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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
反魔法勢力編
76/97

第76話 普通の男ってどういうの??

「我が君? いかがいたしました?」


 立ち上がり、蒼白になる私を覗き込んでオリビアが首を傾げる。

 フラウやイグニスが私を見つめ、フラウの唇が動いた瞬間、私は魂が共通点であるという答えを言わなければならないことにどきりとする。


「ルゼ、君は…」


 しかし、フラウの質問は、その時伸びてきた腕に遮られた。


「ここにいたのかルゼ」


 ふわりと腹に腕を回されてそのまま持ち上げられ、私はシャルの腕を椅子にした格好で抱き上げられたのだ。

 突然の出来事に、恐怖も緊張も、驚きで霧散した。


「シャル?」

「お披露目するために迎えに来た」


 気が付けば、会場からバルコニーに出る出入り口を開き、グラハムが佇んでいた。

 グラハムはシャルが私をお披露目するタイミングに合せられるよう、私の居場所を把握していたのだろう。

 チラリと見やった彼は、目が合うとスッと軽くお辞儀した。


「フラウ、ルゼを借りていく」

「もうそんな時間ですか。では、見に行かないと」


 フラウとイグニスも立ち上がって、私を抱き上げたまま歩き出すシャルの後に続く。

 私はそんな彼等をシャルの肩越しに見やり、ほんの少し思い悩む。

 魂が共通点と言うことを伝えるのは怖い気もする…だが、このままフラウに何も言わずにシャルの元に嫁ぐようなことになるのも嫌だ。


「フラウ。イリューゼの事…」


 人間よりもずっと耳のいい竜人であるフラウは、聞こえたようでにこりと微笑み、顔を上げる。


「ルゼがなぜイリューゼを知っているのか聞きたかったのですが、また今度のようですね」

 

 寂しげな表情で微笑むフラウを見て、私は覚悟を決めた。


 シャルの肩を叩き、床に降ろしてもらうと、まだ会場には入っていないバルコニーで、不思議そうにこちらを見つめるフラウに、私は少々恐怖を感じながらもぐっと腹に力を込めて告げた。


 逃げるのは駄目だ!


『フレイ・ディバール。私はまだ恋も愛もわからぬような女だ。浮気もするやもしれん。他の男をただ一人と認めることもありうる』


 古い、今では神語と呼ばれる言葉で私が告げたのは、イリューゼがフラウのプロポーズを受けた時の言葉だ。

 この後、イリューゼは『それでも良ければ共にいよう』と手を伸ばしたが、私はフラウを見上げて尋ねた。




「今が…その時であるかもしれない。貴方は許してくれるだろうか?」




 フラウはしばらく呆然とした表情で私を見下ろしていたが、彼はすぐに湧き出るような笑みを浮かべ、私を抱きしめた。


「あぁっっ、そう言うことでしたか!」

「何がそう言うことかわからんが、人の(つがい)に抱き着くなっっ」


 力いっぱい抱きしめるフラウから引きはがす様に、シャルが私達の間にグイッと強引に割り込んで、私の体を腕の中に閉じ込めた。

 その目は警戒心をむき出しにしてフラウを睨む。


「心が狭いですねシャル」


 フラウは不満そうである。

 

「竜族では普通だ」


 シャルはすぐに答え、私はきょとんとしたままフラウを見上げると、彼はシャルの腕の中の私に顔を近づけて、満面の笑みで告げた。


「再びお会いできて嬉しいですよ。そして、安心してください。私はどの妻も一番愛しておりましたので、あなたが今世で幸せになるのならばそれで良いのです」


 ん? 今おかしな言葉を聞いたぞ…。

 私はフラウの言葉をもう一度頭の中で繰り返し、クワっと目を開いた。


「どの妻も!? フラウ、一体妻は何人いた!?」


 叫ぶ私に、フラウははたと動きを止めて首を傾げる。


「・・・はて、何人でしたか・・・」


 悪びれなくさらりと告げたフラウに、私はその場でがっくり膝をついて床を殴りつけたい気分になった。

 

 一番最初の妻として、彼を傷つけた者として、黙っていてはいかんと思い、言い知れぬ恐怖を感じながら告白したのに! 

 なんだこの微妙な感じは!


 思わず私は涙目になりながらフラウの胸ぐらを掴んだ。


「お前! 私があの次の人生であんっなに(恋に)苦労していたというのに! その裏で幼な妻といちゃこらしておったのかー!」

「あぁ…幼な妻もいました。彼女は彼女でとっても可愛らしくて…」


 幸せを思い出すかのようなフラウの表情に、私は滝のような涙を流すと、今度こそ床に膝をつき、「うぅぅぅぅっ」と呻いた。

 

 こういう奴だ…こういう奴だったよ…フラウも(・・・・)…。


「人が危険な場所の桃を何とか採ろうと苦労している横で、うまそうに桃を食いながら応援する奴だったよ、お前は…」

「懐かしいね。貴方はどこから持ってきたと怒って…」


 悪びれなくにこりと微笑むフラウは、次の生で出会ったアンセルにも少し似ていて…。

 

 まさか、私はこれに似ていたからアンセルに恋をしたのだろうか!?


 一瞬の蒼白の後、わけがわからないと言った様子のシャルの腕を抱きしめ、涙目で見上げて訴えた。

 

「シャル、シャルはこういう奴等にはなっちゃだめだからね!」


 そう言って私はフラウとオリビアを指さすと、シャルは二人に対しては首を傾げ、私を見下ろすと、表情を蕩かせて口づけ、


「竜族は妻にベタ甘な種族だ。そこの二人と同じような事にはならないから安心しろ」


と宣言した。  


 その後、夜会会場で番宣言と共に濃厚なキスを受けたのだが…。

 


 私は一言言いたい…。


 そんな違いはいらないから!

 


 普通の男ってどんなのだっけ…とその夜は真剣に悩んだのだった・・・・。

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