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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
反魔法勢力編
64/97

第64話 全ては策略の元に…

「ぎぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁ!」


 私は悲鳴と共に部屋中を走り回る。

 だが、相変わらず体力は少ないので、大量のねずみによって全身を床に縫い止められた。

 

「さぁ、お着替えの時間ですわよ」


 腕を組み、私を見下ろしてふふんと微笑むカレンはまるで…、


 悪の女王様でした…。


 そして私の服は脱がされ、一気に着替えさせられる。

 しかし、着替えてみれば、どうやらイメージに合わなかったらしく、カレンの眉間には皺が寄っていた。


「難しいわね…。服はルゼ用だから似合わない訳ではないのだけど、こう…デートと言うには子供過ぎるのよねぇ。胸のせいかしら?」


 最後の言葉に、オリビア、サーシャ、私の上に影が差した。

 胸…胸はいかんともしがたいです。


 ついでと言っては何だが、銀の髪の幼女メイドさんはガクリと膝をついて項垂れていた。

 いやいや、まだ幼女なのだから胸の心配はしなくていいでしょうに…。


「そうだわっ。髪を巻きましょう」


 私達にダメージを与えたことなど全く気付かず、カレンはパンッと手を叩くと、それに応え、私と同じ白い髪の幼女メイドがカーラーなどの準備を始めた。


「スカート丈は短い方が可愛いですよ」


 銀の髪の幼女メイドがカレンの指定で、鈍い紅を基にしたタータン・チェックのワンピースを用意する。

 バックフリルで膝より少し下の丈、履くのは編上げの茶色いブーツだ。


「髪は結いあげましょう」

 

 ワンピースを身に着けると、今度は白い髪の幼女メイドが私の髪をポニーテールに結い上げ、髪先をくるくるとふんわりロールに巻いていく。


「ちょっと幼くない? 化粧しようか?」


 カレンの横ににょきっと顔を出したサーシャに、私達はぎょっと目を剥いた。

 サーシャの顔が、ピエロから…真っ白の能面になっていた!


「・・・・・と、とにかく準備はできたわ! 後は…」


 カレンだけでなく、幼女メイドさん達もサーシャから目を逸らす。

 すると、銀の髪のメイドさんの猫耳がぴくぴくっと動き、白い髪のメイドさんの赤いリボン付き尻尾がピクリと動く。


 二人はぱたたっと軽い音を立てて走ると、部屋の扉にそれぞれが飛びつき、その取っ手を引っ張って開いた。


 シャキーンッ、シャキーンッ。


 扉の向こうから、全力で走るシャルと、その後ろを、シャルに向けて鋏を鳴らしながら、恐怖映画の様に追いたてるパンダの姿が!

 

 シャルは扉に駆け込むと、私達を背に庇うように身を翻し、剣を抜こうとする。しかし、そこでパンダは鋏を降ろし、満足そうに頷いた。


「任務完了!」

「何のだ! 突然執務室を襲撃しておいて!」


 しゅ…襲撃したのかパンダさん…。

 

「あらら、デートにお誘いしてねって言ったのに…」

 

 唖然とする私やカレン、オリビアの横で、相撲取り並みに着ぶくれた能面サーシャがあらあらと言いながらパンダに近づくと、その頭を撫でた。

 

「でも連れてきてくれたならいいよねー。ご苦労様~」

 

 サーシャ…パンダさんが硬直してるし…。

 

 サーシャのあまりの格好に、パンダだけでなく、部屋に飛び込んだシャルも固まってしまい、まるで二人(?)の時間は止まったかのようだ。

 

「これがイチコロなのですね…サーシャさん」


 オリビアの感心するような呟きに、サーシャはにやりと真っ白に染めてしまった唇を持ち上げてサムズアップをした。

 

 

 誰か…この娘を止めてくれ…。




__________________



 結局、サーシャはパンダや幼女メイド達に回収され、メイク落としを入念にされていた。

 

「せっかく綺麗にできたのにー!」


 という叫びに、一体何をどう綺麗にしたのかと皆に疑問を抱かせながら…。



 それはともかく、突然パンダに鋏で襲撃されたシャルは、カレンに丁寧な事情説明を受けると、ようやく不機嫌顔からご機嫌顔に戻り、私の前に立った。


「そう言うことならぜひエスコートしよう。…時間は少ししかないので3時間ほどになるが、いいだろうか?」


 手を取られ、デートの申し込みを正式にされると、どきんっと心臓が高鳴る。

 

 こ…これが恋の兆しだろうか? 

 確かにアンセルの時にもドキドキは感じたけど、あの頃はどちらかと言うとムラムラが強かったんだよね…。

 大人だったせいかな…。


「うっ…何やら悪寒がっ」


 オリビアがブルリと体を震わせるのを横目に、私はシャルを見上げる。

 シャルの身長は2メートルはあり、私は155くらい。

 抱き着いても彼の鳩尾くらいに頭が当たる。結構な差だ。


 そのシャルと見つめあうと、彼はほんの少し中腰になってくれた。


 優しさ…? これが優しさっっ!


 私は奇妙な感動に打ち震えた。


 アンセルの時は戦場が多かったから、見つめあうと大抵は投げられたり、ナイフが飛んできたり、指示しないなら見つめてくるなとチョップを喰らったりと、何が起こるかわからない、サバイバルなドキドキも大いに混じっていたものだ。


 あ・・思い出すと、ちょっと殺意が浮かぶわ。


「うぅっ…今度は鳥肌が…」


 オリビアは腕をさする。


 私は周りの様子は目に映らず、緊張しながら首を傾げて見つめるシャルの手を取ると、ほんのりと頬を染め、コクリと肯いた。


「お…お願いします」


 シャルは嬉しそうにコクリと頷き、私の頬に軽く口づけて私の心臓をがっしりと鷲掴んだ…ような気がした。

 うん、これが不整脈でなければ…おそらく。





 そんな微笑ましい光景の横で…


「カイザー様が護衛ですわっ。で、周りに怪しまれないために、私がカイザー様の恋人のフリをいたしますっ」

「…それが狙いだったんだ」

「抜け目ないにゃー」

「・・・じゃあ、今度は騎士団長浚ってくるね~」

「え?! それ、大丈夫ですか!?」


 なんて話がまとまって(?)いたとも知らずに…。





 

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