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なかなか釣れないようです

 「……どうしようか?」

 「……どうしましょう?」


 カトレアと二人で街に放り出されたのだけど、何をすればいいのかがわからない。それはカトレアも同じようで、二人して首を傾げてるんだよね。でも、いい案なんて思い浮かぶはずもない。


 「とりあえず、移動してみる?何かあるかもしれないし」

 「そうですね。こうしてても、ただ時間が過ぎていくだけでしょうから」


 カトレアが僕の手を取って歩き出す。今回はこれが目的だからいいんだけど……最近は躊躇しなくなったよね、カトレア。


 「……ええ、まあ。ユート様の方向音痴は、どうしようもないことがわかりましたから」


 カトレアが遠い目をしているけど、別にそんなにしょっちゅう迷ってはいないよね?迷うのはきっと少しずつ地形が変わっているんだよ。もしくは、複雑怪奇な構造をしているんだよ。現に、《座標移動》を使えばちゃんと目的地に着くし。


 「あのですね、ユート様。それは道順が関係ないからで、方向音痴がどうこうという話じゃないんですよ?」

 「でも………」

 「そうなんです!とにかく!はぐれないようにしてくださいね!?」

 「はーい」


 仕方がない。怒られるのは嫌だし、頷いておこう。それに、最悪カトレアを呼び出せばいいのだし。クロに頼めば、きっとすぐに見つけてくれるよね。


 「それじゃ、行こっか」

 「はい、わかりました」


※               ※               ※

 「……まったく食いつかないね」

 「食いつかねえなあ………」


 この国に訪れてから、1週間が経った。その間、ずっとカトレアとデートを続けていたんだ。時には、シルヴィが加わって。時には、街を出て。けど、全然反応がない。引っ掛かるどころか、尻尾すら見せなかった。ただ、まったく来た意味がなかったのかというと、そうでもなかった。


 「この1週間被害はなし、か。むこうも帰ってほしかあねえだろうなあ」

 「帰ったら、被害が出るかもしれないからね……仕方ないか。早く元凶を叩きたいところなんだけど………」


 凛花さんが悔しそうにしている。僕以外のみんなは、情報を集めてるからね。何も得られないことに、苛立ちが募ってるのかも。一応結果が出てるから、誰からも文句が言われていないのが救いだけど。

 ヴィシュアグニは僕たちが国に入ったときから、ぴたりと活動を止めているようだ。被害は聞こえてくることはなく、この国の人たちはホッとしている様子だった。


 『仮初めの平和でしかありませんがね。どうしたものでしょうか』

 『あ、チーちゃん。チーちゃんでもわからない?』

 『ええ。与えられている情報が少ないうえに、絞り込める要素がないのです。少しでもモーションを起こしてくれれば、話はまた別なのでしょうが………』


 チーちゃんでもわからないみたい。こうなると、僕はどうしていいのかわからなくなる。基本的に考えるのは苦手だからねえ。みんなに一任してるんだよね。そっちの方が楽だし。


 『サボり過ぎだ、たわけ。少しは自分で考える努力をしろ』


 ルーちゃんから鋭い言葉が飛んできた。ひどいなあ………


 「まあ、これ以上は続けても意味がなさそうだな。仕方がねえ、ユートたちにも捜索に加わってもらうか。ユートがいりゃあ、かなり広い範囲を調べられるだろうしな」

 「うん、わかった。早速今日からでいいのかな?」

 「ああ、そうしてくれ。いつ襲われてもおかしくはねえんだから、のんびり休むこともできやしねえ。早いとこ終わらせてえからな」


 ジリアンさんが肩を竦める。その気持ちはわかるかな。このところシドさんの襲撃を警戒してたものだから、なんだか気疲れしちゃったんだよね。正直、早く終わらせたいのだけど。

 欲を言えば、早く魔族をどうにかして平和な世界を回りたいなあ、と思う。そのためにはヴィシュアグニを倒さなきゃいけないわけだから、大変なのだけど。


 「それじゃあ始めるぞ。全員手分けして捜索を始めようぜ」


※               ※               ※

 「とは言っても、すぐには見つからないよねえ………」

 「そうですね……数も数ですから」


 隣を歩くシルヴィが同意してくれた。僕と一緒にいるのは、カトレアとシルヴィ。二人は他の四人と比べると、どうしても戦力としては劣るから、だって。コルネリアさんはどうなの?と聞きたくはあったけど、回復魔法がそこまで強力なのかなあ?実際に見たところがないから、よくわかんないや。一度目も二度目も三度目も全部気絶してたし。

 そのコルネリアさんは僕を除けば、一番強いアルヴァさんと。ジリアンさんは凛花さんと組んで、捜索をしてるみたい。あの二人で大丈夫なのかなあ、とは思ったけど、大丈夫と信じるしかないよね。と自分を納得させておいた。ちなみに、クロは街を見張ってる。僕と離れるときには、相当駄々を捏ねてたけどね。そこは仕方ないと納得してもらうしかなかったよ。


 「……あれ?」


 考え事をしていると、唐突にあるものが目についた。その声に気が付いたのか、二人も僕の方へと寄ってくる。そして、どちらも驚いていた。だって、そこにいたのは………

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