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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
反魔法勢力編
59/97

第59話 約束まで…

 ざっと丸洗いされた…。


 オリビアの抵抗もむなしく、幼女達は幼女とは思えない力で暴れる私達を抑え込み、最終的には香油等も塗られ、まさにエステのようにつるりとした美肌にされ、着替えさせられた。


 いや…まぁ、その着替えも用意されたもので、ずらりと並んだミニスカートにオリビアが悲鳴を上げた訳だが、そこは戦い抜いた。

 現在私は貴族令嬢のようなフリルのふんだんに使われたワンピース。

 オリビアはパンツ姿の騎士服に戻った。


 パンツとブラは再びイチゴセットだけど…。

 オリビアはリンゴセットのパンツとブラだけど…。


「残念にゃー」

「…今度着てね?」


 猫耳仔猫娘さんの耳がへたりとしたかと思うと、その背から顔を出した「ちゅう」としか話さなかった少女が、おずおずと上目使いでお願いした。

 彼女の頭に覗くのはネズミの耳だが、髪は白で瞳は赤の私と同じ色を持つ。そんな少女から上目使いに見られるのは…。


「高度テクニックっっ、これが幻の秘義! 上目使い男殺し!」

「何ですかそれは…」


 オリビアに呆れたような表情で見つめられてしまった。

 

 とにかく、こういう恥ずかしがりながら上目使いというのが、男心をくすぐるのだ。

 …ぜひ、竜王陛下に試してみたいものだ。


 あ、いや、別にまだ見ぬ竜王陛下が気になるとか、そう言うことじゃない…。 

 好みだといいなとは思うけれど。


 そこまで考えたところで、なぜかシャルが思い浮かび、驚いた私は首をぶんぶんと横に振った。


「何でシャル…?」


 顔が熱くなってしまった。

 




 お風呂のせいなのか、余計な事を考えたせいなのか、頬の火照りを手で冷やしながら、何故かネズミ達に運ばれてベッドに戻ると、先程見なかった黒い猫の着ぐるみを着た幼女のメイドさんが出迎えた。


「朝食を持って来たにゃわん」


 にゃ・・・わん?

 じっと目を凝らせば、着ぐるみの中に別の耳が見える…。

 犬? 実は犬? しかし、裏子猫隊だからニャ~と頑張って付けてる?


 ベッドの上にテーブルを用意し、朝食を並べる黒猫さんは私と視線が合わさり、にっこり微笑んだ。

 まぁ、ねずみも熊猫(ぱんだ)もいるのだからいいのかもしれない。

 

 ・・・・いいのか?!




 そうこうしているうちに全てセッティングが整い、部屋にシャルが入ってきた。

 なんとなくよれよれになっているのは気のせいではないだろう。


「子供達にもお食事を用意してくるにゃわん」

「「「「いってきまーす」」」」


 メイドさん達はぞろぞろと次の場所へ向かい、私の隣に腰掛けたシャルは気疲れなのか、はぁと溜息を吐いた後、顔を上げた。


「あれらはかつて滅んだと言われる猫一族でな、まぁ…違うのも若干いるが、反魔法勢力によって追われた魔力の高い種族だ。身を寄せ合い、助け合って生きている中、黒猫が社会地位の復活を願い、城にメイドとして入った縁で受け入れた。今は情報収集、裏での護衛、メイドを兼任している」


 シャルの説明に、私達は食事を始めながら尋ねる。


「そう言われますと、彼女達のような高位魔力保持の種族…竜や、魔物と言った魔法に近しい生き物は昔よりずっと減りました。反魔法勢力が関わっているのでしょうか?」


 オリビアが、昔は少し歩けば出会った種族を指折り数え、今世で旅して出会った数と比較する。

 年間10や20は普通に出会っていたものが、この時代では0に近い。 


「十中八九な。千二百年ほど前、奴らは大々的にそう言った生物を潰していったからな。そこで、我等竜族が人の王に力を貸すという形で庇護される形をとった」


 その歴史は神殿の帝王学で学んだ。

 その上で竜王と呼ばれる者達の自由奔放さを耳にすると、明らかに無理やり押しかけた…という感じだったが…。



「だが、奴らは内乱などの混乱に乗じ、今もそう言った生物や遺産を狙っている。もちろん竜王も然り。今回、裏町を焼き払おうとした理由は」

「リュークが原因?」

「半分はな」


 かつての魔道王…に近しいものが育てた子供達がいる。いや、ひょっとしたら町の人間もそうなのではないか。

 その疑惑だけで裏町を火の海にしたのだという。

 とんでもない話だ。


 だが、そのとんでもない話で実際に被害が出ている。

 

「裏町の人間は?」

「大部分は押収した貴族の屋敷に突っ込んだ。部屋は有り余っているからな。町の復興や傾いた財政も捕えた貴族から絞り出す。その後は、町に商人と観光客を呼び込むため、竜の儀式を執り行いたい。少しだけ早まるがな…」


 何かイベントを起こして…地球で言うオリンピックのように、町と国を盛り立てようという手はずになっているらしい。

 そのためにルドとナハル、それに子猫隊は寝る間も無く現在も駆けずりまわっているのだそうだ。


 道理で全く姿を見ないわけだ。


「ところで、竜の儀式というのは一体?」


 オリビアが不思議そうに首を傾げ、私も同じようにこてっと首を傾げてシャルを見つめると、なぜか彼は頬を赤らめ、目を逸らして俯いた。


 何か恥ずかしい儀式なのだろうか?

 そう思って見つめていると、シャルは、ぐっと手に力を込め、私を見つめて真剣な眼差しで告げた。


「約束まであと半年ほど早いが…我が妻となって欲しい。ルゼ」


 

 目が…点になりました。

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