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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
エルフ暗躍? 編
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第89話 エルフ登場…?

「アマゾネスの村にとうちゃーく」


 宣言すると、すぐにユメトラはガクリとその場に倒れ、ごろりと転がって眠りに落ちた。 

 「ボク、インドア派なのに…」と歩いている途中何度も文句を言いながら半日雪道を歩き続け、案内しきってくれたのだ。

 

 今はゆっくり眠らせてやろう・・。


 …という人はこの場には誰もいない。


「ほら、こんな所で寝ると冬眠するぞー」


 シニヨンが何度もユメトラをつつく横で、私はシャルの腕の中でゼィゼィと喘いでいた。

 私も歩いたのか…と言えばそうではない。

 ごくごく普通に風邪が悪化しただけである。


「ルゼ…風邪というのは悪化するのか?」

「しますー」


 なんだろうかこの会話はっっ。


 敵が潜んでいるかも知れない村に辿り着いてのこのグダグダ感に、誰もまともな反応をしないのはいかがなものか。

 シャルの肩越しに後ろを見れば、フラウは目が合うとニコニコと微笑み、オリビアはイグニスとああでもない、こうでもないと何かの話題で盛り上がっている。

 

「誰一人エルフに対する対抗策を考えないってどうなんだろうな…」


 シニヨンは一向に目が覚めないユメトラを抱き上げた後、私達の様子を見て呆れていた。

 そんな彼も作は無いので文句を言えた立場でもないだろう。


「それにしても…。臆病でほとんど人前に出ることなど無い幻の種族であるエルフが、なぜ人間の前に姿を現したのでしょう」


 話が終わったのか、オリビアが剣の柄に手をかけながら傍にピタリと寄り添う。

 シャルが抱っこしているのである程度安心しているようだが、周りを警戒し、辺りを窺っているようだ。


「臆病…?」


 シニヨンがなぜか訝しげに眉根を寄せる。オリビアの告げた一般的なエルフ像に納得がいっていないようなのだが、それはやはり、エルフの命によって、アマゾネスに吊るされるというひどい目にあったせいだろう。




 と思っていた…。




_______________




「知らぬ仲ではないので堂々と正面から行こうか」


 そう言えば、フラウはアマゾネスの妻を持つ現村長の義兄だ。

 エルフを警戒するあまり、村に入るのすらためらわれていたが何ということは無い。

 私達はアマゾネスを訪れたのであって、エルフに襲われに来たのではないのだ。


 堂々といこう。堂々と…。


 すっかりエルフが目的であることを頭の隅のさらに奥へと仕舞い込み、私達は村へと入った。




 アマゾネスの村は、村…と呼ぶにはギリギリの、人口が少ない小さな村で、家々はぽつぽつと離れている。

 建てられている家はイリューゼの頃はテントのような簡易的な家だったが、ここは北国のせいか、大きめのブロックを積み上げて作られた石造りの家である。


 家の裏手には柵があり、家畜が放たれている。

 どこにでもある長閑な村の風景だが、雪のせいなのか、それとも別の何かがあるのか、人の気配がしない。


「静かすぎます」


 オリビアが辺りを見回し立ち止まる。

 その隣に立ったシニヨンはきょろきょろと同じように周りを見た後、とある一点をじっと見つめ、そして首を横に振った。


「一座の馬車も無い」


 シニヨンが言うには旅芸人一座の行先はフラウの領地にある小さな町。

 解放されているのならば、私達がここに辿り着く道中の間に出会っているはずだと、シニヨンに抱かれて不満そうなユメトラが説明してくれた。


「村長の家はこっちだよ」


 皆が不測の事態にいつでも対処できるようにと緊張する中、フラウは全く自然体で杖を突きつつ先を進む。

 



 雪が深々と降り積もる中、ようやく辿り着いた家は、他の家と同じ石造りの平屋だが、大きさがかなりあった。

 その家の扉をフラウが叩くと、中から男の声が「開いているから入ってくれ」と告げ、私達はあっさりと中に入り、拍子抜けしかけて…。


「真っ暗だ…」


 突然の闇魔法に包まれて視界を失った!


 すんなり通されたので危うく油断するところだったが、幸いまだ警戒はし続けていたので魔法の種類もすぐに分かった。

 だが、その魔法を解く前に、ぐんっと体にGがかかって私は口を閉ざした。


 ギィン!


 ありえないことに家の中で剣の音が響く。

 私の目の前にも剣を薙ぐような風の音が響き、シャルが再びぐんっと勢いをつけたことで私の体は右へ左へ…。


「魔法の解除をうおうおうおう!」


 これは歌を歌っているのでもタンカを切っているのでもないぞ!

 翻弄されているのだっ。


 ジェットコースター状態で闇の中を振り回される。


「我が君! 魔法の解除を!」


 やりたいけどできん!


 仕方がないので、シャルの動きを止めようと、念のために物理防御の結界を展開させ、シャルの頭にしがみ付いた。


「ふぐっ!?」


『闇を打ち払え・光よ!』


 叫ぶと当時に部屋の中が白く輝き、私は目を閉じてそれをやり過ごした…。


 

 



 しんと静まり返る中…どさりという音とともに、私はそぉっと目を開き、あんぐりと口を開けた。


「フラウ…」


 あらかじめ暴れることを想定してあったのか、物がほとんど置いていない部屋には、なぜかたくさんの細身の男達が倒れ、その中央で、フラウが一人の男の腕を捻りあげていた。


「さて、これはどういう歓迎かな…アマゾネスの皆。そして…エルフ…?」


 フラウは突然訝しげに目を細めてその方向を見た。

 私達の目も、彼の不思議そうに細められる目の先を辿り、壁際にずらりと並んだ人々を目にして、呆気にとられてしまった。

 


 尖った耳、金糸の長い髪に森の緑の瞳…。




「待っておったぞ災厄の種よ」




 青銀の槍を手に、厳かな声が響く。


 

 それはいい…そこはエルフと認めよう…しかし…。


「「「エルフ?」」」


 私、オリビア、イグニスの声が重なる。

 


 問いたくなるのも無理はない! 

 そこにいたのは、立派なひげを蓄えた…。





 幼児サイズのエルフ達であった…。

 エルフ…じゃなくて、ドワーフじゃないですか?

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