修行を始めよう
「ん………」
見覚えのない天井……ではないか。天蓋付きベッドなんだから。そもそも、今の僕は見覚えのある天井なんかないはずだし。
「ん、あれ………?お母さん?」
「よく眠れた?」
隣を見ると、カトレアが起きてた。格好的には僕が仰向けになっていて、僕の胸にカトレアの頭が載っている状態。ちょっと息をするのが苦しい気もするけど、それを言ったらまた僕が虚弱だって言われちゃう。黙ってよう。
そんなことを思ってると、カトレアは今の状態を確認してるみたい。僕を見て、自分を見て、どういう状態か気付いたようだよ?
「……え?勇………者、さま?」
「ユートだよ、って昨日言ったはずなんだけどなあ?言ってなかったっけ?」
だとしたら、恥ずかしい勘違いだよ。夢だったかもしれないし、ブラッシングに夢中だったから何言ったかあんまり覚えてないんだよね。
「……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ど、どうしたの?何かあったの?」
いきなり叫び出すから驚いちゃった。ドッキリはよくないと思うんだ。
「おい、どうした!?何があった……って、おおう」
え?ジリアンさん?驚かさないでよ。本当にドッキリってよくないと思うんだ。しかも、朝から。
「……こりゃ、まだ時間かかるかもなあ」
って言って、扉を閉めちゃった。何しに来たんだろう?
「ま、待ってください!誤解ですー!」
朝からドタバタしてるなあ。今日も忙しくなりそう。
※ ※ ※
「……来て早々問題起こしまくってるわね、あんた」
「ど、どう言えばいいんでしょう………」
「その、こういうのは個人の勝手なので言うべきではないのでしょうが……手を出すのが速すぎませんか?」
ご飯食べに行こうとしたら、いきなりそう言われた。ちなみに凛花さん、コルネリアさん、シルヴィアさんの順だよ。
「で、ですから誤解です!」
「っつっても、一緒のベッドにいたじゃねえか。昨日一緒に寝たんだろ?」
「うん、まあ一緒に寝たよ(心配だったし。ここは僕が頼れるってところを見せないと!って思ったし)」
「マジかよ、意外と大胆なんだなおめえ………(まさか召喚されてすぐにその世界でのやつと関係持つとは………)」
「そう?そうでもないと思うけど(ただ一緒に寝てあげるだけなのに大げさな………)」
「そ、そうか(こいつにとって、意外と簡単だったってわけか?すげえな………)」
みんなポカーンって感じになってる。変なこと言ったかな?
「ですから!そういったことは何もしてません!」
「そういったこと?何それ?」
「「「「え?」」」」
なんかみんな絶句してるけどどうしたんだろう?頭の中に?が浮かんだよ。そしたら、アルヴァさんに声をかけられたよ。
「ユート。お前は昨日の夜、そのメイドと寝る以外に何もしていないのか?」
「いや?寝る前にブラッシングしてあげてたけど」
「それ以外には?」
「何もしてないよ?」
「ということだ。どうやらジリアンの早とちりだというわけのようだな」
「……あんた、ちゃんと確認してから言いなさいよ」
「え~っと、結局していなかったんですか?」
「そのようですね。早とちりをしてしまい、申し訳ありませんでした」
「うん、それはいいんだけど……寝る以外に何かすることってあったの?」
「「「いや、ないです(から)」」」
……女の子ってやっぱりわからない。ちなみに、その間カトレアは顔を真っ赤にしてたよ。
※ ※ ※
「では、これから皆さんの腕を確認しましょうか。取りあえずアルヴァ様、ジリアン様、凛花様には模擬戦をしていただきます。その結果により、これからのことを決めていきたいと思います」
「了解した」
「いいぜ」
「わかった」
今はお城の庭にある訓練場に来てるよ。今の僕たちの実力を見てみたいんだって。ただ――――
「あれ?なんで私の名前はないんでしょうか?」
「コルネリアさんは戦えないからじゃない?それにしても、なんで僕のはないの?」
「あ、あははは……ユート君も戦えないからじゃ………」
「?何か言った?」
「い、いえ!何も!」
「そう?それならいいけど」
「コルネリア様は後で回復魔法がどれだけの傷を治せるのか確かめましょう。それと、治すまでにどれだけの時間がかかるのかもですね。ユート様は……後で私と模擬戦をしてみましょうか」
「わかったけど、なんでそんな無理した笑みになってるの?」
「いえ、特に何でもありませんよ?」
みんなおかしいなあ。僕だって何かの役には立つかもしれないじゃないか。だから、そんな憐れむかのような目で見ないでよ。特に騎士さんたち。
「ま、まずはあの3人の腕を見てみましょうか!」
「そ、そうですね!ユート君、ちゃんと見ておいた方がいいと思いますよ!」
「うん………」
やっぱり変だよね。まあ、みんなの模擬戦を大人しく見てよ。最初は誰からだろう?




