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戦いの行方

 とは言ったものの、だ。


 (普通の魔族じゃ、大した脅威にはならないんだよねえ………)


 迫り来る魔族を指を鳴らすことで切断する。見た目がアレなので、遺跡の外にでも捨てておこう。カトレアの気分が悪くなってもいけないし。

 あと何体いるのかなあ、とぼんやり考えながら、手の平同士を打ち付けてパン!と音を出す。


 「おいで、フェニフェニ。ミーちゃん」


 僕の右側に鳥の姿を象った炎が現れる。左側には長い胴体がとぐろを巻いている、20mはありそうな大蛇が現れた。フェニフェニとミーちゃんだ。フェニフェニは前の能力紹介以来かな。ミーちゃんはこっちに来てから呼んでないや。ごめんね。僕は二人の頭を撫でた。うん、あったかい。

 唐突に現れた二人に、敵はどよめいている。まあ、初めて見ると驚くかな?何もないところから二人が現れるんだから。勇者のみんなはああ、またか……といったような顔で、僕を見ていた。そういう顔をされるのは心外だなあ。


 「行って。人間じゃないものの姿を見たら、それを焼き尽くして。人間の姿をしてたら駄目だからね」


 僕の言葉に二人は頷いて、別々の方へと飛んで。もしくは這っていった。直後に二方向から炎が上がり、同時に絶叫が上がった。まあ、かなりの温度で炎を放ってるから、結構熱いんだろうなあ。やられる側からしたら、堪ったものじゃないだろうけど。なにせ、1000℃ぐらいはあるはずだからねえ。すぐに死んじゃうだろうなあ。

 フェニフェニの一番の特徴はやはり飛べる、っていうこと。上空から攻撃できるから空中戦は勿論、炎による爆撃もお手のものなんだよね。攻撃をしたところで、実体のない炎。逆に殺されるのがオチなんだ。

 ミーちゃんはしなやかな体と、温度差を感知できる目が特徴。狭いところにもするすると入れるし、隠れていてもすぐに見つかっちゃう。こういう遮蔽物が多い空間だと、一番有用な子かな。


 「さてと、あっちは放っておいても大丈夫だろうけど………」


 クロとシルヴィ、シドさんの戦いを見た。やっぱり心配なものは心配だし。だけど、考えただけ無駄だったようだ。

 シドさんは巨大な狼へと姿を変えていた。髪の色と同じ灰色だったけど、そのシドさんは地面に伏せっていた。重力を使えるからわかるんだけど、周囲の重力が15倍ぐらいに跳ね上がっているんだよね。見れば、シルヴィの周囲に霊媒が置かれていて、そこから魔力が流れてきている。その量は普段よりもずっと多くて、それで足りない分を補っているみたい。


 (で……こうなってる、と)


 既にシドさんは血みどろになっていた。なんとかして重力の檻から逃げようとはしているものの、普段慣れていないことだろうから逃げられない。拘束魔法ならまだわからなかったかもしれないけどさ。そこにクロが《影分身》を使って、自爆特攻を行ってる。その度に傷が増え、もがけばもがくほどに傷が開いていく。さらには、重力攻撃で気を抜くこともできない。焦りと苛立ちで、何もすることができないんだろう。なんか、可哀相になってきたなあ………


 (むこうは……そこまで心配はないかな?)


 次にヴィシュアグニの方へと視線を向けたけど、こちらもあまり問題はなさそうだった。ジリアンさんが牽制して、凛花さんとアルヴァさんで攻撃。傷ができたらコルネリアさんが回復。その作戦が上手く嵌まっているし、今すぐに危険があるということはなさそう。何かあれば手伝うんでいいかな。


 (さてと。どこにいるのかな)


 今の僕は遠目から見れば、何もしていないように見えるのだろう。でも、仕事をしていないわけじゃない。どうして動いていないのかというと、今の僕は簡易時間旅行を使っているから。

 今日までジリアンさんたちとも話をしてきたのだけど、やっぱり八魔将はもう一人いる可能性が高い、という結論になった。そいつは高確率で転移能力を持っているだろう、とも。もし転移されれば、普通の人は対抗することができない。かと言ってずっと警戒していれば、ヴィシュアグニに集中できない。そこで思い付いたのが、僕が転移能力を持っている相手に警戒する、という作戦だった。僕は未来を見ることができるから、一番の適役だろう、って。


 (……来た)


 未来で一際強そうな実力を持った魔族が、アルヴァさんの後ろに現れたところが見えた。なるほど、数が少ないような気がしてたけど、そこら辺が理由だったのか。確かに、勇者一人を倒せるのなら、結構大きなアドバンテージになるかもね。


 「させないけどね」


 相手が転移してくるタイミングに合わせて、僕は重力操作を発動した。いきなり攻撃を受けるとは思っていなかったみたいで、現れた魔族は地面に思いっ切り叩きつけられていた。

 ヴィシュアグニの方も作戦が失敗するとは思っていなかったみたい。動揺して動きが止まった。その時間は一瞬だったのだろう。でも、その一瞬で十分過ぎたんだ。


 「これでどうかな」


 ヴィシュアグニの体を炎が包む。超高温で焼かれたヴィシュアグニは絶叫し、触手を僕に伸ばそうとしていた。その前に、アルヴァさんに撃たれて落とされちゃったけど。


 (これで終わるかなあ。今回も無事に終わったみたいでよかったよ)


 簡易時間旅行を使って、敵がいないことを確認する。どうやらもういないみたいで、普通に帰る未来が見えた。


 (よし、じゃあ………)


 「ユート様!」


 ドン!と僕が突き飛ばされた。意味も解らずそのまま倒れると、目の前であり得ないことが起こった。


 ――――シルヴィの体が切断されていた。

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