最強の能力
「いやー、ボクもね。カトレアちゃんのことは気に入ってるんだよねー!かわいいし?器量もいいし?何よりもマスター一筋だし?これを逃す手はないと思うわけなんだよね!」
「は、はあ………?」
あ、カトレアが戸惑ってる。さっちゃん、ものすごくテンションが高いから、初めて会う人は何も言えなくなるんだよね。なんだっけ?マシンガントーク?って言うんだっけ?それに近い感じ。
「あ、シルヴィアちゃんだっけ?君のこともさー、ボクはいいんじゃないかって思ってるんだよねー。最初に傷つけたときはなんだこいつ!って思ったけどさ。危ないことだろうと、マスターを案じて即行動!いやー、いいよね!惚れちゃうよね!だから、シルヴィアちゃんも高評価!どんどんアタックしていいからね!」
「え、いや、その……はい………?」
今度はシルヴィアさんに話を振った。いきなり話を振られたシルヴィアさんが驚かないはずもなく、どもりながらの返答になってしまった。
「あ、あと、ジリアン君だっけ?君も評価は高いなー!マスターのことを気にかけてくれるし、なんだかんだ言って面倒を見てるところは頼れる兄貴分、って感じ?いいよね、やっぱりこういう人がいないとさあ!あ、それとそれと、凜花ちゃんにコルネリアちゃん!この二人もいい感じだよね!ジリアン君が兄貴分なら、二人はお姉ちゃんみたいな感じ?いいねえ、マスター、家族がいっぱいできるじゃない!お嫁さん二人に、お兄ちゃん一人、お姉ちゃん二人だよ?」
『……お嫁さんも何も、まだ結婚すらしてないのだけど』
呆気に取られてるみんなを横目に、一応抗議しておく。まあ、聞いてくれることがないのはわかりきっているけどね。それにしても、カトレアの評価は高いなあ。今も結婚しろコールが大量に届いているよ。気に入られてるね。
「あー、アルヴァだっけ?んー、君はねー……悪い人ってわけじゃないけど、かと言っていい人なわけでもないからねー。ま、プラマイ0だから、これから頑張ってというしかないかなー」
「そうか」
あ、アルヴァさんはどうやらそこまで気にしてないみたい。でもね、さっちゃん。少しは人の気持ちも考えよう?僕が言えた義理でもないのかもしれないけど。
「で、王様の方だけどね。あんたはマイナスだね。正直、救う価値すらないね。ペッペッ、ってとこだね!んでもって、騎士の方。あんたたちは最低値だね、うっかりで死なないように気を付けるといいよー?」
さらには、王様や騎士たちに向ける目は厳しかった。まあ、騎士たちの方は自業自得だし、仕方ないかなとは思ってるけど。それでも、王様はちゃんと頭を下げていた。おお、少しは紳士的みたい。
「すまない。確かに、貴公からすれば許せない行いをしてしまったかもしれない。いや、していたのだろう。代わりにと言ってはなんだが、可能な限りの便宜を図るつもりだ」
「ふーん。まあ、いいよ。あんたはちゃんと謝れる人っぽいし。マスターが許す、って話だし?ボクがわざわざ蒸し返すのも悪いかもだし?目の敵にするのはやめてあげるよ」
「そうか。すまない」
「で・も………」
ふと、悪寒が襲った。その場にいる全員が体を身震いさせ、武器を構えたり、腰が抜けたりしていた。
「君たちは話にもならないね。謝ろうともしないし、カトレアちゃんの方にも迷惑かけるし。いい?ボクは気に入った子には融通は利かせるけど、気に入らない子はピッ、だからね?」
騎士たちは圧倒的なまでの実力差に、口を出せない様子だった。辛うじて剣を構えてはいるものの、どう見たって腰が引けてる。これじゃあ、勝負になるわけもない。
「あ、あの!」
「んー?なあに、シルヴィアちゃん?」
さっちゃんが振り返った先には、及び腰ではあるものの毅然とした態度のシルヴィアさんがいた。
「その、どうかおやめいただけませんか。もう一度だけ、チャンスを与えてやってほしいのです」
「ふーん?それは彼らを許してあげて、ってこと?」
「……許せない気持ちがあるのはわかります。ですが、どうかお願いです。彼らのことを一度だけ見逃してほしいのです」
シルヴィアさんは頭が地面につくのではないか、ってぐらいに頭を下げた。うーん、ここまでしてもらうと、なんだか手を出し辛いかなあ………?
