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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
エルフ暗躍? 編
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第90話 アマゾネス登場

「ドワーフ…」


 私がぽつりと呟くと、自称エルフ達の目がつり上がり、クワっと目を見開いた。


「ハンマーは持っておらん!」

「問題は、そこか!?」


 すかさずシニヨンが突っ込んだ。

 エルフと言えばすらりと背が高く、長い髪をなびかせ、野山を駆け巡る風のような身軽なイメージだ。だが、実際のエルフと言えば、足は短く、少し太めで、動きは…のたのたしている?


 なぜだ??

 私の知ってるエルフとかなり違うぞ?


 私の知っているエルフはそれこそイメージ通りだったというのに、彼等はドワーフである。ドワーフにはあったことがないのでそれこそイメージだが、これはドワーフだろう??

 それに、気になっていたのだが、あのもじゃもじゃの髭はいかがなものだろう…。


「年寄りにも見える」

「実際年寄りだ」


 私の呟きに、律儀にも答えが返ってきた。

 私達が自称エルフを見やると、彼等は槍の穂先をこちらに向けてくる。

 警戒心露な彼等に、私を始め、すでにフラウに倒されて踏みつけられている襲撃者達ですらも、その獲物の長さを見て首を横に振った。


「こんな狭い場所で槍は役に立たんだろ…」


 部屋を見回し、背の高いイグニスがぽつりと呟いた。

 

 実際エルフの住居は天井が低めにできている。保温効果を上げる為だろう。

 そこへきて長い槍だ。

 構えても、あちこちに引っかかってまともな攻撃ができないはずである。


「ふ・・・知恵のエルフと呼ばれた我等がそんなことも思いつかないと思うのか!」


 なぜか自称エルフ達が激高した。


 彼等は槍を構え、本来のエルフのような素早さで、床を滑るように私達に襲いかかった!


「早く動けたのっ!?」

「失礼な娘だ!」


 ひゅんっと風を切って振りおろされた槍は、天井に引っかかることなく私達に襲いかかったため、慌てて避ければ…。


 ゴンッ


 鈍い音とともに、後頭部を天井のランプにぶつけたのは、シャルに抱っこされている私の方だった。


 痛い…。

 後頭部をさすると、自称エルフ達の目がカッと見開いた。


「見たか! 我等は背が低いから(・・・・・・・・・)引っかからないのだ!」

「今のはあんたたちのせいじゃないでしょうが!」


 堂々と胸を張る自称エルフに抗議した。

 

 喧々囂々(けんけんごうごう)と言い合う中、全く話が進まないことに業を煮やしたのか、フラウが踏みつけていたもやしの様に細い男から足を離し、男が逃げようとした所を軽く蹴り上げて気絶させた。


「ところで、突然人の事を見て攻撃したり、最悪(・・)の種などと呼ばわるのはどうでしょうね。ルゼが傷つくでしょう?」


 いや、今のが一番傷ついたよ。

 最悪の種ってなんだ…。


「災厄ね、災厄」


 自ら訂正しておいた。

 災厄ならいいのかといわれると微妙だが、最悪と言われるよりはマシなような…。

 この複雑な乙女心(?)がわかるだろうか。


「うん、まぁ…それで、そこのところどうな…うわっ」


 私も災厄の種と言われたことが気になって、フラウから自称エルフに視線を移すと、彼等は一様にその場に両手両膝をついて、ガクリと項垂れていた。

 

 何かショックなこと言ったか!?


