memory.000
月3日の休みってどう?と聞いてみる・・・orz
「お姉上、どうやらこの街に生存者はいらっしゃいません」
頭まですっぽり覆う白いローブを身に纏いその一人は言った。
その声からするに、容易に女性だと判断できた。
「そうですか・・・」
そう答えたのは黒いローブを身にまとう女性。
フードを頭から外し、とても綺麗な顔立ちであったが影を落としていた。
「しかし姉上、これは本当に誰かが一人でやられたのですか?」
「ええ、間違いありませんよ」
「・・・」
何度聞いても同じ答えが返ってくるこの状態に、未だ顔を見せない白いローブの者は押し黙った。
何度もそれを問うには理由があった。
数時間前まで二人が立つ場所は人口250万人からなる大都市だった。
それが一瞬にして地平線まで続く瓦礫と死体が支配する土地に変貌した。
調べられる限りで調べたが生存者は皆無。
所々から未だ呻き声のようなものは聞こえるが、それは生存者ではなく『元々それであったもの』が形を変えたものだった。
―――亡霊。
その言葉が一番合うだろうか?
己の死をまだ理解する事さえままならず、彼らは普通の生活を営んでいるんだろう・・・。
自分達の存在が異端に思えてくる場所でもあった。
「姉上、ここに長く居ては体に障ります。離れましょう・・・そろそろ国軍がやってくる頃ですから・・・」
「そうですね。しかし、誰が・・・」
もう一度この惨劇を見ようと振り返る。
魔力の暴走?
または別の力?
自問自答を幾らしてもその答え見つからない。
が、遠くにこの死の荒地で異変を見つけて彼女は慌てた。
「あっちへ!」
「あ、姉上?!」
突然、走り去る姉を慌てて追いかける。
時間にして数分・・・徐々に減速して立ち止り、鬼ごっこにも似た疾走がようやく終ったかのように思えた。
「あれは・・・」
目の前に広がるのは変わらず死の荒野。
が、そこに一人の少年が立っていた。
「バカな・・・さっきまで居なかったのに・・・」
少年は虚空を見詰め、ただそこに立っていた。
たまにピクッと反応するのでまだ生きているように思えたが・・・。
黒いフードを身に纏う女性はゆっくり静かに少年に近づき問いかけた。
「ねぇ・・・ここで何をやっているの?」
「・・・」
少年は何の反応も見せなかった。
シャツはボロボロで、穿いていたであろうズボンもボロボロで、その機能をほとんど果たしていなかった。
だが不思議と土埃などで汚れるはずであった体は綺麗であった。
「私の名は神咲瑪瑙・・・で、こっちが妹の雫。坊やの名前は?」
「ボクは・・・」
「うん?」
少年の言葉に瑪瑙は優しく問いかける。
「ボクは誰?」
その言葉に瑪瑙と雫は愕然とした。
だが、直ぐに立ち直った瑪瑙はそっと優しく少年を抱きしめ、
「そう・・・そうなのね・・・」
と呟き、涙を流した。
これが少年の初めての出会いであって、全ての物語の始まりだった。
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