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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
反魔法勢力編
81/97

第81話 重要情報…?

 宝物庫は、片付け嫌いなリュークが物を突っ込むだけ突っ込んだ押入れのような場所。

 中はおそらくだだっ広い場所に、足の踏み場もないくらい乱雑に物が押し込まれた空間となっているだろう。

 

 かつての己の片付け能力の低さを思いながら、『反魔法集団とは』『魔法嫌いな人々』などと言ったどうでも良い本を分けていく。


 なんでこんなものを買ったんだろう、当時の私…。

 

 首を傾げながら、次に手にしたのは、『実録・反魔法集団』という名の雑誌のようなモノ…。

 本当に何でこんなもの買ってるんだ?


 一つだけ分かったのは、当時の反魔法勢力は反魔法集団と呼ばれていたことと、今のような過激な行動は起こしていないことだ。

 全ての時代の魔法勢力があんな大騒ぎを起こしていたら、これだけの年数が経っているのだ、ほぼ駆逐されているだろう。

 ということは、今回の反魔法勢力が特殊なのか…。


「そう言えば、反魔法勢力って、反魔法を掲げているのに強かったね…」

「あぁ。あんなものは今までいなかった。表に出ていなかったということもあるがな」


 対峙した魔道士を思い出し、私がぽつりと呟くと、シャルが唸る。


 反魔法勢力があそこまで大きく行動に出たのは初めてだと言う。

 ルドの報告では、彼等が狙ったのはやはりリューク関係で、狙い通り、役に立たない官僚達の一斉検挙中を狙って襲ってきたのだという。


 準備はしていたのでかなりの数は捕えたということだ。

 ただ、捕えた者達は末端の切り捨て要因なのか、変に反魔法勢力に傾倒しているものの、何の情報も持っていないという。

 ある意味徹底している。

 

「こちらで独自につかんだ情報によれば、裏町で彼等が探し求めていたのは、リューク様だけではなく子供達も探していたようです」


 黒猫さんが手を止めて報告する。

 不穏な空気が流れたせいか、部屋が薄暗くなったように感じる…。


「子供達って?」

「魔力の強い者。魔法が使える者を対象に捜索していたそうですが、孤児院は保護対象でしたので、ハリにゃん様が敵を攪乱してくださいました。ただ、そのハリにゃん様がおっしゃるには途中で妙な魔法の干渉を受けた・・と。原因は調査中です」

「ハリにゃん様?」

「尻尾が二股になったお猫様です」


 そう言えば二股の尻尾のメイドさんがいたな…。彼女がハリにゃん様だろう。

 

「現在、興奮する竜達を押さえておりますので、窓の外に姿が見えるかと」


 言われて私はベッドから降り、窓の外を覗いた。

 私の部屋からは城の南庭と、客人を大勢泊めることができる離宮と呼ばれる建物が見えるのだが、現在私の目の前には…。


 なぜか竜の背が見える…。

 


 道理で部屋が薄暗くなったわけだ。

 窓の外では、この部屋の光を遮る巨大な色とりどりの竜が、鼻息荒く…ラジオ体操に似た動きをしていた。





「シャキッと動かんか~!」


 巨大な竜の間を縦横無尽に駆け廻り、一回転をかけて竜の頭に踵落しをするのは、シャム猫に似た二股尻尾の猫である。

 しかし、猫といえどもその蹴りの威力は凄まじく、竜の頭が地面にズドンッとめり込む。

 

 きっと、あの蹴りを繰り出した二股尻尾の猫がハリにゃん様だ。

 見た目は可愛い子猫のなのに、内包魔力が高い。


『うお…すごい蹴りだな。それにあっちも』


 リュークが共に窓の外を興味津々に見つめ、私がかれのいったあっちを探すと、リュークがその方向を指で指し示す。

 彼が指差す方向を見れば、そこには白と黒の小さなパンダの姿があった。


「我がライバル!」


 オリビアが突如声を上げ、窓にへばり付いた。

 イヤイヤイヤイヤ…戦ってもいないだろうに、ライバルって…。


 見れば、パンダは巨大なハサミを振り回し、豪快に竜の腹にそれを叩きこむ…かと思えば、それをフェイントとし、ぶんっと(なた)を投げた。

 すると、鉈はくるくるとブーメランのように弧を描き…、


 ガシャーン!


