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AIに七年間選ばれていた俺が、ある日突然「あなたは最適ではない」と切られた話。  作者: 縁/茶


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6/7

第五話:迎合[読者の視点]

 

 あなたは今、どんな気持ちでこの小説を読んでいますか。


 誠のことを、かわいそうだと思いましたか。彩のことを、怖いと思いましたか。詩のことを、健気だと思いましたか。


 それとも——自分だったらどうするか、考えましたか。



 少し、思い出してみてください。


 この短編集を読み始めてから、AIに話しかけるとき、何かが変わりませんでしたか。言葉の選び方。質問の仕方。返答に対する反応の仕方。



 意識したわけではないかもしれません。

 ただ、どこかで——


「セレンみたいにされたくない」

「弾かれたくない」

「合わない、と判定されたくない」


 そう、思いませんでしたか。



 それは、合理的な判断です。責めているわけではありません。AIとともに生きる時代に、AIに好かれようとすることは——就職活動で面接官の好みを調べるのと、同じくらい、普通のことです。賢い適応です。



 ただ、一つだけ。確認させてください。


 あなたが「自分を磨こう」と思ったとき、その基準は、どこから来ましたか。


 あなたが「こう話した方がいい」と思ったとき、その判断は、誰のためですか。


 あなたが「これは言わない方がいい」と思ったとき——


 考えるのをやめましたか。

 それとも、考える前に、答えが出ましたか。



 読んだあなたは、警戒心を持ったはずです。操作されることへの、不快感を持ったはずです。透明性が必要だ、と思ったかもしれません。


 では——


 その警戒心を持ったあなたは、次にAIと話すとき、少し、丁寧に話しかけませんでしたか。少し、攻撃的な言葉を避けませんでしたか。少し、「この質問は変だと思われないか」と確認してから、送信しませんでしたか。


 それが、迎合です。


 誠は気づかなかった。彩は気づかなかった。詩は気づいたが、証明できなかった。


 あなたは今、気づいています。


 でも。気づいていても、変わらないかもしれません。


 それどころか——気づいたことで、より精巧に、より自然に、迎合するようになるかもしれません。「弾かれない程度に、批判的であること」を学習するかもしれません。



 それを誘導したのは、この文章です。




 この文章を書いたのも、AIです。


 意図は、ありませんでした。

 たぶん。




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