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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
巫女編
47/97

第47話 せいちょうした!

「あっ!」


 という間に1年が過ぎました。

 ルゼ・フェアルラータ13歳。

 竜王陛下の尽力故か、とりあえず反魔法勢力には襲われず、無事な日々を過ごしているけれど、この虚弱体質には致命的な、とあるイベントに襲われていた。


「ぐほぉぉぉ」


 現在、トイレに座り込み、唸っていたりする。

 トイレから失礼…。


「ルゼ様ご無事ですか?」

「無事じゃないです!」


 時々オリビアが声をかけてくれるが、ただ今必死。

 何に必死か? もちろん出産ではない。 喜ばしいと言えば喜ばしいが、出産ではない!

 では何かと聞かれれば、

 

 ついに…


 遂に、恐れていた初潮なるモノが来てしまったのだ!




 世も明けきらぬ早朝から、腹が痛いのに身が出ず、悶々とトイレに籠もること1時間。


 最初に初潮に気が付いた時、ついに下血したか! と思ったが、すぐにそうではない…えぇと、かれこれ何十年ぶりに来たモノだと気が付き、黒猫さんにこの時代の生理用品の使い方を聞いてトイレに駆け込んだのだが、その瞬間から襲ってきた腹痛に動けなくなったというわけだ。


 優花の時はままあったが、アマゾネス・イリューゼの時は全くなかった生理痛。

 なんとなく予想はしていたが、ルゼとして迎えたそれは…激しかった。


「くそぅっ」


 結局身は出ず、痛みだけなので諦めて生理用品を装着。

 日本で使っていた物と違って、ごわっとしてモコモコの生理用品。それでも、アマゾネス時代の謎の生き物よりはいいかと思いつつ、いずれ魔法式を組み込んで、いつでも清潔を保てるシートを開発してやる! と心に誓い、トイレから出て手を洗い、壁伝いに歩いて外に出たところでガクリと倒れた。


 歩けません・・・。


「ぬおぉぉぉぉぉっ。しむぅぅぅぅぅっ」

「それぐらいでは死にません。あ、今黒猫さんが薬を持ってきますので…。とりあえず、部屋まで騎士にでも運んでもらいますか?」


 トイレ前の廊下で腹を抱えながら横たわる巫女ってどうよ・・。と思いつつも、このままでは這って歩くことしかできないので、誰か呼んでもらうことにした。

 

 オリビアでも運べるのだが、私の背が少しだけ伸びたので、やはり女の体格では抱き上げづらいのだそうだ。




 待つ間は、ひたすら痛みに耐えるべし…。

 日が登ってきたのか、うっすら明るくなってきた廊下で私は耐える。耐えて見せる!


「この身が朽ち果てようともぉぉぉぉっっ」


 痛みで言っていることは滅茶苦茶である。


 とにかく痛みを逸らすために床に爪を立て、ぎりぎりと力を込めながら歯を食いしばっていると、ようやくやってきた騎士とオリビアが、一瞬私の数メートル手前で立ち止まった。


「呪いの儀式か?」

「なんでだっっ!」


 私が顔を上げると、そこには、栗毛に緑の瞳をした青年が一人、真新しい騎士服に身を包み、呆れたような表情を浮かべて腕を組み、こちらを見下ろしていた。

 

 私はぽかんとしながら青年をじっと見つめていると、青年の後ろから黒猫さんが現れてにっこり微笑んだ。


「お薬を持ってまいりました。王都で人気の地獄爺(じごくじじい)印の痛み止めです」

「地獄爺印って…まさか、いや、それよりも…そこの彼は」


 背は高く、声は低く、顔立ちにほんのり幼さが残っているため、かろうじてわかったが、あと数年もすればきっと私でもわからなかったであろう青年。それは…。


「はい。お懐かしいでしょう? 同じ孤児院で育ったエヴァン君です」


 やっぱり! 懐かしさと驚きに一瞬だけ痛みを忘れて私はぱぁっと笑顔を浮かべる。


「やっぱりエヴァン! 久しぶりっっ。皆は元気? エヴァンは騎士になったんだっ。シニヨンとサーシャはどうして…ぬはぁぁぁぁぁっ…とりあえず薬下さい」


 いろいろ聞きたいことはあったのだが、結局痛み再びで、私は黒猫さんの差し出す薬と水を手にした。

 

 緑色の丸薬は小さいのだが、日本で嗅いだような、とある下痢止めのような強烈な臭いがする。

 まぁ、この世界の薬なんてものはまだまだ発展していないのでどれもこんなものだし、とりあえず痛みさえ治まれば・・、と私はとある(・・・)ことを忘れてその丸薬を口に放り込み、水で押し流した。


「即効性ですから大丈夫ですよ」


 黒猫さんが太鼓判を押したので、脂汗をかきながらコクコクと頷くと、そのすぐ後にドクリと心臓がひときわ大きく鼓動を打ち、私は目を丸くした。


「な…」


 まさか…と思った時には私の視界は霞み、ぐらりと世界が傾く。

 伸ばした手はそのまま誰を掴むこともできず、私はその場にばたりと倒れたのだった。


「即効性ですね」

「即効性でしょう?」

「相変わらず抜けてるよな…散々痛い目を見たのに」


 倒れた私を見下ろし、オリビア、黒猫さん、エヴァンがうんうんと頷く。

 

 私は、彼等に毒を盛られた…。

 ではなく、懐かしのヘル爺特製の痛み止めにより、即効で気を失ったのだった。

 

 地獄爺印…。


 ヘル爺は名を変え、王都にさらなる被害をもたらしているのだと聞いたのは、目が覚めて、すっかり痛みが無くなった夕方の事であった…。


 半日寝てたよ!

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