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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
プロローグ
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プロローグ2

 リューク・イル・ゼルディア

 

 その人物の人生は波乱万丈。

 あれ? 彼の話を始めるんじゃ? とお思いのあなた! まだまだだ。物語はまだ始まってないのだ!

  

 女の心を持ち、現代日本人とアマゾネスの記憶を持つ私は、リュークの立場のせいで、さぼりにサボりまくって退化していた脳をフル活用させられた。

 何って、アマゾネスに文字はいらなかったのだ。そして、アマゾネスに帝王学は必要なかったのだ。もちろん鈴木優花にも。


 リュークはいわゆる王になることが決まっている者であった。


 周りを見回せば騎士や兵士と言ったキラキラな美形軍団がいて、逆ハーレムだぜ! なんてはしゃぎたかったところだが、いかんせん体は男で無理でした。

 そういう趣味の王様もいるにはいるらしいけど、私にBLは無理だ! 中身は女だけど無理だ! 受け付けなかった!(試してはいません)


 おぉ、イカン、思考がずれた。

 まぁ、とにかく、私は帝王学なんて物を叩きこまれるは、文字を覚えねばならんわで、子供時代はがむしゃらに勉強することに。

 頭が爆発するかと思ったよ。


 年頃になると、すぐ傍に仕える騎士に恋をしたが、やはり手すら繋げなかった。

 だって、背の高いいい男が、同じいい男に手を繋がれて頬を染めるって…ビジュアル的に私は嫌だ!

 いい男はいい男として君臨するのだ! 恋は涙を飲んで封印!

 というわけで、ストイック人生を生きた。


 妻? いませんよ。

 

 いろんな思いから逃れるために政治、経済、魔法に、武術、まさに文武両道の完璧な王様をやりましたとも!

 妻がいないのだけは汚点だったが、自分は魔力が強すぎて子種が無いのだと臣下には思わせた。(半ば強制的に言い聞かせたともいう)


 生理的な朝の云々はともかく、女性相手に興奮できなかったのだから仕方ない。

 不能だと言った奴には地獄を見せてやったとも!


 そんなリュークの人生は62歳で閉じた。

 その去り際、恋する騎士に…


「来世で合おうぞ、我が騎士よ」


 なんて、次こそは彼と恋仲に…と、下心満々で言ってやったのもいい思い出だ。

 

 そんなリュークの人生は敵に殺されたわけでも、毒を盛られたわけでもなく老衰。

 この世界では60歳前後が寿命なので、まぁ、そこそこ生きた。悔いもない。


 だから次は記憶もあるはずなく、普通に生まれて、普通にどこかの空の下生きるのだ。





 なんて、そうは問屋が卸しません。

 





 目が覚めると、3度目の転生。

 

 さわさわとほんの少し冷たい風が吹き抜ける中、満天の星を見上げる形で目が覚めた。

 

 この家、屋根がねぇ!  


 最初の感想は大事だな。うん。

 まぁ、それは誤解で、私は何やら祭壇の上に寝かされていただけだったらしい。


 スッと逞しい腕に抱き上げられ、「おぉ」とどよめく声が聞こえたが、残念ながら私に見えるのは、私を抱き上げた男の端正な横顔だけだった。


「この娘の命はこの娘の物だ。ゆえに、何人たりともそれを侵してはならん」


 お、今度は女に生まれた模様。

 「娘」という言葉に反応し、喜びに笑みが浮かんで「あぶっ」と赤ん坊の声が出た。


「この村は陛下の庇護下に入る。今後は人の命を使った儀式は一切禁ずる!」


 私を抱く男性とは別の誰かの凛とした声が響き、その言葉に、どうやら私は殺されかけていたんだなぁと理解した。

 命、儀式、なんて単語が来れば、人身御供でございましょうよ。

 まぁ、何が起きたのかはよくわからないものの、命は助かったようで良かった良かった。

 


 ふ…世の中それで終われば苦労はないわけだ…。


 

 この時、儀式に私を捧げた両親は、赤ん坊を儀式に捧げた己を恥じて村から逃げて行った…。

 と言えば聞こえがいいが、彼等はちょっとはしゃげば熱を出し、吐く、呻く、死にかけるを繰り返す赤ん坊の面倒は見られないと逃亡。

 その後、村で育てられたかと言えばそうではなく、あまりに病弱なその赤ん坊を治療してやれるほどのお金を捻出できる者など村には無く、村人の一人がある日通りすがりの商人に頼み込み、私は町の孤児院に預けられることになった。


 まぁ、要するに捨てられたわけだ。

 まだ動けないながらになかなかハードな人生だ。


 ちなみに、孤児院でも病弱な体質が変わることはなかったが、まぁ、人のいい薬師のお爺さんが住んでいたので何とかなったにはなった。


 そうして数年後…


 町の小さな孤児院には、噂になるほど儚げで、色が白く、華奢な美少女の噂が流れるようになる。

 

 ルゼ・フェアルラータ―――――


 白い髪に赤い瞳、抜けるような白い肌…というか、全体的に青白く、華奢というよりも貧弱、儚げと言えば儚げだが、それは、5分も走ればめまい、動悸、息切れ、鼻血、貧血等を起こす体質のせいである。


 まぁ、要するに、今度の体は虚弱体質であった。

 ちなみに、何か病気が原因でとかいうわけでなく、ただただ体質なのである。


 薬師のお爺さんに言わせると

「お前さんはそれで健康のようじゃ」

だそうだ。


 呪われてるのか! と叫びたくなった…が、いるとは思えない神は、今世で女にしてくれたし、身長も胸も大きくはならなそうだ。それに、記憶もあるから知識は豊富だし…それと引き換えと思えば感謝すべきなのか? とも思う。

 となれば、虚弱な体はゆっくり鍛えていくとして…。


 今度こそ夢のラブライフを!

 

 目標を掲げた私は、この人生を強く生きていくことを決意したわけだ。

 そうして、冒頭に戻る…。


 さぁ、物語を始めましょう!


「ごふぅっ」


「きゃああっ、ルゼちゃんが吐血をっっ」


 とりあえず、絶賛死にかけそうなこの質の悪い風邪が治ったらね…。

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