表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園の些事  作者: 道兵衛
55/66

54話 潰す

あの少年がエレンちゃんの婚約者?!


少年は俺たちを見ると、貼り付けたような笑顔でこちらに近づいてきた。


「はじめまして。ルーカス・ブライアントと言います。」


一言で表すなら、美少年。

小さい時からここまで顔が良いと、人生も楽しいんだろうな…と心のなかで嘆く。


「皆さんは、アルヴィンお義兄様のご友人ですか?」


アルヴィン先輩の舌打ちが響く。


この子、わざとお義兄様って呼んでる……。

心臓に毛でも生えているのか?


「そうだよ。ルーカスくんはエレンちゃんの婚約者なの?」

「はい。まだ仮ですが、将来的にはそうなる予定です。」


つ、強い……。

アルヴィン先輩が見たことないくらい険しい顔をしている……。


「まあ、今のはちょっとした冗談ですよ。本当は皆さんとお話したくて来たんです。」


ルーカス君の硬い表情がゆるむ。


「お話しよう!積もる話がありすぎる!」


ネモさんはとんでもなく乗り気で、ルーカス君の手を握りしめていた。

もちろん俺も乗り気だった。

だって聞きたいことがありすぎる。

エレンちゃんとどこで知り合ったのか、お顔は両親のどちら似なのかとか。


「じゃあまずは、」

「ルーカス!ここにいたのか!」


向こう側から、ずいぶんと恰幅のいい男性が歩いてくるのが見えた。


「最悪だ……。」


ルーカス君の言葉に反応する前に、男性が目の前に来ていた。


「ルーカスの親のデブンソー・ブライアントだ!ルーカスが世話になったな!」


アルヴィン先輩がきれいなお辞儀をする。


「ヒルディッド伯爵家の、」

「そういうのはいい!面倒だからな!」


デブンソーさんは近くの給仕の人から飲み物を取ると、豪快に流し込んだ。


「世間話をしにきたんだ!ずいぶんとアーロン王太子と仲の良い者がいたから、気になってしまって!」


俺のことを言っているんだとすぐ理解できて、思わず身構える。


「アーロン王太子はあまり、ほら、いい噂がないだろう?だから助言でもしてやろうかと思ってな!」


そこからは、聞きたくもない、本当かもわからない話を聞かせられた。

アーロン君がどれだけ出来損ないで、どれほど愚かなのかを。


この人が、いつもアーロン君の陰口を言っているんだ。

アーロン君の陰口を、よくあることにした人。


「……あの、」

「ブライアント侯爵様、お母様が貴方を探していましたわ。」

「おお、グレッタ嬢!では私はここで失礼する!」


急に現れたグレッタさんが、デブンソーさんを俺たちから引き離してくれた。

安心した俺たちは小さくため息をついた。


「ごめんなさい、もう少し早く気付いていればあなた達を助けられたのに。」

「いやいや!もう十分助けてもらったって!」


ネモさんがグレッタさんの肩に手を置く。


「彼はいつもああなの。指摘したいのだけど、一応侯爵家だから……。彼の言うことは無視していいわ。」


それが一番健全な判断だと思う。


「ま、まあ、今はルーカスくんもいるし、そういう話は一旦置いておこう!」


そういえば、ルーカス君はデブンソーさんの息子さんだった。

自分の親のことを言われて、あまりいい気分ではないよな。


「ごめん、ルーカス君、」

「あ、全然大丈夫です。僕、あいつのこと嫌いなんで。というか血つながってないんで。」


怒涛の勢いで新情報が出てくる。


「僕、あいつの遠い親戚で。あいつ子種が死んでて。本当に面白いですよね。生粋の女好きなのに、子供を産ませてあげることができない体なんですよ?だから僕が養子入りしたんです。」


ルーカス君って結構口悪いんだな……。

逆にこっちのほうが好きかも。


ルーカス君は周りからの視線に気づき、咳払いをした。


「ということで、全然話してもらって大丈夫です。僕もあいつの行動には困っていたので。なんなら早く侯爵の座を僕に譲って欲しいくらいです。」

「……デブンソーさんのこと、嫌いなんだね。」

「逆にあいつのことが好きな人の感性を疑うくらいですよ。」


すごい言われよう。

まあ俺もデブンソーさんのことは好きではないけど。


「彼がアーロンのことを嫌いなのも理由があるのよ。」

「理由ですか?」


グレッタさんが頷く。

アルヴィン先輩もルーカス君もわかったようで、渋い顔をしていた。


「彼はアーロンではなく、自分の息がかかっている王弟であるエリアル様を次期国王にして、王宮を支配しようとしている。」

「あと二年もしたらアーロン様も学園を卒業する。それまでになんとかしてエリアル様を王位継承権一位にしたいのだろう。」


グレッタさんとアルヴィン先輩の説明に耳を傾ける。

しばらくしてネモさんが口を開く。


「要するに、邪魔なアーロンくんを消したいってことね。」

「なんですかそれ!アーロン君をなんだと思って!」

「マシュー、落ち着け。これは俺たちがどうこうできる問題ではないんだ。」


アルヴィン先輩の言葉で冷静を取り戻す。


でも、こんなのあんまりじゃないか。

アーロン君だって、あんなに頑張っているのに。


「……どうこうできるかもですよ?」


ルーカス君が沈黙を破った。


「できるって、どうやって?」


ネモさんがルーカス君に聞く。

いつの間にかネモさんはご飯を食べるのを再開しており、口の端をクリームで汚していた。


「あいつを潰せばいいんですよ。そうしたらそのアーロン?とかいう人が無事王位継承権一位になるんだし。」

「ど、どうやって潰すの?」


俺の言葉に、ルーカス君がにやりと微笑んだ。

きれいな顔だとゲスい表情も映えるんだな……。


「そこはなんとかしますよ。ところでアルヴィンお義兄様。」

「お前の義兄ではない。」


アルヴィン先輩の言葉を完全に無視して、ルーカス君が話を進める。


「僕があいつを潰せたら、僕とエレンの婚約を認めてくれますか?」


アルヴィン先輩はとんでもなく嫌そうな顔をしていたが、俺たちの捨てられた子猫のような目を見て、すごく渋々うなずいた。

ルーカス君はとんでもなく美しい笑顔で喜んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