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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
反魔法勢力編
62/97

第62話 まずはそこから!

「妻になって欲しいと言っただろう?」


 シャルに改めて聞かれたので私はうんうんと頷く。

 

「それに関しては受けて立つと言いました」

 

 私は自分の答えを頭の中で反芻させ、再び頷く。


 食べられるわけにはいかない。


 今までは何とか逃げよう逃げようと思っていたが、ここにきて予定が狂ってしまったのだから、腹を括って戦うことを選んだのはついこの間のことだ。


 私の答えに黒の竜王が腕を組んで頷く。


「・・・・ならばプロポーズを受けているので間違いないではないか」

「誰が誰の嫁、などと答える必要もあるまい?」


 白の竜王が首を傾げて、私も共に首を傾げた。

 そんな奇妙な光景の中に、ぬっと黒猫さんが現れる。


「お悩みの所申し訳ありませんが、そろそろ竜王陛下方には着替えていただきたいのです」


 これに竜王達は渋い表情を浮かべる。


「服か、面倒だな…無しではいかんのか?」

「その場合城内の機能が著しく低下いたしますので、今すぐ(・・・)! 着替えてくださいませ」


 一瞬、ギラリと黒猫さんの目が光ったような気がして、私もだが、竜王達も口を閉ざした。


 気が付けば、庭をぐるりと囲む回廊には人だかりができていて、かなりの人数にのぼっていたのだ。

 先ほどまではミーハーな少女達ばかりだったが、今はシャル達を拝む年配の人間まであらわれたため、グラハムや黒猫さんが城内の機能を正常に戻すため、慌てて移動と着替えを促したようだ。


 3人はぶちぶち言いながらも黒猫さんと、グラハムに連れられて行く。


 私は三人のマントから見える素足をじっと見降ろしながら見送り、回廊から人が消え、神殿の少女達も消え、オリビアが迎えに来るまで、呆然とその場で立ち尽くしていたのだった。



 プロポーズ…?

 

 アレハプロポーズダッタノカー!?


_______________________



「ようやく意識が戻ってまいりましたか我が君?」


 はっと我に返った時、私の顔の前でオリビアがぶんぶんと手を振っていた。

 いつの間に部屋に戻ってきたのか…と思えば、どうやらここは私の部屋ではなく、台車で運ばれた先の…神殿の衣裳部屋だった。


「えぇと?」


 台車の上で座り込んだ状態で運ばれていたらしい私は、何があったのだったか? と首をひたすら捻る。

 そして思い出したのは、プロポーズという言葉。


「お、おおおおおお」

「何よあんた、いまだに死霊の叫びを続けてたの?」


 オリビアを呼ぼうとしてどもった私に、サーシャの声が響いた。


 サーシャ?


 はっとしてそちらを振り向けば、そこには豪奢な衣装を重ね着し、さらには厚化粧というより…化け物化粧を施したサーシャがいた。


 胸に布をおしこめ、巨大に胸元を膨らませて、かなりご満悦の様子だ。


「何してるのサーシャ?」

「何って、ルゼが夜会服を選ぶんだって聞いて、気になったからこうして見に来たの」


 見に来たというよりは、自分が楽しんでいるように見える。

 どうでもいいが、その化け物化粧と膨らませ過ぎの胸は何とかした方が良い・・。


「ん? 夜会って?」


 私はぽつりと疑問を口にした。

  

 サーシャは真っ赤な口紅を塗りたくり、まるでコメディー吸血鬼のような顔になると、何重にも重ねてきたドレスのスカートを翻した後、にっこり微笑む。


「どう? これで貴族もイチコロ?」

「あ~うん。たぶんイチコロだね」


 あまりの化け物ぶりに、一撃でやられるのは間違いないだろう。

 しかし、あえてそこは言わずに頷くと、サーシャは楽しそうに笑う。


「そうよね~。こんだけ胸があれば…胸…」


 思わず私とオリビアも自分達の胸を見下ろしてしまい、三人で溜息を吐いた。

 ここでようやく私は本当に我に返り、今度こそ尋ねた。


「ところで、夜会服ってどういうこと?」


 サーシャが着たり脱いだりする服を、小さな幼女メイドが追いかけて拾い集め、さらに追いかけるという姿が何とも癒される光景だ。

 彼女等の姿に和まされ、目で追っているとサーシャがくるりと振り返る。


「どういうことも何も、今夜城でパーティがあるって陛下が言ってたじゃない。婚約披露パーティーなんでしょ?」


 婚約!

 私は胸の奥にしまっていた言葉を再び思い出し、顔から火を噴いたかのように真っ赤になる。

 

「オリビア! サーシャ! 私…シャルにプロポーズされた…んだよね?」

「えぇ、立派な妻問いでしたよ? ご不満でも?」


 私は首を横に振り、まず根本的に間違っていたことについての私の思い込みを話した。


「私、竜の妻は戦って勝ち取るもので、負けたら喰われるものだと思っていたの」

「…はぁ」


 オリビアが呆れたかのように相槌を打ち、サーシャが胡乱な目でこちらを見つめている。


「それですと、何やら過剰に反応していた『嫁』もそうなりますでしょう?」


 それにはすぐに首ををぶんぶんと横に振った。


「違う! 嫁は…嫁は…」


「何よ、嫁は無条件降伏だとでもいうの?」


 私はサーシャに向かってもう一度首を横に振り、ぽっと頬を染めて俯いた。


「嫁は…相手に恋をしているとばれたらなるものなの・・・」

「うんうん」

「まぁ、恋ありきで嫁ですかね? 見合いもありますが…」


 私はもじもじと自らの服の腹の辺りを指で弄り、意を決したように顔を上げた。


「私、恋をしてるのかな!?」


「「そっから!?」ですか!?」

 

 サーシャとオリビアの叫びに反応したかのように、幼女なメイドさん達も、なぜかピタリと動きを止めたのだった。



 そっからって…どこから?

 

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