act.003
サブタイトルを間違えている事に今更気が付いたという・・・。慌てて直したはずなのに何故か直らない?!タイムラグあるのかな?
最初に動いたのはバッカスだった。
長身にして筋肉質な体つきからは想像できないほどの速さ、そしてほぼ予備動作無しの動きを見せられ青年はめんくらった。
一瞬で青年との間合いを詰めハルバードで胴を薙いで来た。
青年はバックステップで回避を試みたが腹を皮一枚斬り付けられていた。
「大げさに避けたつもりだったが、これは・・・」
「あんちゃんやるじゃねぇか・・・」
不適に笑みを浮かべるバッカスを見て認識を改められた。
が、思考にふけるのも一瞬、頭上から殺気が襲い掛かり、見上げる間もなく青年は横に回避行動を取った。
「ほむ、勘が良いみたいですね・・・見上げず私の攻撃を避けるとは・・・」
元々立っていた位置に目を向けると、5本の矢が小さな陥没をそれぞれ作り刺さっていた。
それを作った張本人のダンは素晴らしいと言わんばかりに眼光を鋭くさせた。
女騎士もさる事ながら、この二人も強い!
青年は舌打ちをしつつ、ジリジリと後退しつつ相手の出方を伺おうとしたその矢先に背後から不意に声がかかった。
「あんちゃん、俺たちの出方を伺うつもりかもしれんがそれは悪手だな!」
目の前に居たはずのバッカスが突如背後から襲いかかってきた。
「なっ!?」
まともな声もあげれず、迫るは鋭利なハルバードの槍先。
女騎士と同等かそれ以上の速さで迫る突きの攻撃を体ごと回転させ受け流すつもりだったが、ハルバードは軌道を変え横に薙いできた。
ドゴッ!!
っという音と共に青年はバッカスが薙いだハルバードの柄が腹部に当たり見事に吹き飛ばされた。
そして追撃とばかりにダンが青年にめがけて渾身の一矢を飛ばした。
ドーーーン!!
衝撃波が周囲に広がり弥彦をも飲み込み、当たり一面には先ほどとは比べ物になら無いくらいの大きさの陥没を地面に作り上げていた。
砂埃が舞う場所をダンは見つめながら隣に居るバッカスに問いかけた。
「終りましたかね?」
「いや、終っていない」
バッカスは武器を構えなおし未だに舞う砂埃に向かって槍を薙ぎ、視界を晴れさせた。
「むぅ・・・なかなか頑丈ですね」
ダンが感嘆の息を漏らした。
服はボロボロだったが、致命的なダメージは与えられなかったようで青年は陥没した地面の中心で二人を見上げていた。
「し、師匠~~!」
弥彦が陥没した地面の近くまで走り寄り、青年の無事を確かめていた。
「オレは大丈夫だ、弥彦、怪我は無いか?」
「はい、なんとか!」
ボロボロになった服に付いた埃を払いつつ弥彦の無事を確認すると、ホットした表情を浮かべ、バッカスとダンを再び視界に捕らえた。
「離れていろ。これからちょっと本気を出す」
青年がそう言ったのを確認すると弥彦はまたトテトテと走り距離を置きつつ「フレーフレー!し・しょ・う!!」と一生懸命応援し始めたのだった。
「強いな。本当にあんた達は強いよ」
青年の素直な賞賛に返答したのはバッカスだった。
「オレなんてまだまださ・・・あんちゃんこそ、まだまだ余力はありそうだな?」
「ぁあ、これからちょっと本気で行く。下手に動いて死なないでくれよ?」
「はっ、言ってろ!」
バッカスは青年の言葉を軽くいなしながら、ダンだけに言葉が聞こえるよう小さな声で呟いた。
「ダン、本気でやるぞ・・・」
ダンは一つ頷き、それを皮切りに再び戦闘が始まった。
先に動いたのはまたもやバッカスだった。
「はっ!ふんっ!どぅりゃー!」
真っ先に突進してくると思いきや、バッカスはその場でハルバードを何度か虚空に向かって全力で薙いだ。
その結果生じたのが、幾重にも重なる真空波だった。
不可視の刃を感覚的に青年は捕らえ、鮮やかに回避していく様子を見てバッカスは驚いた。
「おいおい、結構本気の技だったんだが?」
「殺気が篭ってなければ例え『武神』と呼ばれる存在でも回避は不可能だったろうさ」
「なるほど!」
青年の言葉に納得したのかバッカスが、にんまりと笑みを浮かべた。
「こちらも忘れて貰っては困りますよ?」
と不意に背後から殺気が襲いかかった。
考えるより先に体が動いた・・・というのが正しい表現だろうか?
