act.019
「静粛に!!」
バルトが教室に入ってなお生徒の喧騒が静まらない中、ドスの利いた声を出して叫んだ。
「―――」
「一回目の授業から遅れて申し訳ない。突然だが、お前達に知らせなければいけない事がある」
何事だと小声で聞こえてきたが気にする様子もなくバルトは言葉を続けた。
「お前達が卒業するにあたり、この講堂では最後のカリキュラムを受けてもらうわけだが、そこでお前達の教官を新しく連れてきた。実力は保障しよう!最後までしっかり聞き、みんな卒業してもらいたい・・・以上だ!」
そう言うとバルトは灯馬に場所を譲り、教室の隅へ移動していった。
灯馬はハードルを上げるなァ~・・・と苦笑を浮かべたが、気を取り直してこれから自分が教える生徒達に向き直った。
生徒が椅子に座りこちらに目を向ける中、その一つにどこか悔しそうにこちらを睨みつけるルフィル・ケープナの姿もあった。
「えーっと、皆さん初めまして!神咲灯馬と言います。皆さんにとっては初めてこの学園に来てなんでお前が?おまえ誰?!と思うかもしれませんが、そこら辺は今後の授業で追々悟っていってください。他に何も言う事は無いんですが・・・何か質問はありますか?」
灯馬がそう言うと一人の女子生徒がスッと手を挙げてきた。
「・・・君は?」
という灯馬の問いかけに、その女子生徒は立ち上がり
「ユラ・シシティと言います。一つ質問を宜しいでしょうか?」
「はい、何でしょう?」
「今、学園でこの噂話で持ちきりになっているんですが、先生がルフィル・ケープナを瞬殺したというのは本当でしょうか?」
瞬殺とは物騒な・・・と思いながら、灯馬は苦渋した。
チラリとルフィルの方に視線を向けると、怒り心頭らしく顔を真っ赤に質問した女子生徒と灯馬を交互に睨みつけてた。
「えーっと、そこら辺はノーコメントで。私の実力も追々授業で悟ってください」
そこで話を打ち切る為に、灯馬は他の生徒に質問を促した。
それからしばらくして大方の質問が出尽くしたところで灯馬は本題に入ろうとしたが、一人の生徒が手を上げた事に気が付き灯馬は「どうぞ」と一声かけて生徒に促した。
「それで私達は何の授業をやるのでしょうか?」
「ああ、それを今言おうとしていました」
と灯馬は生徒に返答して一呼吸置き言葉を続けた。
「私は皆さんの実力は知りません。ましてやこの学園で卒業資格を得ている貴方達に今更、基礎段階の事を教えても意味はありそうとも思えませんし・・・どうでしょう、一度私と皆さんとで戦ってみませんか?そして私の基準の中でこの生徒は大丈夫だ!と思ったらその人はその場で卒業していただきます」
そう笑顔で平然と語る灯馬を見て、生徒達は一斉にざわめき立った。
しかし灯馬は気にする様子もなく更に言葉を続けた。
「この教室に居る全員が騎士や冒険者と言ったいずれ戦わざるを得ない職業につく者だけと認識しています。ですので、場合によってはより上を目指すための戦いを教えようかと思っていますがいかがでしょう?」
ルフィル・ケープナを瞬殺したという噂がより際立っていたせいか、ほとんどが「よし!」と気合を入れなおし、眼をギラギラとさせ灯馬に挑発的な視線を送る者も居た。
しかし、どれだけの生徒が気付いただろうか。
灯馬の基準がいかに厳しいものだという事に・・・。
その中で一番渋い顔を浮かべたのが、生徒ではなく同じ教務のバルトだというのは皮肉なものであった。
お久しぶりです。長い間放置して申し訳ありませんでした。
またこれから話を進めて行こうかと思います。
今後ともよろしくお願いします。
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