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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
反魔法勢力編
56/97

第56話 後ろに要注意…

 シャルが広場に降り立つと、偽騎士達が怯むのが見えた。

 その隙を狙って私は第一級構成魔法を発動する。


「オリビア! そいつらを逃がすなよ!」

「はっ!」


 どんっ! と地面が大きく揺れ、それと同時に裏街全てを範囲として、発動した魔法が空の水と地の水を呼び寄せ、天と地の水が噴き出し繋がることによって、裏町には巨大な町を包み込む水の柱が立ちあがった。

 これで全て消火するつもりである。

 

 酸素が無くなるのではと思うだろう。だが、この魔法は生命体は避けるようになっている。

 でなくては今頃私も溺れている。だからこその第一級構成魔法ともいえた。


 グオォォォォ~ン!


 シャルの声はその壁の向こうへと響き、飛び火し始めていた表町へ魔法を届ける。

 建物の火を真空の魔法で消している気配がする。

 広範囲でなく、人もいなければ一番手っ取り早い方法だ。

 

『イマネア! フィセル!』


 咆哮の後、シャルの呼び声に、彼の背から二つの影が飛び出してきた。


「お任せを!」


 シャルから飛び降りたのは、騎士服に身を包んだ赤茶色の髪の女性と、ほんの少し億劫そうな表情をした、茶色の髪の青年…。

 かつて、孤児院で短い間だが共に修行した竜人のイマネアと、そのお付きのフィセルだ。

 この二人は7年経っても姿が変わらない。

 懐かしいが、今は再会を喜んでいる場合でもない。


「我等竜人は人間同士の争いには極力不介入であるが…。我が王の番の危機とあらば剣をとる。それでなくとも、彼・・彼女? とにかく、あの子とは友人であるしな!」


 イマネアはそう告げると、魔法に驚いて呆然としていた偽騎士達に向かって剣を引き抜く。

 鞘走りの音に偽騎士達ははっとした様子で我に返るが、その頃にはすでにオリビアが彼等の懐に入り込んでいる。


「私の出番がありますかね?」


 フィセルはオリビア、エヴァン、イマネアの活躍を見ながら呟き、シャルの尻尾に叩かれてようよう飛び出した。


 人よりもずっと戦闘能力の高い竜人が加わることで、形勢が逆転し、偽騎士達が逃げる素振りを見せだしている。

 だが、逃がす気はないぞ。


 周りの火がほとんど消えたのを見計らって、水の柱を広場に集めた。

 出口全てを水で塞ぎ、彼等を広場に閉じこめ外に出さないようにしたのだ。


『ルゼ』

「今話しかけないでシャル。そろそろ限界が来るから」

『ならば下がっていろ。後は我等で何とかする』


 我等…と言っても、シャルは竜体な為、こんな狭い場所では暴れられない。

 そう思ってシャルを見上げれば、その体が光に包まれ、縮んで行くところだった。


「あ…」


 私が声を上げると、シャルの動きに気が付いたイマネアのお付きフィセルが足を止め、「あちゃー」とばかりに顔に手を当てた。

 

 光が消え去ったその場所から出てきたのは、いつものシャルの人型の姿…。

 しかし、それは…。



「きゃー!! すっぽんぽん! 何!? この人裸自慢!? こんな時なのに変態!? 変態なの!?」



 サーシャがシャルの人型を見て、悲鳴を上げて顔に手を当てたが、その指の隙間から目を輝かせて観察している。

 お約束だねサーシャ…。

 

 そしてシャル、前を隠そうか。

 竜だから気にならないかもしれないけど…まぁ、私も前世がこれだし、今は姿もこれだから大丈夫…。


 なんていうわけないでしょー!!


「シャル! 服を着てー!!」


 私は顔を真っ赤にして叫ぶ。

 あまりの衝撃に、危うく水の魔法が崩れるところだ!

 いや、もう、連戦と魔法連発と怪我と、今のショックで崩壊寸前!


「我が王! 服は!?」


 バタバタとフィセルが駆け寄り、マントを着せる。

 …日本で稀に現れる前見せおじさんの様じゃないか!


「忘れたな…。それよりも先に敵を捕えよ!」

「先に女の敵を捕まえてよエヴァン!」

「俺に言うなよ!」


 なんだかどたばたしていると、傷のせいか、この状況のせいか、くらくらとしてくる。

 その瞬間、視界の端で偽騎士が一人動き出し、私ははっとした。

 

 アレ(・・)は魔道士だ!


「イマネア! その男だ!」


 シャルが私より先に飛び出し、男を追うためにイマネアにも声をかけたが、男はにやりと笑みを浮かべると私の魔法を炎で破り、数人の偽騎士と共に逃げ出していった。

 私の魔法も限界なために水はばしゃんと崩れ、ぜぇぜぇと息を吐いた。


「逃げられた! ルゼ! あっちは孤児院の方角よ!」

 

 サーシャの言葉に、私は頷くともうひと踏ん張り! と体を起こし、馬に飛び乗った。

 その後ろにシャルが飛び乗り、同じようにオリビアの後ろにイマネアが乗ると、倒した兵の捕縛のためにフィセルを残し、私達は孤児院へと急いだのだった。


 

 う、後ろは見たらダメよルゼ~! 

 と自分に言い聞かせながら・・・・。  

グラハム「…陛下、服を忘れていかれましたな…」

ルド  「…それじゃあ役立たずで終わるか、変態で終わるかだよね…」

ナハル 「・・・・・それでも竜王だ」

ルド  「いや…まぁ、そうなんだけど…いいのかな…」


よくありません。

陛下は服を忘れて…大惨事。

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