 会話を思い起こしてみるが、コントのような掛け合いぐらいしか思い浮かばず、私はシャルを見下ろす。

 シャルは彼等を見てはおらず、なぜか私を切なげに見上げた後、ランプにぶつけた私の頭を撫でてくれた。


「すまない。痛かったろう?」

「平気。それよりもシャル、降ろしてくれる? 彼等も戦意喪失しているみたいだし。話を聞きたい」


 尋ねる私に、シャルは首を横に振る。

 

「これ以上我が(つがい)に何かあってはいかん。風邪…というのも悪化したのだろう?」

 

 それはこの上なく。

 気を抜くとボーっとするので、少なくとも熱は上がっているはずだ。


 シャルは熱で潤む私の目を見つめ、頬に触れると、そのままふんわりと抱きしめる。


「死んではいかんぞ」


 いや…まだそこまでひどいことにはなっておりませんから…。


 極端に走るシャルに、できることなら手刀の一つでもかましたかったが、心配してくれているのでそれはやめておいた。


 なんて、周りそっちのけでラブラブを繰り広げていると、立ち上がった自称エルフが叫ぶ。


「我等が悲しんでいるのにいちゃつくな!」


 いちゃつきについては謝るが、悲しみについては知らん…。


「自分勝手ですね。一体何に悲しんでいたというのですか?」


 オリビアが叫ぶ自称エルフに冷たく言い放つ。


「我等がっ…我等が、背が低いから引っかからない!…という部分にだ!」

「自分で言ったんだろうが!」


 再びシニヨンが突っ込んだ。

 これには部屋の中の全員がコクリと肯いた。


 自称エルフはひょっとして、コント集団なのだろうか…。


「とーにーかーく! 全員座れ! こんなあほなコントしていても話にならん! ところで、そこのフラウに沈められたもやし共はアマゾネスの婿達か? さっさと嫁を呼んで回収してもらえ」


 話が進まないことに業を煮やしたイグニスの命令でエルフと意識のあるもやし男達がワタワタと動き始める。

 だが、回収してもらえ・・といった瞬間、男達はぴたりと動きを止めた。


 ひょっとして…妻が怖い…とか?

 

「フラウ…」


 尋ねるようにフラウを見やると、彼は少し困ったような顔をし、ちらりと床の辺りを見つめた。

 気が付けば、ユメトラがいない…。


「彼は…」


 どこに?

 

 というセリフが終わる前に、家の扉がドカンっと大きく開き、ものすごい勢いでユメトラが駆け込むと、そのままフラウの後ろへと逃げ隠れた。


「あぁ、呼んできてくれたんだね」

「二度としない!」


 そう叫ぶユメトラはプルプルと震えてフラウの足にしがみ付き、続いて、開かれた家の扉の向こうから、土煙を上げて何かが走ってくるのがみえる。


「あぁ、なんだか…懐かしい光景が…」


 獲物を追う瞬間に起きる『アマゾネスの土煙』だ。

 懐かしさに目を細めた私だが、次の瞬間、ぎょっと目を見開いた。





 アマゾネス…。




 

 北国なので仕方がないとはいえ、本来ならばそのプロポーションを存分に生かせるよう布地面積は小さく、胸と細い腰を強調するのがあたりまえである。

 そんな彼女達は高身長で、強気な顔立ちは戦女神を思わせると言われたものだが…。


 駆けてきたのは、


 ひらひらふりふりドレスに身を包み、頭の上には大きなリボン。

 まるで淑女の様にスカートをほんの少し摘まんで、大股にならぬように気を付けているのか、ものすごい小股なのだが…この上なく高速で駆けてくる女性達…。


 見た目には走っているだけだが、あれで音を立てない狩りの走りの応用なのだから恐れ入る…。

 

 というか…、


 一体どこに力入れてるんだアマゾネス!?

 何になりたいんだアマゾネス!?


 彼女達は家の前でピタッと揃えた様に止まると、しずしずと家に入り、軽く膝を折って微笑んだ。


「「「ようこそアマゾネスの村へ」」」


「お…お前達…」


 倒れている男が空気を読めとばかりに小さく声をかけると、彼は女性陣全員に『メデューサの瞳』で睨まれ、ピシリと固まったまま動かなくなったのだった。




 

 こうして、私達はようやく、乙女な(・・・)アマゾネスと、ドワーフなエルフを交えて、話の席に着くことができたのである…。

 


 何かが納得イカーン!

 と思った私であった…。 

 


 

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