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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
孤児院編
22/97

第22話 そっちのが重要です!

 再び目を覚ますと、今度は孤児院の中の医務室のベッドの上であった。

 なぜか、マザー・イオニアがオイオイと泣き、それをヘルムンドが必死に宥めていた。

 治療はどうなった?


「お、女の子なのにこんなことってっっ」

「いや、だから、これは暴力ではないと」

「じゃあどういうことなのです!」


 珍しくマザーが声を荒げてヘルムンドに食って掛かっている。

 部屋の様子を見るために、ぐるりと辺りを見回せば、困り顔の少年少女達がドアの向こうから顔を覗かせているのと目が合った。


 子供達は、口々に「顔、顔」と声には出さず、口だけ動かして言っている。


 顔?

 顔は相変わらず私の眠りを浅くするほどにジンジンとしているが…。

 こんなにジンジンしたらおかしい…よね…。


「か、鏡っっ」


 目をパチッと開いたが、相変わらず開ききれない。

 これはますますもっておかしいぞ! と鏡を探せば、小さな手鏡を、オリビアが差し出した。

 どうやらこの部屋にいたらしい。視界が狭くて見えなかった。


「ありがとっ」


 鏡をもらってそれを覗き込めば、そこには、赤く、パンパンに腫れた頬をし、その頬に押し上げられるように、目が細くなったむっちゃいくな娘が…。

 て、私か!


「どんだけ力入れたの、エヴァン!」


 悲鳴を上げると、扉の向こう側からこっそり覗いていたエヴァンが「ぎゃああ!」と声を上げ、マザーがピタリと泣き止み、ヘルムンドが「あぁ~」とため息混じりに告げて、額に手を置いていた。


「エヴァン! 女の子になんてことを!」


「覚えてろよルゼ!」


 あぁ、しまった…。マザーのお怒りを買ってしまったようだ。

 許してね、エヴァン。うふ…とでも言っておこう。

 元々は私が頼んだことだが…マザーのお叱りは受けるがいいさ!

 

 この顔の恨みとばかりににやりと笑みを浮かべたが、それもあまりうまくいかずにかなり不気味な笑みになってしまった…。


 バタバタとマザーが廊下に飛び出し、エヴァンとの追いかけっこの足音が遠ざかると、私はようやく窓の外が明るいことに気が付いた。

 頬の腫れで目が醜い・・あ、いや、見えにくく、暗く感じていたのだ。

 腫れすぎです。


「腫れが引いたら青痣になるかもなぁ。まぁ、若いから痕には残らん。ルゼは肌も弱いせいでここまで腫れあがっただけのことだしな」


 やれやれと肩を竦めたヘルムンドは、緑色の湿布薬をそのまま私の顔面にべたりと張った。

 大きな絆創膏のような物に薬草を貼り付けた湿布が、鼻をべちゃりと覆った。

 

「息ができません」

「お、すまん。鼻があったかっ」


 人間の鼻は普通に真ん中にあるんですけど! 

 いくら顔が腫れていても見えるでしょう!


 むっすーとしてさらに膨れていると、私のベッドの横に、いままで全く気配がしなかったシャルが座った。

 驚いて思わずびくっと震えてしまったよ。 

 

 い…いたんだ!?


「いたのですか」

「いた。気が付かなかったのか?」


 同じことを思ったらしいオリビアが尋ねると、シャルが勝ち誇ったかのようにふっと笑い、私はがっくりと肩を落とし、オリビアは悔しげに拳を握っていた。


「さて、本題だ」


 シャルがおもむろに告げる。

 本題とはこれいかに? と首を傾げると、シャルは私の頬にそっと触れ、癒しの魔法をかけながら続ける。


「例の魔法だ。あれは、ルゼが使ったものだな?」


 つい~っと視線が横へ流れてしまうのは仕方がないだろう…。

 できれば誤魔化したい。


「他にも使えると思っていいな? リューク・イル・ゼルディア?」


 やっぱり会話聞かれてた!

 どうするよ、どうしてくれるよ、とばかりにオリビアを見る。だが、彼女は知らぬ存ぜぬと言う態度だ。

 あれか、「そこは主の判断にお任せします」の姿勢か!


 相変わらず我が騎士はそう言う所がちゃっかりしているというか、狡賢いというか…、何でこれが好きだったのか謎だよ、過去の私!

 でも好きだった! くぅっ。


「なんてな。お前が何者かは知らないが、魔法が使える。それも軍事級だ。これを見過ごすわけにはいかない」


 痛みが消えると、優しい手が離れ、厳しい視線が私を射抜くと、思わずドキリと心臓が高鳴る。


 わ、悪い事して追い詰められてるような気分?


 よくみれば、これは人の上に立つ者の視線だ。

 シャルが何者かは知らないけれど、上に立つ者として、私のような危険人物を、野放しにしたりできないということなのだろう。


 …喰うのが早くなったり…はないと思いたいけど。

 まだ細くてきっとおいしくないし…。


 ドキドキしながら次の言葉を待つ。

 シャルはゆっくりとその形のいい唇を開き…。




「ルゼ、お前はこの国の巫女として神殿に入ることになった」




 ・・・・・・・・


 ・・・・・・


「はい?」


「その知識と魔力で竜王を支える国の柱となれ」


 その真剣な表情は嘘を言っている言葉ではなく、私はぽかんと口を開けて呆けてしまった。

 すると、しばらくそれを見つめていたシャルは、突然柔らかな笑みを浮かべ、呆然自失な私の唇にチュッと音を立てて口づけ、頭を撫でた。


「決定事項だ。迎えはすぐに寄越すからな」


 ・・・・・・・・・


 なんですとぉぉぉぉ!?


 6歳にしてさらっとファースト・キス奪われたよ!

ルゼ  「私のファーストキス!」

オリビア「え? 巫女就任の方が重要では?」

ルゼ  「女として終わっているぞオリビア!」

オリビア「…陛下に言われてはおしまいです…orz」

ルゼ  (どういう意味じゃー!!)

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