第58話 犯人は…
閑話的なお話…
「おはようございますルゼ様」
「お…おはよう? オリビア、どうしたの? その瞼…というより服?」
いまだにぐったりと動けない私は、オリビアを迎えて目を丸くした。
オリビアが着ている上衣は、今までと同じようなかっちりしたジャケットで間違いないのだが、下が生太腿をすらりと出した膝上丈のプリーツスカートに、ニーソックスと言う出で立ちである。
指摘した瞬間、彼女は、うるりと涙を浮かべた。
やはりここに来る前にも泣いていたのか、オリビアの瞼は腫れぼったくなっている。
「・・・・たんです」
「何?」
ぼそりと言った言葉は聞こえず、悲壮な様子でオリビアは項垂れる。
私はまだあまり動けないため、もそもそとベッドの中で動くと、オリビアが体を起こすのに手を貸してくれた。
衣装は結局昨日のままのベビードールなので恥ずかしいが、もう少ししたら黒猫さんが介助してくれる手はずになっている。
ところが、オリビアは私が体を起こすなり、ベッドに突っ伏して涙した。
「我が君も剃られてしまったのですね~!」
「な、何を!?」
「ありとあらゆる無駄毛です! 目が覚めたら全て剃られ、さらにはクローゼットの中身が全てミニスカートに!」
無駄毛!?
私ははっとしてワキを見る…が、よく考えたらリュークではないし、ルゼの体は虚弱のせいか、まだ無駄毛は生えていないのだ。
ほっと息を吐いたところで私は首を傾げる。
無駄毛って…女性にとっては大敵だった…。
慌てて優花時代のなけなしの女性心を思い出し、ブルブルと首を横に振った。
「む、無駄毛処理は大事よオリビア!」
そうそう。無駄毛処理は大事な事だったよ。
日本では数多くの女性が無駄毛処理に悩むのだから、ツルリと剃られたのならばよいことではないか。
「全部ですよ~!」
「・・・私も同じ目にあったから」
無駄毛はまだ無いけど見られたことには変わりないから同じってことで。
「ルゼ様も!?」
「うん、ほら見て」
上掛けを横に除けて透けたピンクのベビードールと、その下のイチゴセットを見せ、私は普通の服すら来ていなかったことを告げようとしたところで、ズバン! と突然部屋の扉が開いて私達は固まった。
「ルゼ! 怪我の具合は!」
飛び込んできたのはなぜか水も滴る色男なシャルである。
彼はほどけた三つ編みもそのままに、濡れた前髪をグイッと後ろに撫で上げ、私を見たところで固まった。
「「「うわああああああ~!」」」
絶叫三重奏が響き渡った…。
オリビアは慌てて私を抱きしめ、私は上掛けをぎゅっと握り、シャルは回れ右をした所で、「うおっ」と叫んで大きく体を仰け反らせた。
シャルの顔のあった場所には巨大なハサミの姿が。
「ですから面会謝絶だと言ったのです」
鋏の向こう側から黒猫さんが呆れたようにため息を吐きつつ姿を現した。
「面会謝絶などと言われたら心配するだろうが! こういう理由なら口で言え! 口で! 妨害ではなく!」
「ですから言いましたよ。ルゼ様はただ今イチゴの気分で大変危険な状態ですので面会謝絶です。どうしてもお部屋に行かれるというならば、我等裏子猫隊の屍を越えて行ってください・・と」
嘆かわしい、とばかりに目を逸らし、首を振る黒猫さんに、シャルはガッと吠えた。
「問答無用で襲いかかって来たろうが! 我が屍にされるところだったぞ!」
「大げさだにゃ」
ん? 聞きなれない声に私がオリビアの肩越しに様子を窺うと、メイド服を着た黒髪の5歳くらいの少女がひょっこりと顔を出す。
その頭には、黒い猫耳…。
「猫耳…あ、オリビアの会った幻の猫の一族?」
猫耳メイドの子供は頷き、その後ろからクリーム色の毛に先っぽが茶色の二股の尻尾を持った少女と、茶色の髪にアイスブルーの瞳の少女、それから、私と同じ色の赤い瞳に白い髪の少女、銀色の髪の少女、さらに…パンダが現れた。
パンダ以外は皆メイド服を着ている。
鋏を持ったパンダはただ今戦闘モードらしい。うっすらと殺気を感じた。
…シャルに向けて。
「…人が増えたからその世話をするためのメイドを雇った。これらは裏子猫隊と言って隠密行動を得意とする。ルゼの着替えも彼女達に任せる」
全員幼女なのだがいいのだろうか働かせて…。
私は呆然としながら彼女達を見つめていると、シャルは着替えたら呼んでくれと、逃げるように部屋を出ていく。
その後を、パンダが追う。
「見張りは任せて」
パンダはシャキンシャキンと鋏を鳴らしながら部屋を出て行き、扉が閉まると、幼女メイド隊が手をワキワキさせて迫って来た。
「まずはお風呂にゃーっっ。オリビアも入るにゃ」
「毎日の無駄毛処理は大事じゃ」
「ちゅ~」
「黒猫さんと衣装を用意します」
「あ、黒猫さん、下着もよろしくお願いします」
オリビアと私達が目を丸くする中、幼女メイド隊はあっさりと私達を持ち上げ、続き部屋にあるお風呂へと私達を運ぶ。
オリビアはお風呂場の扉が閉まる音にはっとして、ばっと体を抱きしめた。
「ぜ…全部見たのは…」
「「「私達にゃ」」」
「ちゅ」
「さぁ、お手入れですよー!」
道具を持って、その剃刀の刃をきらりと輝かせる幼女メイド隊に、私は呆然とし、オリビアは悲鳴を上げ…最終的には、あまりの羞恥に二人して意識を失うのであった。
お、おそるべし幼女メイド隊。
全く抵抗できませんでした・・・・。




