第63話 確かめに行きましょう
ばさばさばさばさーっ
幼女メイドのうち、銀の髪の少女、赤いおかっぱ頭の少女、白い髪の少女がこんもりと視界を塞いでいた衣装を落とし、唖然とした表情でこちらを見ていた。
何か間違ったこと言っただろうか…??
そう言えば、前髪がぱっつんぱっつんに短い赤髪のおかっぱ少女は初めて見る顔だ。
じっと見つめていると、彼女は私と見つめあい、はっと姿勢を正して一礼した。
一礼はいいのだが…なぜスカートをつまんでの淑女の一礼でなく、軍隊的な額に手を置く一礼…というか、敬礼なのだろう…?
「お聞きしますが、リューク陛下の時に恋をしたことはおありですか?」
おかっぱ頭の少女に気を取られていた私は、はっとして尋ねてきたオリビアの方を向き、コクコクと頷く。
あの時恋をしたのは間違いなくアンセルで、オリビアの前世だ。
今世に別性で生まれてきたら、必ずや妻になろうと思っていたのに、以前と同じく親友というのは、いまだにほんの少し寂しい…。
「それが?」
「えぇ、噂のように、男相手だろうが何だろうが構いませんが」
「ちょいまった、噂!? まさか男色の話信じてたの!?」
リューク時代に散々噂になったリューク男色説…。
あながち間違いではないので、顔が引きつってしまう。
「信じてませんよ。ただ、今現在も歴史家の中にはその説を唱える方が多いそうです」
オノレ歴史家…。
反魔法勢力じゃないけれど、今一瞬反歴史家勢力になろうかと思ったわ…。
「まぁ、それはともかく、その時の気持ちと照らし合わせてどうなのよってオリビアは言いたいのよね?」
オリビアはサーシャの言葉に強く肯く。
サーシャは、頭に真っ赤なアフロヘアを乗せ、化粧を塗りたくりすぎてピエロにしか見えない顏で、私にさらに尋ねた。
「で、どうよ?」
「そう言うサーシャはその格好どうなのよ?」
幼女メイド隊達がサーシャの周りでワタワタしている。
それほど今のサーシャは…危険である。
視覚的に…。
「アタシのことはイイでしょっ。あ、そうだ、メイドさんっ。シャルさんにデートしましょうってお誘いしてほしいのだけどできる? 夜会までは時間あるし、どうせルゼは衣装を決めないから…こっちで勝手に決めておけばいいでしょう?」
メイド達は「ん~」としばらく首を傾げていたが、赤いおかっぱ頭のメイドさんが思い立ったように、クローゼットにぎゅむぎゅむと服を押し込み、強引に扉を閉めた後元気に敬礼した。
「ラジャりました! 陛下に伝えてきます」
そのすぐ後、ポンッと言う軽い音とともに赤いおかっぱ頭の少女が白黒の小さなパンダに変身し、その手に巨大鋏を取り出してダカダカと部屋から飛び出していった。
・・・・なるほど、彼女はあのパンダの人間の姿だったらしい…。
その背を見送っていると、二人の幼女メイドがぼそりと呟く。
「「逃げた…」」
残された銀の髪と白い髪の幼女メイドは、ちらりとクローゼットの方を見やると、ボンっと音を立ててクローゼットから服が飛び出していた。
パンダさんは片付けが苦手らしい…。
そして、無責任な提案をしたサーシャも片付けは苦手で、再びドレスを脱ぎ捨てては、幼女メイドさん達を慌てさせる。
「サーシャ、さっきのデートって一体…?」
何を始めるつもりなのかと尋ねれば、サーシャは軽く首を傾げて答えた。
「ん~。ほら、自分の気持ちを確かめたいなら、手っ取り早く向き合うべきでしょ。ということで…デートをして確かめてきなさいってこと!」
「デ・・」
バンッ!
「お邪魔しますわ!」
部屋のノックも無く扉を開いたのは、いつものように勝気な顔立ちで、悪びれなく堂々とした態度のカレンである。
彼女は扉を開いてすぐに部屋の中を見回すと、その視線を私にとどめ…ようとして、視線が流れ、サーシャの顔にとどまった。
「あなたの友人も化け物仲間なの!?」
カレンの叫びに私は反論しようとしてサーシャを見、彼女を指さして名誉のために反論を…反論を…。
「サーシャはっ…」
ピエロ顔、アフロヘア、着ぶくれドレス…。
思わずオリビアに助けを求める視線を向ければ、オリビアは目を逸らした。
私にこれをどう説明しろと!?
目を泳がせながら、私は息を吸い込んで答えた。
「彼女は…私を越える化け物です!」
答えは一つしか出ませんでした。
「なんでよ!」
「あぁ、そう」
サーシャには怒られたが、カレンは納得した…。
い…いいのか。
「それよりもデートですって!? さっきすれ違った熊猫に聞いたわ! 手伝わせなさいな!」
「はい??」
後ろでサーシャがまるで恐竜か何かのように大暴れしている。が、そこはまぁ・・そっとしておこう。
私がカレンの言葉に首を傾げると、カレンはパタパタと片付けに奔走する幼女メイドから、一枚の淡いクリーム色の外出用ドレスを引き抜き、私に押し当てた。
「私がお手伝いして差し上げるわ!」
にやりと微笑むカレンの表情に、私の背に冷や汗が流れたのだった。




