表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/204

拾った子供

 「……なんだ、こいつ?」

 「倒れてたから連れて来たんだけど……まずかったかな?」


 敵意も何もなかったし、大丈夫なんじゃないかと思ったんだけど。間違ってたかなあ?ジリアンさんの渋い顔を見て、そう思った。


 「どこにいたんだ?」

 「探してる途中で森に倒れてた。お腹の音が鳴ってたし、お腹空いてるんじゃないかと思って」


 で、僕たちもちょうどいい時間だと思ったから、ここに戻ってきたんだよね。途中で屋台には寄ったけど。そこで軽く食べ物を買ってきたんだ。

 振り返って、一心不乱に食べ続ける男の子を見る。歳は5、6歳程度かな?痩せ細っていて、あの子を見た二人が心配するほどだった。茶色っぽい髪に、年相応の幼い顔立ちが印象的な子だね。ただ、どこか違和感を感じるんだよね。まるで、どこかで会ったかのような……気のせいかな?


 「……まあ、一般人を保護するのはいいだろうけどよ………中途半端に助けるのはかえって迷惑だぞ?助けるなら、きちんと面倒を見なきゃいけねえわけだしな」

 「そこはみんながどうしたいかに依るかな?育てるなら育てるで力は貸すし……どうしようもないなら、僕が何とかするよ」


 もしこの子が一人で生きていくしかなくて、それが難しかったとき。そのときは責任を持って、僕がどうにかするつもり。その覚悟はあるし、他の人に任せるわけにもいかないからね。

 ただ、僕の目を見て何か思ったのか、ジリアンさんに小突かれた。そこまで痛くはなかったけど。


 「……馬鹿言うんじゃねえよ。それはお前が考えなくてもいいことさ」

 「でも………」

 「そうならねえように、努力してやる。お前だって嬢ちゃんたちに嫌われたくはねえだろ?」


 それは……そうだけど。カトレアやシルヴィに嫌われたら、一生部屋から出ていくことができない自信がある。そんなこと、自慢するなという話だけど。

 そんな僕にジリアンさんは笑って、部屋を出ていくのだった。


※               ※               ※

 「で、そもそもだ。お前、どっから来たんだ?両親はどこにいる?」


 ようやく食べることに落ち着いて、話ができる状態になった男の子にジリアンさんが質問をする。その頃には凛花さんやコルネリアさん、アルヴァさんも戻ってた。女性陣は可愛がっていたよ。

 でも、ジリアンさんの問いに対する答えは、想像してるよりもずっと悪いものだった。


 「……わかりません。ずっと暗いところにいたので………」

 「どういうことだ?」

 「両親に売られたそうです。お金が欲しいから、って。人体実験用に使ってください、と言ってたそうです」


 凛花さんたちが息を呑んでた。僕としてもあんまり気分がよくはないかなあ……あっちの世界での嫌なことを思い出しちゃうし。凛花さんは眉を吊り上げて、コルネリアさんは口元に手を当ててた。カトレアとシルヴィはというと……僕を見てた。心配そうに。そこまで心配しなくても、別に大丈夫なんだけどなあ。


 「それはまた……最悪だな。どうやって逃げ出した?」

 「よくわからないんですけど……突然、職員の人たちが苦しみ出したので。拘束はされてなかったのが幸いして、逃げ出しました。どこをどう走ったのかまでは覚えてないです………」

 「……そうか。悪かったな、辛いことまで聞いちまって」

 「大丈夫です。今までに比べたら、どうということはないので」


 ジリアンさんは申し訳なさそうにもう一度謝って、部屋を移動した。移動したのはほとんどの人たちで、部屋に残ったのは僕とカトレアぐらいだった。クロもいるけど、我関せずってところだし。クロらしいと言えば、クロらしいのだけど。


 「名前とかあるの?」

 「……いえ。ないです」

 「そっか。それも後で伝えといた方がよさそうかな」


 勿論、この子を助けると決めたときは、だけど。下手に名前なんか付ければ、感情移入してしまうということは知っている。僕自身が名前は特別なもの、ってわかっているしね。だから、どうしようもないときは誰にも何も告げないでやることにしよう。

 

 (ただ、まあ……そんなことをしていると、兵器に戻ったような気になるなあ)


 もしかして、だからジリアンさんは小突いたんだろうか?もう兵器に戻るなよ、っていう意味で。首を傾げてみるものの、そんなことは聞いてみないとわからない。後で聞いて来よう。


 「ユート様?」

 「ん、どうしたの?」

 「いえ……止めなきゃいけない、と思ったもので………何かするなら、ちゃんと話してくださいね?」


 むう、カトレアの目は誤魔化せないようだ。僕がまた戻るかもしれない、ってことを勘付いちゃったみたい。心配そうな表情で見つめられると、言い訳をするわけにもいかないし。……してもいいけど、ばれたり変なことをしたときに、お説教コースは確定だからなあ。それは嫌だ。


 「はーい」

 「もう、わかってるんですか?ユート様はすぐに無茶をするんですから………」

 「そんなことはないよ?」

 「あります。とにかく!きちんと話を通すことです!いいですね!?」


 僕はちゃんと頷いておいた。だって、カトレアに逆らうと後が、ねえ?


 「あ、寝ちゃったね」

 「そうですね。どうしましょうか?」

 「カトレア、見ててくれる?僕はみんなと話してくるから」

 「あ、はい。わかりました」


 カトレアが頷いたことを確認して、僕は転移した。さてと、どうなるかは決まったのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