第18話 乱戦中
予想通りの乱戦開始!
「チビどもはそっから動くなよ!」
カールを主に、年長の子供達が魔物に飛び掛かっていく。
小さい子供達は後衛から離れた場所で補助的に戦っているが、前衛の取りこぼしはやはりある。それらは後衛の子供達が緊張しながらも、確実に弓や魔法で仕留めていくようにした。
皆が頑張っている。そんな中…。
「も…もう駄目です…」
「まだまだ!」
一番に弱音を吐いたのは、他でもないこの私。
魔物達が年長組とぶつかる前に、魔法で魔物の数を減らしているのだが、もう何度目かの気絶からの覚醒で、両の頬がもこもこに腫れておたふく風邪状態なのだ!
お嫁に行けなくなったらどうするよ!
「あうぅ」
涙しながら敵を撃って行く。
森から出てくる魔物はいなくなったが、まだまだ油断ができない。
そして、取りこぼしの魔物も数多くこちらに向かってくる。
「悪い! そっち行った!」
カールの叫び声に子供達が弓を引く。
効果的なのは魔法を載せての攻撃だ。
飛んでいく矢が青白く光るため、味方に当たりそうなものは軌道を逸らすという作業も私がしていたりする。
「ルゼ、動くなよ!」
エヴァンの叫び声につられて彼の視線を追えば、すぐ真横から魔物が飛び出してきた。
体が小さい餓鬼のような魔物で、うまく野原の茂みを利用して近づいてきていたらしい。
エヴァンが短剣を抜いてそれを仕留める。
「いよいよ…かな」
私がぽつりと呟くと、同じように茂みを利用した小さい魔物達が飛び出し、小さな子供達が「ひっ」と悲鳴を上げた。
もちろんそれらは私が雷で倒すが、この魔物は実は前触れであると記憶が叫んでいる。
「全員後退!」
私が声を張り上げると、年長組が驚きながらも魔物を切り伏せて駆け寄ってくる。
魔物はまだまだいるが、こちらに近づかず動きを止めていた。
「ルゼ? 一体何?」
カールははぁはぁと息を荒げながら尋ね、私は前方の白い光を動かした。
予想通り、森の中から、黒い塊がのそりと出てきた。
それは、所々が腐ったよくわからない巨大な毛玉に、足が生えたモノ。
「ひぃぃぃぃぃ!」
その姿に叫びをあげたのは私。
「な、何!?」
「あれ何?」
私の悲鳴で子供達は大パニックだ。
「あ…あれは…、あれは、斬るととってもくっさい生き物です!」
相変わらず魔物の名前が出てこなかった…。
それはともかく、ずるずると動くあれはのろそうに見えてものすごく俊敏だ。子供達も動きは早いけれど、あれは段違い。今のうちに退かせないと死人が出る。
「全員孤児院に戻って。刺激しないようにゆっくり…」
と、指示するが、毛玉はこちらへ向き、のっそのっそと向かってくる。
すでにターゲット・ロックオンされているし!
「全力疾走! ぐほっ」
咳き込むくらい大声を上げると同時に子供達が走り出し、それを見た後、前方に目を向ければ、なんと、毛玉は私の目の前に飛び掛かってきていた!
ガン!
七色のシャボン玉のような結界が広がる。
私が張った…というか、以前から作っていた道具の一つが作動したようでほっとした。が、それを支えるのは私なので、思い切り押されていたりする。
「お…おふおふおふっ」
「何言ってるかよくわから無いけど踏ん張れ!」
私の背をカールとエヴァンが支えてくれた。
これぞ友情パワー! 魔物よ退け~! なんてアニメ的な効果はありません。
がっかりだ。
結界の要となる道具は胸にぶら下げているペンダント。
それを片手で取り出し、左手でぐっと前に突き出した。が、やはり子供の力では3人がかりでも押される!
騎士団はまだかー!
「リュウ…喰ウ」
「「魔物が喋った~!」」
私の背後でカールとエヴァンスの大合唱。
耳が痛い…。
「私は竜じゃないんですけど!」
「リュウ、クサイ…匂ウ、リュウ、イル」
何でこんな大物が竜を求めて私の目の前に現れるんだ!
と、ここでめまぐるしく流れる今日までの出来事…。
イマネア達が毎日ここに来ていた。そして、つい先日には純血の竜であるシャルがここに…。
その臭いがこれをおびき寄せた!?
「せ、責任者を呼べぇい!」
「ルゼ、興奮すんな!」
「この状況でお前を叩き起こすのは無理だぞ!」
お、おぉ、そう言われればそうだ。
興奮で一瞬気を失いかけていた私は、唇を噛んで何とか意識を繋ぎ止めると、右手を空に向けた。
一か八かだが、このペンダントが壊れる前に、この魔物を吹き飛ばす攻撃魔法を使ってやる!
さすがに城にばれるけど、背に腹は代えられない!
『双翼の戦神ネザンの名において、捌きの鑓を召喚す…』
空が眩く輝き、巨大な人のような姿が上空に浮かび上がる。
「何だあれ…」
カールが呆気にとられ、エヴァンも目を丸くしたその時、左手の中のペンダントがバキンッと音を立て砕け散った。
もう、持たんのか!
「「げ」」
消え去る結界。
魔物はその隙を逃さずその長い腕を振りおろし、私の目の前にそれが迫った瞬間!
目の前に何かが飛び込んできた。
小さな影と…大きな影…?
「どりゃ!」
大きな影は勢いよく魔物を蹴り飛ばし、小さな影は私の目の前に迫った魔物の腕を弾き飛ばした。
そして、彼等は共に振り返る。
「「ケガはないですか!?」ないか!?」
振り返ったのは、見知らぬ子どもと、なんと、ブリオッシュであった。
カッコイイではないか! と見直したところで、ブリオッシュは魔物に殴られて吹っ飛んで行ったので、今の言葉は撤回しよう。
さて、この子供は一体…?




