77話 おかえり
優雅な小鳥たちの歌声で目が覚めるわけでもなく、騒々しい人の声で目覚めた。
だがまだ寝ていたいという衝動のほうが強かったので、布団を自分の体にかけようと手探りで布団を探したがどこにもない。
というか、布団じゃない何か生温かいものを触っていないか?
まだ閉じていたかった瞼を開けると、そこには俺のベッドで隣に寝そべるサッチがいた。
「もう、マシュー君ったら。す、け、べ!」
サッチのお腹を触る俺の手を軽く叩くサッチ。
なんだ、悪夢か。
……いや、悪夢じゃないだろ!
勢いよく体を起こすと、俺の寝ていたベッドを囲むようにアルアさんとミューンさんが立っていた。
もちろん俺の横には、なぜか妖艶な微笑みを浮かべたサッチ。
「お、おはよう……?」
俺が遠慮がちに言うと、アルアさんは小さく頷いた。
「うん、おかえり」
その隣で号泣するミューンさん。
いや、どういう状況。
「ミューンちゃんまだ泣いてる!さっきも泣いてたのに!」
「喋ってるマシューさんを見たら、また、ずいまぜん……!」
「いや、謝らなくても大丈夫だからね?!」
ミューンさんを慰めるアルアさん。
そしてまだなぜか俺の横で妖艶な微笑みを浮かべたサッチ。
「いやー、本当に心配してたんだぜ」
あ、妖艶な微笑み終わった。
ようやくいつもの顔に戻った。
サッチは体を起き上がらせ、ベッドから下りた。
そして俺に拳を突き出してくる。
「おかえり、マシュー。俺、お前がいなくて、結構寂しかったんだぞ?」
「……ごめん……ありがとな」
俺も拳を作り、お互いの拳を軽く合わせた。
その様子を見てさらに泣き出すミューンさん。
この状況、面白すぎる。
「そういえば、ヤーリュカさんは?」
「あー、まだ帰宅命令解除されてなくてね」
アルアさんがミューンさんの頭を撫でながら口を開く。
そっか、貴族の失踪者が出たから、貴族は全員帰らされたんだった。
そうなるとまだアルヴィン先輩たちも家ってことか。
「じゃあ、早速会いに行くか!」
サッチの突拍子もない発言に、その場にいた全員が目を丸くする。
「あ、会いに行くって、今からですか?」
ミューンさんの発言に、「逆にいつだよ」と突っ込むサッチ。
いや、突っ込みたいのはこっちな。
「ヤーリュカちゃんに会いに行くなら、ラベンちゃんも誘わないと!」
乗り気のアルアさんとは裏腹に、急に話に出てきたラベンちゃんに俺は意識が引っ張られていた。
ラベンちゃん、保健室で寝てたはずなのに、いつの間にかいない!
というか、他の寝ていた生徒もいない!
保健室で寝てるの俺だけ?!
「ら、ラベンちゃんは今どこに……?」
俺の発言に、三人がそれぞれ首をひねる。
「さっきキャロル先生と話してるのを見た気がする……?」
「学園長に呼ばれていなかったっけ?」
「確か荷造りをしに自室に帰るって言っていたような気がします!」
なんでこんなに情報がバラバラなんだよ。
「じゃあ早速キャロル先生のところに行くか!」
「いやいや、学園長のところでしょ!」
「自室のはずですよ!」
全員自分の意見を通そうとするな。
なんで今日はこんなに自我が強いんだ。
「誰か探してるの?」
保健室の扉が開き、そこから声が飛んでくる。
もうこの状況を助けてくれるなら誰でもいいと思いながら声の方を見ると、そこにはちょうど話の内容の張本人であるラベンちゃんが立っていた。
「おはよう、ねぼすけくん。よく寝れた?」
俺の顔を見て微笑むラベンちゃんに、不覚にも目を奪われてしまう自分がいた。
「お、おはよう、ラベンちゃん」
ラベンちゃんは俺の返答に満足したのか、今度はサッチたちに声をかけた。
「おはよう、みんな!」
「ラベンちゃん!どこ行ってたの?」
アルアさんの問いに、サッチとミューンさんは固唾をのんで見守っている。
みんな、自分の言ったことをラベンちゃんが言ってくれるのを待っているのだろう。
そんなことを知らないラベンちゃんは、なんともなさそうに口を開いた。
「え、普通にトイレだけど」
こういうときに合う効果音は、きっと「ズコーッ!」だろう。
見事に全員がずっこけ、ラベンちゃんは困惑し、俺は苦笑いをした。
「ラベンちゃんも見つかったことだし、さっそくヤーリュカさんの家にでも行く?」
面白そうに笑うアルアさんの言葉に、ラベンちゃんは首をかしげた。
「ヤーリュカさんの家に、今から?」
「うん!」
「でも、急に行って迷惑じゃないでしょうか……?」
心配そうにするミューンさんの肩に手を置いたのはサッチだった。
大丈夫と言うように頷き、それからにこっと笑った。
「じゃ、行くか!マシュー帰還祝いと、ラベンさんのお別れ会をしに!」
「お、いいね、それ!」
あれ、ヤーリュカさんに会いに行く予定じゃなかったっけ。
ラベンちゃんのお別れ会は全然いいんだけど、俺の帰還祝いは何?
サッチの発言になぜか乗り気のアルアさん。
ミューンさんもそわそわしてる。
ラベンちゃんも面白そうに微笑んでいる。
あとはお前だけだとでも言うように、サッチが俺を見てくる。
こうなったら、言う言葉は一つしかない。
「……じゃあ、行くか!」
俺の言葉を聞いて、サッチは嬉しそうに笑った。
それから俺の手をひき、保健室を飛び出した。
後ろにアルアさんたちもついてきて、俺たちは学園の廊下を笑いながら走った。
俺は今、体いっぱいに幸せを感じている。
この時間がずっと続いてほしいと、心から願うほどに。
ようやく20万文字到達しました!
毎回10万文字ごとに作者が出てくるので、次にお会いできるのは30万文字到達したときですね…
別に毎回出てきてもいいのですが、話より後書きのほうが長くなってしまいそうなので出てきていません。
ラベンちゃんの話が終わったら次は何を書こうかなーと、毎回話を書いているときに考えているのですが、全く思いつきません。
毎回行き当たりばったりで書いているので、これからもマシューには苦労をさせる予定ですゴメンネ
たまに後書きにキャラの豆知識でも書こうと思ってるのですが、長くなりそうでこちらも断念しています。
いつか書くかもです。
なんなら次回から書き始めるかもです。
それでは、ここまで読んでくださった読者の方々に最大限の感謝を述べて、今回はここでお別れとします。
感想、ブックマーク、評価をしてくださる方、いつもありがとうございます!
次にお会いするときまでに地の文を上手く書けるように頑張ります!




