act.016
寒いですねェ~!秋来たっけ?
騒動から一夜明け、灯馬と弥彦は今日から行くことになる学園への仕度をしていた。
―――コンコン。
そんな時、扉を叩く音が聞こえ、
「開いています。どうぞ」
と灯馬は訪問者を向かい入れた。
「失礼致します。」
その言葉と共に扉は開かれ、そこに居たのはノココだった。
「おはよう御座います。灯馬様、弥彦様」
「おっはよ~!ノココ!」
と元気一杯に挨拶したのは弥彦だった。
それに続き灯馬も「おはよう」と一つ言葉を交わした。
「先日は大変失礼致しました」
「気にするなって、それより傷は大丈夫か?」
「はい、灯馬様が回復して頂きましたお陰で無事、仕事に戻ることが出来ました。それと叔父も一度お会いしてお礼を述べたいと・・・」
「そうか、あの人も無事だったんだな。改めてご飯食べに行かないとな」
「はい、その時はまた私がご案内させて頂きます」
とノココは深く頭を下げ、出会った頃の硬さが再び戻っているように感じた。
それを見かねてか弥彦が口を開いた。
「ノココ・・・えいっ!」
「きゃっ!!?」
深く頭を下げ続けるノココの背後に回りこみ弥彦はノココの脇腹に人差し指を付きいれ、くすぐったさか、痛みかは解らないがノココは突然襲った衝撃に可愛らしい声を上げた。
「あはは、やっぱりどこに行ってもこれは効くですね!師匠」
「ああ、そうみたいだな」
と二人で笑い合い、ノココはと言うと顔を真っ赤にして何が起こったか把握しきれないでいた。
そして事情がようやく把握できたのか、黒いオーラがフツフツとノココの体から溢れ出し、
「・・・うぅ~~!お二方!!!お説教です!」
「「っはい!!」
とみっちりと叱られたのであった。
「それではお二人共、行ってらっしゃいませ」
その後、二人は遅刻ギリギリになるまで説教をされ慌てて走っていった。
「「いってきま~~す!」」
と変わらない二人を見て、どこか微笑むノココだった。
―――アルミス学園。
世界最大規模の学園である。
完全実力主義を掲げ、実力があるのならドンドン上へと昇れる制度を取っている。
学生数は約三万人。
下は五歳児から上は八十歳と、幅広い生徒がこの学園に通っており、完全実力主義という方針を掲げているため早い者は過去最短で3ヶ月で卒業し、長くなれば数十年この学校に通っている者も居る。
卒業出来る資格があっても学校に在籍し続ける者もおり、気が付いたら約3万人というマンモス学園になっていたというのが、本当のところだったりする。
その分学園に居続ける為に払うお金もかかるわけだが、そこは奨学金制度や学園の掲示板に張られるギルドなどの依頼でお金を稼ぐ事が出来るためにそこまで問題視している者は居なかった。
―――来る者は拒まず、教師達の手で生徒の実力を磨き上げ学園を運営して行きましょう。
それが学園完成時に雫が言った言葉だった。
よって、入学試験などは存在しないが入学後の試験が厳しいと有名であり、例え一点であったとしても赤点を取った場合は即刻退学という条件の下、生徒は日々切磋琢磨し続けている。
学科は主に三つに分かれている。
傭兵学科。
魔法学科。
商業学科。
そこからピラミッド式にそれぞれ枝分かれし、ほぼ全ての授業を網羅している。
そして弥彦は転入生として魔法学科に属する一つの教室に通い、一方灯馬が教鞭を振るう学科は「総合学科」という、また特殊な学科であった。
「師匠、頑張りましょうね!」
「ああ・・・」
そう言って、二人は学園の門をくぐったのであった。
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