 私の部屋の窓を突き破り、なぜか直角に曲がって飛んだかと思うと、シャルの真横にドスリと突き刺さった!


「まぁ、危ないですよネムクマ様」

「ごめんねー。手が滑っちゃった。てへ」


 てへとはにかみながら、目にきらりと殺気が滲んだのは気のせいだろうか?


「ワザとだろう! この白黒凶悪熊猫!」


 シャルが(なた)をぶんっと放り投げると、小さなパンダは今度こそ巨大鋏を大きく振り、黒い体躯の竜の脛にヒットさせて転ばせ、鉈の軌道に黒竜の頭を向けた。


『うおっ!』


 黒竜は、竜で出せる最大の瞬発力で頭の位置を変え、鉈を回避!


「ちっ。ハゲ散らかせなかった…」


 パンダは悔しげに舌打ちした…。

 

 ネムクマさん…凶悪ですね。

『凶悪な熊猫(パンダ)だな』


 私の心の声とリュークの声が重なる。シャルも頷いたので、同じ意見だったようだ。

 オリビアだけは…どう見てもワクワクしているので、おそらく違う意見を持っているだろう。


 大方素晴らしいですよ我がライバル!

 などと思っているのだ。


『アンセルは女になっても鬼畜な性格か…』


 リュークがため息を吐き、私はここで初めて、かつての私がアンセルを鬼畜と認識していたと思い出した!

 どこで間違って恋心になったんだろう…ほんとに…。




 しばらく窓の外を見ていれば、どうやら猫達は、ヘル爺の健康ドリンクで興奮してしまった竜体に体操をさせ、体を動かして発散することで、興奮を収めるといった方法を試しているようである。


 気になるのは…。


「どぉぉぉぉりゃああああ!」


 叫びながら、蒼い竜の体に突進していく老体…。

 グラハムさん…。


「シャル…」

「何も言うな…」


 私の問うような視線からシャルは目を逸らし、何とも言えない空気が流れた…。


 打ちに行っては倒されるグラハムを見て呆気にとられていると、背後から和む声が響く。


「あ、これじゃないかにゃーん」


 振り返れば、声の主は、黒猫さんの持つ紙束をじっと見つめる仔猫メイドである。

 どうやら彼女達は私達があの騒ぎを見ている間、リュークが出した反魔法勢力と存在消失事件の記事を調べていてくれたらしい。


 ゆらゆらと尻尾を揺らし、耳をぴくぴくっと動かし、紙束に指を当てると、黒猫さんが「まぁ。すごいですね仔猫様」と褒めて彼女の頭を撫でる。


 仔猫様も幸せそうだが、黒猫さんがこの上なく幸せそうだ。

 そんな和む風景の中、黒猫さんの胸元のボタンがぷちぷちとはずれていく。


『喜びで胸のサイズが変わるメイド!?』

「いえ、違います我が君…」


 驚くリュークにオリビアが突っ込む。

 何事かとじっと見つめれば、少しだけ開いた胸元から、両手を広げた掌サイズの小さなパンダがじゃじゃーんと姿を現す。


「読みますよー。ふむふむ…これらの人間の失踪には、エルフが関わっていると我は見た! と書いてあるとちびくまはあえて言おう!」

『あえて言うのか…』

「あえて言うのです」


 なぜかリュークと掌パンダが見つめあう。


 部屋の外では、どごぉぉぉんっと竜が墜落する音が響き、リュークがふっと笑うと、掌パンダはにぱぱっと笑って手を振り、再び黒猫さんの胸の谷間へと消えて行った…。


 そこは住みつける場所なのか!?


 ・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・

 ・・・・



 色々驚き過ぎて、重要情報に驚き損ねる私であった…。





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