「……ねえ、シルヴィアちゃん?それはボクに対して命令してるの?」
「そ、そんなわけでは!」
底冷えするような声で、さっちゃんがシルヴィアさんまで威圧する。シルヴィアさんは肩を震わせながら、顔を上げる。必死に首を振っているけど、さっちゃんは止まりそうにない。困ったねえ。何をしようとしているか知ってるだけに、僕としてはため息をつくしかない。
「少し思い知らせてあげた方がいいかな?ボクの力を」
その言葉を言い終えた瞬間に、一つの柱が綺麗に切断されていた。鋭利な刃物で斬られたかのように。ドスン、と倒れた柱に、多くの騎士たちは怯えていた。
「ボクの力が元々の神の力を超えてる、ってことは知ってるよね?それはこういうことなんだよ。モノを一瞬で、別の場所へと移動させる能力。だけど、それはパーツごとでもいいし、そのままでもいい。つまりは、その気になれば全身バラバラの状態で転移させられるよ?味わってみたい?」
騎士たちは何も言えなかった。立っていられる人はまだ褒められたものだ。中には、恐怖のあまり失禁してる人もいるんだし。シルヴィアさんもなんとか立ってはいるものの、足は明らかに震えていた。
「それにね。ボクはランダム転移もさせられるし、実際に見てなかったとしても、その風景さえ知っていればそこに転移できる。写真や他人の記憶なんかがいい例かな?火山の火口に落とすのもいいよねー?どうしよっかなー?」
悩むふりをしているさっちゃん。実に意地悪だ。早くしてあげればいいのに。どうせ、この子のことだから……
「じゃ、転移させまーす!いってらっしゃーい!」
そして、転移させた先は……
「あれ?意識が戻ってる?」
いきなり体の感覚が戻り、戸惑ってしまう。目を白黒させて、周りを確認するけど、状況は変わらない。普通に元の部屋だし、僕の位置だって変わってない。さっちゃんのことだから、『転移すると思った?うっそでーす!』って言うと思ったのに。でも、シルヴィアさんにひどいことはしてないよね?なんだか温かみを感じながらもそう思う。……あれ?温かみ?
恐る恐る、もう一度自分の状況を確認した。確かに自分の位置は変わってない。部屋も変わってないし、シルヴィアさんも騎士の人たちも、他のみんなだってこの部屋にいる。
――――シルヴィアさんの位置が変わってただけで。
『アッハハハハー!死ぬと思った?安心してよ、気に入ってるから殺さないよん♪でもねー、何にもなしで許すわけにもいかないし、マスターにいい思いさせてあげてねー!それでは、バイビー!』
「あ、切った」
そのまま電話が切られるみたいに、話せなくなった。なんかもう、嵐みたいだったよね。みんなポカーンとしてるもん。シルヴィアさん以外。
「シルヴィアさん、顔が赤いよ?大丈夫?」
「は、はいっ!?ち、近いです!顔が、顔が!」
「え、でも………」
……ご丁寧に、『超念動』まで使ってくれちゃってる。これ、解除するの大変なんだけどなあ。
「しばらくはこのままになりそうかなあ?」
「そ、そんなぁ………」
シルヴィアさんががっくりと肩を落としてた。頑張って。一応、気に入られてはいるみたいだから………