頭上から襲い掛かる剣先を青年は咄嗟に体を横にずらしかわし、ダンの顔面めがけて裏拳をかました。
ゴッ!
鈍い音と共にダンがよろめき、青年は追撃とばかりに回し蹴りを腹部にお見舞いした。
「うっ・・・」
そんなうめき声と共に不意にダンが消え、バッカスの方に視線を向けるとダンが肩膝をついて苦悶の表情を浮かべていた。
そして青年は二人に向けて言った。
「二度も同じ技は喰らうはずないだろう?」
「っ・・・」
忌々しげに見詰めるダンを見返し青年は二人に向け言葉を続けた。
「遠近攻撃を両方扱え、それを状況によって交互に使い分けるあたり、あんたら二人の連携は素晴らしい物があるが俺に言わせればまだまだだな」
バッカスとダンは数十年来の付き合いだけに二人で幾多の戦場を駆け、共に死線を潜り抜けて来ただけに自分達を越える連携を見せる仲間はこの世には存在しないと思っていた。
「ほう?どこがダメなんだい?」
「未知の敵へ・・・オレよりも用心し過ぎだな・・・そもそもこの戦いに乗り気じゃないんだろ?」
確信を突かれたのか二人とも何も言わなかった。
そして青年は言葉を続けた。
「じゃ~そろそろオレから行こうか」
「?!」
誰かの息を呑む音が聞こえた。
青年が不意に虚空に向かい拳を横に薙いだ。
―――ガン・・・!
そんな音と共に空間に亀裂が生じ、その亀裂に青年は手を入れ一本の黒い刀を一本取り出し振るった。
「避けろよ?」
その言葉と同時に、バッカスとダンの頬を微風が撫でた。
直後、微風は突風に変わり、そして目で確認できるほどの巨大な真空波が二人を襲った。
「「なっ?!」
考える前に二人は別々の方向に飛び真空波を避けた。
「なんていう・・・化け物だ・・・」
ダンが先ほどまで居た場所と青年の両方を見て、未だに信じられないといった表情を浮かべた。
地面は物の見事に真空波によって切り裂かれ、地中の奥深くまでえぐられていた。
そこに予想打にしない言葉が入って来た。
「バッカス!ダン!そこを動くな!今手当てをする」
二人は背後に視線を向けると、隊長が慌てて駈け寄ってきていた。
先ほどの真空波は2人だけではなく、後ろに居た隊長までをも巻き込んでいた事実にさらに愕然とした。
バッカスは不意に疑問に思った事を口にした。
「ん・・・?手当てですかぃ?」
「そうだ!そこを動くな!」
血相を変えて向かってくる隊長を安心させようとバッカスは立ち上がろうとしたが、それは強烈な痛みが阻止した。
「オレ達はどこも怪我を・・・ぐぅうう?!」
「なっ・・・うぁああ!」
バッカスとダンはここで初めて己の体の状態を把握した。
バッカスは右手首と右膝から下、ダンは左肘と左膝から下が無くなっていた。
そして二人は同じ事を思った。
―――避け切れなかっただとぉお?!
そんな三人のやり取りを追撃するわけでもなく、青年は無表情な顔で見ていた。
よく戦闘シーンの描写が難しいと他の作家さん達が言ってますが、こうして書くことでその意味をようやく理解出来ました。
ご意見、ご感想お待ちしております。