに、時折すれ違う人たちに振り向かれる。まあ、言いたいことはわかるよ。普通は逆だろう、って言いたいのはさ。


 (ただ、カトレアの気持ちがわからなくもないからなあ………)


 きっと怖いんだ。お母さんを失って、同じ獣人であるシドさんも死んでしまった。そして、今度は僕まで死にそうになってる。それがきっと、たまらなく怖いんだと思う。僕さえも失ってしまえば、自分にはもう何も残らないから、と。勿論、僕の自惚れが入ってるかもしれないけどさ。

 とはいえ、カトレアの言う通りではある。これ以上無理をすれば、確実に死ぬことは想像だに易い。最近は吐血する回数が増えて来てるし、少しのことでも息は上がる。超能力を使おうものなら、体調が急降下まっしぐら。それは使わないまでもわかった。


 「……前途は多難だなあ………」


 ぽつりとカトレアに聞こえないように呟く。今も現状を悪化させないようにするのが精一杯。頑張ってはいるものの、手を御椀状にした状態で水を掬えば、徐々に滴り落ちていくように。僕の命は刻一刻と削られている。一向に良くならない僕の状態に、焦れているというのが今のみんなだ。

 僕?僕はもう諦めはついている。あの邪神の声に耳を貸してしまったのが最後だったんだ。耳を貸してしまったときから、何かを払わなければいけないことはぼんやりと感じ取れてた。それが命なだけで。だから、みんなが気にすることはないのに、と思う。みんなは悪くないのだから。


 「……ん?」


 空に突然、板状の何かが現れる。それはステータスを確認するものにも似ていたけれど、違うところもあった。それは板状の何かに、知らない人の姿が映っていたこと。そして、その映っている人は厳密には人じゃあなかった。只者でもない。一目でわかる、こいつは………


 『この世界に住まうすべての者たちよ。まずは褒めよう。よくぞここまで辿り着いた』


 城内が一気に騒がしくなる。がやがやと近くの人と話し始め、その男の姿を見ていた。

 カトレアはキュッと強く僕の足を締め、絶対に離すまいといった様子。カトレアも正体には薄々気付いている様子だった。


 『私の名はクロノ。八魔将が最後の一人だ』


 やっぱりか、と口の中で言葉を発する。実力は目の前にいなくてもわかるほど。そんななのだから、実際の実力はお察しの通りだろう。このクロノという八魔将は、間違いなく八魔将の中で最強の相手だ。


 『お前たちに敬意を表し、一つ取引をしようと思った。我々は無意味に民を攻撃しない。だが、お前たちも我々に攻撃するな』


 どういうことだ?と首を傾げる。その答えはすぐにクロノ自身が答えた。


 『決戦はシュレンブルク王国に接する平原で行う。その決戦の勝者がすべてを制す。そういうことにするとしよう。それまではこちらから手を出すことはせん。勿論、そちらが破ればその限りではない』


 どよどよと戸惑いの声が上がる。それもそうだ。魔族がこんなことをするなんて、思っていないのだろうから。レインさんを見た後だと、あまり疑問には感じないけれど。


 『決戦は今から2週間後とする。人間たちよ、存分に準備をするとよい』


 その言葉を最後に、通信は切れた。周囲は静寂に包まれていた………

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