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虚弱巫女の健康日誌  作者: のな
孤児院編
19/97

第19話 顔が…

「ブリさん!」


 シニヨンの叫び声に振り返ると、シニヨンが騎士を数名連れてこちらに駆けてくるのが見える。

 間に合った! これでとりあえず町は安心だ。


 あ、ブリさんはあんまり大丈夫じゃ無いかな?

 吹っ飛んだブリさんを見れば、彼はぐんっと腕の力で体を起こし、そのまま魔物の2撃目、3撃目を避けていたので大丈夫そうだ。(むせ)てはいるけれど。


「騎士団連れてきた!」

「よしっ! それじゃああの魔物の大群よろしく!」


 私が指示した先には、こちらの援軍を見て蠢きだす魔物の群れ。

 シニヨンは私を見ると、ぎょっと目を丸くした。


「…ルゼ…だよな?」

「今、そう言うボケはいらん!」


 どうせ顔が腫れあがってすごいことになっているのだろうけれど、今はどうでもいいのだ。

 一声で一蹴すると、私は再び空を見上げた。


 呼び出した巨人は、まだはっきりとは形になっていない。

 私が集中していないせいだ。

 戦闘は皆に任せて集中せねば。


「あれはお任せください」


 私の考えを読み取ったかのように、子供はにこりと微笑みを浮かべ、魔物にかかって行った。

 その笑みになぜかドキリとしながらも、私は子供を信じて…と、初対面の誰かをいきなり信じるというわけにはいかないので、現在なぜか素手で戦闘中のブリオッシュを信じて、魔力を練り上げていった。


 再び周りで乱戦が始まるが、それらの音は耳に入ってこない。




 目を閉じれば、昔の光景がよみがえってくる。




「白い巨人ですか?」


 昔、この魔法を見て呆れたように空を見上げた人がいた。

 

「いいだろう? これでも第2級構成魔法だ」


 胸を張ったのはこれを作ったばかりのリュークであった私。

 構成魔法というのは、その名の通りあらゆる魔法を組み合わせ、まとめ上げて作り出す魔法のことだ。

 そのうち、第1、第2級の構成魔法は軍事級と呼ばれ、主に戦闘に使われ、第1級はある意味災害級の禁呪と呼ばれる魔法である。


「実用的ではありません」

「格好良ければいいじゃないか」

「却下です。こんなのを組み立てている間にやられますよ?」

「そこはお前が守ってくれねばな、我が騎士よ?」

「お断りします」

「ケチだな!」


 なんてやり取りをしたことを思い出した。

 



 そう言えば…、あれから結構むきになってこの魔法を何度も使っていたから忘れていたけど、この魔法…ちょっと他より立ち上がりが遅かったよ。



「ドンマイ、私!」


「何が?」


 ようやく周りの音が戻ってきた私は、下級の魔物を倒しているカールに思い切り胡乱な目を向けられてしまった。

 いやぁ、さすがにこの魔法は立ち上げるのが遅いハデハデ魔法だった、とは言えず、誤魔化し笑いを浮かべながら、完全に魔法を立ち上げる。

 

 6歳で第2級攻勢魔法を立ち上げると、ものすごい貧血状態になるようだ。

 早くぶっ放そう。


 ぐんぐんと血の気が引いていくのを感じながら、ちらりと例の上級魔物へ視線を向けると、数名の騎士とブリオッシュ、それに先程の子供が果敢に立ち向かっていた。


「あぁ、立ち上がりましたね」


 子供が空を見上げて確認する。

 空には、今や王都を眩く照らし、鎧を身にまとったまるで神のごとき神々しさを醸し出した巨人が、巨大な(やり)を構えて立っていた。 


「では、落とします」


 子供がそう告げると同時に素早く動き、魔物の四肢を一気に斬り落とした!


 途端に辺りに立ちこめたのは、ぼっとん便所と、生ごみと、腐った水が混じりあった強烈な悪臭である。


「「「おえぇぇぇぇ!」」」


 たまらず口を押える騎士達。

 きっと吐き気を催したのだろう。


「だから言ったのに…斬るとくっさい魔物だって」


「俺の足も臭い!」


 ブリオッシュが魔物を蹴った足をなぜか嗅いでいた。

 余裕だな、ブリさん。


 私はのた打ち回る魔物に目を向けると、空に浮かんだ攻勢魔法をその腹に向けて叩き落とした!


「全員はなれてください!」


 子供の声に、騎士もブリオッシュも慌てて魔物の傍を離れ、次の瞬間には轟音を立て、魔物の腹には巨大な鑓が突き刺さり、白い光の渦と共に魔物を消滅させた。


 見た目の派手さとは逆に、仕留めるときはいたってシンプル。

 まぁ、今回は人がたくさんいたから広範囲攻撃にしなかっただけだけどね。


「ふぅ」


 私は汗をぬぐう仕草をしたが、汗は出ておらず、タララ~と鼻と口から血が出てきた。


「うわ…顏が…」


 シニヨンが憐みの表情で私を見つめた。

 ひょっとして、ひょっとしなくても、私の顔面只今お岩さん!?


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