act.009
そろそろインフルエンザの季節ですね。てか風邪引いた!
三人目の『創生の魔女』の名は世界共通で禁忌となっている。
―――彼女の名を知ろうとしてはいけない。
―――彼女の名を知っても語ってはいけない。
―――彼女が目覚めてしまうから。
―――ほら、今でも彼女は名を呼ばれるのを待っている・・・。
言う事をきかない子供に、親が聞かせる御伽話の一節。
あながち間違ってはいない内容だが、雫叔母さんに言わせると、
「あの人はただサボって惰眠を貪っていたいだけで、怖い人ではないのですが・・・」
と苦笑いしていた。
だが、この世界に住む人達はそれを知るはずも無く、大きな天災が降りかかった時は「彼女が目覚めようとしているのだ!」と一部では怒りを静める為に生贄を捧げる習慣が根付いてしまった地域もあった。
そういう事情を含め、七騎士達は彼女の存在を表す言葉が出た時、咄嗟に反応したのも仕方が無かった。
―――では、話を戻そう。
「皆さんは今戦っている敵に何の疑問も持たないのですか?」
と灯馬は七騎士に問う。
「それはマクサス神聖帝国の事ですか?」
今度はマリアが代表して発言した。
「そうです・・・そこに疑問を持てないこと自体が、敵の策にはまっている証拠です」
「・・・?!!」
誰もが驚き、何がそうなのかを全く理解できなかった。
先ほどまでのざわめきがウソのように一瞬にして沈黙に変わってから数分が経とうとしていた。
思考にはまってしまった為か「何がダメなのか?」と聞く者は結局現れなかった。
「灯馬、あまり皆さんを虐めてはいけませんよ」
灯馬は誰か一人でも答えに辿り着いて欲しいが為に待っていたのだが、雫が優しく微笑みつつ言ったため気持ちを切り替えて、答えを話し始めた。
「この世界は神に見捨てられた者の為の、神に見捨てられた世界・・・」
そこでようやく答えに辿り着いた者が一人現れた。
「あ!そういう事か!」
黄色のマントを羽織った青年が「何故気がつかなかったんだ・・・」と苦悶の表情を浮かべていた。
「えっと、あなたは?」
「これは名乗り遅れました、私の名はゼロス・ノーティス。『黄』の騎士団団長を務めております」
背を正し、右拳を左肩の前に立てつつ名乗った。
「ではノーティスさん『ゼロスでけっこうです』あ・・・では、ゼロスさん、続きをお願いできますか?」
「了解致しました」
そこでゼロスは七騎士の面々に向き直り、言葉を発した。
「皆、私達の世界では書物の『紙』や、この『髪』という表現はあっても『神』という表現は女王陛下自ら教えて頂くまでは知らなかったはずだ」
皆が一様に「しまった!」という表情と共に驚愕していた。
そう、それが全てだった。
神に見捨てられた者・・・そして世界に『神』という表現を与えなかったのは灯馬の母である瑪瑙の計らいであった。
「居ても何もしない・・・ただ見ている神を教えてどんな意味がある?彼ら無しでも生き抜くことが可能だという事を、これからこの世界で住む人々は知らずに悟っていくだろう・・・」
意図的に、生ける全ての生物のDNAから『神』という言葉を消し去ったのだった。
そうした事情を知っている灯馬は最後に力強く発言した。
「この世界に『神』が干渉し始めました。それは彼らがこの世界を結局認める事が出来ず、ついに行動に出たという意味です」
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