another.003
―――私は眼を閉じている。
「眠り姫の調整はどうだ?」
不意に背後から声がかかるものの、問いかけられた白衣の男は驚くことはせず、振り向きつつゆっくり返答した。
「はっ・・・洗脳は上手い具合に進みませんが、能力は当初の予定を超えた数値を出しています。これでは・・・」
「僕達よりも強くなっちゃうかなぁ~?」
一度振り返ったものの、また逆の方から声がかかり白衣の男は二人を見据えれる位置に移動した。
―――私は眠っている。
「はい・・・」
「そっか~・・・流石はアイツの女だね!!」
意気揚揚と語るものの眼光は鋭いままだった。
「洗脳は進まないのはどうしてだ?」
「はい、それは彼女の記憶の奥底に生前の記憶が潜在的に眠っているせいかと・・・」
「記憶は消したが・・・『絆』は消せないか・・・」
「・・・」
白衣の男は何も答えない。
だが、その沈黙を破るように一人が口を開いた。
「あはは!何を言っているのさ9番目!そんな僕らにも見えないものを考えるのは『あの人』への冒涜だよ?」
「そうだな10番目・・・」
「・・・」
気まずい沈黙が三人を支配した。
―――奪わせない。あの人と、みんなの記憶だけは奪わせない!
「?!」
「どうしたの?9番目」
「どうされました?」
9番目と呼ばれた男が未だ眠り続ける少女に対して咄嗟に身構えたのを見て、10番目と呼ばれた女性と白衣の男は慌てて聞いた。
「今、眠り姫が動いた・・・」
「「っ?!!」」
二人はそちらに視線を向け数分見詰めたが、一行に動く気配の無い眠り姫を見て構えを解いた。
「・・・すまない、気のせいだったかもしれない」
そう言った9番目の男を二人は笑うことや、問いかける事はしなかった。
彼の心境は痛いほど解っているためである。
そう未だ眠り続けている少女は言わば爆弾と同じなのである。
―――脅えているが良い・・・そうやって・・・。
「まぁあとは任せるよ?」
「はい、明日より洗脳に重点を置いていきます」
「ぁあ、わかった・・・」
そう言うと、番号呼びされて居た二人の気配は消えた。
残ったのは白衣の男だけ。
「ふぅ・・・危ないねぇ~!俺たちの声は聞こえているんだろう?」
―――・・・。
「別に何も言わなくて良い。そして警戒もしなくて良い」
―――・・・?
「僕は君の味方だ」
どれくらいの時間が過ぎただろうか?
もう少しで会えるよ・・・灯馬・・・。
貴方は私に気がつけるかな?
章で言うなら、第一章はちょっと中途半端かもしれませんがここで終りです。
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