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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
巫女編
49/97

第49話 芽生えたものは・・・?

 目が覚めたら夕方でした…。

 ということは、本日のやるべきことは全て流れたようだ。


「うぅぅぅ。恐るべし生理痛」

「そんなルゼ様に、騎士の皆様からお見舞いの花を頂いておりますよ」


 私が呻いていると、オリビアが花を花瓶に活けながら姿を現した。


 見れば、小さな寝室のあちこちに花が飾られている。

 以前黒猫さんが騎士達をお仕置きした後、集中的に花を贈られたことがあったが、さすがに量が多すぎて迷惑なのでやめてもらい、ぱたりと治まったのに、再燃するんじゃないかという量だ。


「嬉しいけど、鼻がむずむずする」

「この部屋には少ししか置いておりませんが…」

「これで!?」


 部屋の中には花の香りが立ち込め、どの方向を見ても腕に抱えきれないような量の花束が入った巨大な花瓶が目に入る状況だ。

 私が悲鳴を上げると、オリビアは続き部屋のあるドアを開け、そのドアから見える床にどっさりと置かれた花を見せてくれた。


「見知らぬ貴族から贈られているものもあるようですね」


 やはり、ここ一年のうちにリュークの話が広まっているらしい。

 動きが派手でないのは、やはり信じがたい、という思いがある為だろう。


「一番多いのが竜王陛下からですよ」

「あらら…」


 未だ見ぬ竜王陛下からの花は、ほとんどが赤いバラの花であった。

 しかも、薔薇の棘は全て抜いてあるという徹底ぶり。

 

 そのバラの花を一本オリビアから受け取り、私は首を傾げる。


「竜王陛下ってどういう方だろうね?」

「我が君よりはまともな王なのでは? 人間の代わりにこの国を支えていらっしゃいますし」


 我が君よりはって、どういう意味だ。

 

 しかし、いまだに竜王陛下には会ったことがない。

 シャルが彼の代理のようなことをしているのは知っているけれど、竜王陛下については自分から聞くこともなかった。

 

 幼い頃、私を助けてくれた人だから、いつかお礼は言いたいのだけど…。

 彼はシャルみたいに金色の目だろうか、などと考えていたら、なぜかドキドキして顔が熱くなってきた。


「ルゼ様?」

「ひゃいぃぃっ」


 オリビアに声をかけられて、何故かさらに焦ると、オリビアは首を傾げながら私の額に手を当て、もう一度首を傾げた。


「熱は無いようですが…。ひょっとしてお体が辛いですか?」


 生理痛の一種と思われたならばそう言うことにしておこう。


「ちょ、ちょっとだけ変な感じで」

 

 命の恩人は私のヒーロー的存在になっているから、考えるとドキドキするってことかな。

 気をつけないと、興奮して倒れかねないからあまり考えないように…考えない様に…。


 緊張する体をほぐすためにすーはーと深呼吸を繰り返す。

 そうしている間に部屋の扉がノックされたらしく、オリビアがその対応をして戻ってきた。


「ルゼ様、シャルがみえましたよ」


 ドキリとして、私は背筋を伸ばす。

 あ、いや、彼は竜王陛下ではないのだからドキドキする必要はないのだけど。


 もう一度深呼吸してシャルを通してもらうよう告げた後、私ははっと我に返った。


 竜の嗅覚は人間とは比べ物にならないっ。ということは、血の臭いとかこの部屋に充満しているんじゃ…。

 いや! それよりも、私、いまだに寝巻のままだよ!


 いつもは気にしないことが気になってワタワタしている間に、部屋の中にシャルが通された。


「花の匂いがすごいな…。贈り過ぎたか?」


 どうやら臭いは花の臭いで相殺されたらしい。

 ほっと息を吐くと、シャルがこちらへ歩み寄ってくる姿をじっと見つめた。


 部屋に入ってきたシャルはいつもと変わらない。

 赤い髪を適当に編んだ三つ編みにし、服も崩した感じに着こなす、ちょっと悪そうな雰囲気の艶のある色男だが、その金色の瞳と目があって、なぜかドキリとしてしまった。


 ドキリ?


 内心首を傾げながら、ベッドの脇の椅子に腰かけるシャルをじっと見つめる。

 リュークよりも少し背が高いかな。


 今の今まで仕事をしていたのか、肘の辺りまで捲った袖から出ている逞しい腕には、インクの染みがついている。

 手は…大きい。


「ルゼ? どうした?」


 はっと気がつけば、シャルが隣に座った状態で私を見つめており、私は我に返った。

 い、今のは観察! リュークとどれぐらい違うのかなって言う観察!

 て、誰にいいわけだ!?


 うぉぉぉぉぉっと心の中で叫んで悶えていると、現実では、気がつけばシャルが頬に触れ、こちらをじっと見つめていた。

 

 なぜかバクバクと心臓が早鐘を打ち、頭の中では何かを言わねばと思考が駆け巡るが、何も出てこない。

 思考が空回りしているのに、私の瞳はじっとシャルを見つめ続け、口をパクパクと動かしていた。


「ひょっとして気分が悪いのか?」


 低い声に、私は一瞬ブルリと身を震わせる。

 シャルははっと息を飲むと、私の腰に腕を回し、グイッと勢いよく私を引き寄せて抱きしめた。


「寒いのならば、温めていてやる」


 耳元で囁かれた声に、私の心臓がドキリと再び大きく波打った瞬間、私は興奮のあまり…。


 気絶していた。

 




 私、

 ひょっとして…、





 羞恥心が芽生えた?

ルゼ  「羞恥心が芽生えたよ!」

オリビア「そうですか。今までなかったんですか」

ルゼ  「オリビアの時はどうだった!?」

オリビア「…恐怖が芽生えましたね」


黒猫  「オリビア様は痔の血が止まらないと言って泣きながら医務室へ」

オリビア「黒猫さん!!」

ルゼ  「お…オリビアの泣き顔…(それは見たかった…)」

オリビア「余計なことは考えてませんね、我が君?」

ルゼ  「(ギクリ) 考えてませーん」


ルゼ「ん~、でも、やっぱり何かしら心に変化が出て来るものなんだね、女性として!」


黒猫「にぶにぶですね…」


メイドさんは小さくため息をつくのであった・・・。

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