act.013
このサイトの好きな作家さんの小説が中々更新されなくて、結構ジレンマを抱えてたりします。気がついたら削除されてた!って事もしばしば・・・。
最初に動いたのはノココだった。
懐から彼女の身長の半分ぐらいの大きさの鉈を取り出し、貴族に向かって一気に振りかぶった。
だがそれは貴族の数ミリ前で突然停止し、ノココを焦らせた。
「なっ!?」
「その程度の力量でボクを殺すだって?! あははは、ふざけるのも大概にしろ!」
そう言うと、貴族はノココに向かって手を振りかざし、
―――破っ!
と一喝を入れ、ノココを弾き飛ばした。
「師匠、あれは・・・」
「『気』じゃない、魔法の詠唱破棄だ。だが・・・」
と灯馬が言い終える前に、再び目の前の二人が動いた。
吹き飛ばされたかのように見えたノココだったが寸前の所で避け、貴族の背後に回りこみ再び鉈を振るった。
が、それも先ほどと同じようにまた肌に届く数ミリ前で静止していた。
「だからボクにはそんな攻撃は届かないって!」
と貴族がノココに向かって腕を振りかぶったのと同時に突風が起こり、正確にノココの体を今度こそ捉え、吹き飛ばした。
―――ドゴッ!
ノココが吹き飛ばされ壁に衝突する際、鈍い音と苦悶の声が響いた。
「うっ・・・」
だが、貴族の攻撃は止む事は無く、トドメとばかりに魔法の詠唱を開始した。
風を奏でし者よ。
汝の吐息を我に敵対する者へ吐け・・・。
「エリアルランスッッ!!」
空気が貴族の掌の上で圧縮され、それがノココに向かって一気に放たれた。
それは人を刺す為に作られた槍と同じ形を模り、常人なら目視できないほどの速度だった。
ノココに突き刺さる!
とその場に居た誰もが視覚的に・・・または感覚的に思った。
が、それは寸前のところで止まり、灯馬が口を開いた。
「そこまでする必要はないだろ、殺す気かよ?」
「誰だっ?!」
貴族を見据えつつ風の槍の柄の部分を掴み、それを一気に握りつぶした。
―――パリン。
「あ・・・灯馬さん・・・」
「ノココ大丈夫か?」
「はい・・・ただ、何日かは動けそうにありません・・・」
「あとで回復してやる」
「―――ボクを無視するな!!」
と辺りに怒号が響いた。
灯馬はノココから貴族に再び視線を戻し、
「あ~大丈夫だ。ちゃんと、こいつに変わって俺が相手をしてやるからな?」
と言った。
「平民の分際でボクを見下してるんじゃない!!」
人を見下した態度を取る灯馬に貴族はさらに怒りを増し、再び魔法の詠唱を始めた。
風をかなでし・・・うっ?!
突然、口を押さえられ慌てふためく貴族は驚愕にまみれた。
「どこに魔法の詠唱を完了するまで待っているバカが居るんだよ」
先ほどまで十分な距離があったはずなのに、零距離まで詰められ頭で理解しようにも追いつけなかった。
「驚いているか?そうか、そうか・・・」
と灯馬は悪戯な笑みを浮かべ、そのまま顔を掴みただ力任せに貴族をぶん投げた。
「ぐあっ!」
「痛いよなァ~?」
「うぅ・・・ボクにこんな事をして・・・」
「まだ痛い目を見たいらしい」
未だに反抗的な態度を取る貴族に向かって灯馬は手を振りかざした。
「お仕置きだ」
その一声で地面に痛みで地面にうずくまる貴族に異変が起こり始めた。
「ぐぁあああああ!」
突然発せられる貴族の叫び声に、誰もが驚いた。
「お前はある程度強いかもしれない・・・だがその強さは練習の時か、あからさまに自分より確下な相手だけだ」
無表情のまま淡々と語る灯馬に、周囲は寒気を覚えた。
「人って言うのは悲しいよな?自分が強いと過信した時から弱くなるのに・・・それに気がつかない」
貴族の叫び声は已む事は無く、何が起こっているのかさえ弥彦以外は気がつけなかった。
周りから見ればただ灯馬は貴族に向かって手を振りかざしているだけであって、多少魔力を感知できる者であっても、彼が魔法以外の何かを使っている事しかわからなかった。
そして不意に貴族の叫び声が止み、灯馬は振りかざした手を下ろした。
―――貴族を殺した・・・。
そう思った者が大半を占めたであろうか。
そこに第三者の声が轟いた。
「警備隊である!何事だ!!?」
その言葉が戦闘終了の合図だった。
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