act.005
1週間以上の間を空けないよう投稿していこうと思います。頑張ります。
「男!名を名のれ!」
何の前触れもなく、突然、後からやって来た女騎士は言った。
それは先ほどまで戦っていた女騎士と同じ白色の鎧を身に纏い、髪や肌その全てが白で統一された女性だった。
だが国家の紋章であろうか?
右肩にある七色に輝く片翼の紋章が白を台無しにしているような気がした。
有無を言わせぬ威圧を、青年は受け流し返答した。
「おいおい、この世界では礼儀と言う物は存在しないのか?」
一瞬、女騎士を囲むフルアーマーを身に纏う騎士達から怒気のような物が発せられたがそれを無視して、青年は言葉を続けた。
「普通は自分の名を言ってからが礼儀というものじゃないか?それを頭ごなしに言って誰もが土下座して言うと思ったら大間違いだ!部下の見本であるべき者がそれを無くしてどうする?」
挑発とも取れる青年の発言に周囲は怒り心頭だったが、女騎士はどこか納得する部分があったのか「ぬぅ・・・これは失礼した」と女騎士は馬から降り、それに続いて渋々他の部下も馬から降りた。
「私はアエリア王国七騎士が一人にして白薔薇近衛騎士団団長マリア・アークスという。そこに屁垂れ込んでいるのは、我が妹アリサ・アークスだ」
―――よく噛まずに・・・。
と青年は心の中で思った。
そして、未だに先ほどの現象から抜け出せないアリサを尻目にマリアは言葉を続けた。
「我が妹が大変失礼な事をしたようだな、申し訳ない」
突然、頭を下げる上司の姿を見て周囲の騎士は慌てたがそれも直ぐに収まった。
「して、そなたの名は?」
「やっとまともに話が通じる人にあったな・・・たぶん無意識なんだろうが、出来れば俺たちに与えているプレッシャーを解いてもらいたんだけど?」
「これは失礼した」
その言葉と同時に二人に襲っていた圧力は一瞬にして解け、弥彦はホッと息をついていた。
「オレはわけ合って今は名を名のれない。だがアエリア王国の現女王陛下にして『創生の魔女』の一人、雫様に会いに来た。昔、この石を見せれば無条件に会えると聞いてやってきたがどうやらその話は正式に伝わっておらず、自衛の為にここで戦闘を行った」
懐から12面体の黒い石をマリアに見せた。
「ああ、大体の事情はこちらでも把握している。こちらの不手際によって大変申し訳ないことをした。女王陛下直々に貴殿に会いたがっている」
「そうか、では案内をつけてもらえるのかな?」
「ああ、では共に行こう・・・案内をする。馬をこちらに!」
マリアやアリサの乗っていた白馬とは一転して、立派な黒馬がやってきた。
「弥彦、乗れそうか?」
「一人では厳しいです・・・」
弥彦は黒馬を見上げて、小難しそうな顔を浮かべていた。
そんな弥彦を見て青年は先に黒馬に乗り、弥彦に向かって手を差し伸べた。
「ほら、手を貸すからおいで・・・」
「ありがとうございます!」
青年の手を掴み、手を引かれる反動を利用して弥彦が黒馬に乗る姿をマリアは微笑ましい笑顔で見ていた。
そして我に返って
「アリサ!いつまで呆けている!行くぞ!」
「ア・・・・・は、はい!お姉さま!」
ピョンッと飛び上がり、慌てて背を正すが彼女は思った疑問をそのまま言葉にした。
「あ、あれ?なんでお姉さまがここに?」
「馬鹿者、バッカスとダンを連れて王城に戻るぞ」
「はい、わかりました!」
疑問を残したまま未だに眠るバッカスとダンを他の騎士に任せ馬に乗ったが、先ほどまで戦っていた青年も何故か黒馬に乗っており疑問は深まるばかりだった。
が、何故?と問いかける事は彼女が敬愛する姉にさらに雷を落すことになりそうだったので言葉にはしなかった。
「では、王城に戻るぞ!」
その一声で騎士が一斉に前進し始めた。
「やっと目的地へ行けますね、師匠!」
「ああ、本当にやっとだ・・・。やっとあの人に会える」
そしてようやく物語が始まるのであった。
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