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学園の些事  作者: 道兵衛
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3話 どうもこんにちは

「授業と言っても、特にやることがないな。」


キャロル先生についていき、今俺たちは学園の横にある森の中にいた。

各自好きなところにいたが、全員一定の距離を取って立っていた。


うん、全員俺みたいに初対面はグイグイいけない感じだな。安心する。


「まずはアンタたちが受け取ったありがたーい祝福についてでも話すとしよう。」


キャロル先生がしゃがんで地面に手をつけると、俺たちが立っている所が急に揺れ動いた。

地面が盛り上がり、あっという間に俺たちが立っている場所は周りの建築物や木々よりも高くなっていた。


「まず、この世界には妖精がいる。それは知っているだろう?」

「はい。我らが太陽、オリエンス国王の祖先が妖精と契りを結び、妖精の力を借りれるようになりました。」


妖精の存在は知っていたけど、てっきりおとぎ話の中のものだと思ってた。

というか、この子よく知ってるな。


「君はヤーリュカで合ってるよね?よく知ってるね。流石子爵家の娘さんといったところだ。しかし君がここに選ばれるとは意外だったよ。てっきり、」

「先生、話から脱線しています。続きを。」

「おお、すまなかったね。」


ヤーリュカさんを横目で見ると睨み返されたので、思わず目をそらした。


貴族だったのか。

そりゃ貴族の子もいるよな。

元々この学園は、貴族の子供たちの教育のために建てられたんだから。


「その祖先が、妖精の祝福をまず貴族にも分けてあげたんだ。最初は公爵辺りしか貰えなかったけどね。」


公爵って五爵の中のどこに位置するんだ?

ヤーリュカさんの子爵に、公爵、あと伯爵。それから、


「…悩める子羊が二匹ほどいたので説明するが、五爵は上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵だ。」


分かってないこと、キャロル先生にバレてるし。

こんなことなら、貴族社会についてもっと学んでおくべきだった…。


「その妖精の祝福をこの学園に通う平民にも与えてくるようになったのが、前国王だったってわけなんだ。ここで問題!妖精の祝福は、大雑把に分けて何種類あるでしょうか!」

「はい!」

「はい、アルアくん!」

「約六種類です!」

「正解!」


やった!とぴょんぴょん飛びはねている子がアルアさん。

第一印象はふんわりって感じだろうか。

重めのおさげがよく似合っている。


「火、水、風、土や草、光、闇。こんなところかな。アンタたちは土や草ね。」


なんか六つの中で一番パッとしないのが来たな。


「まあ詳しいことは追々話すとしよう。この後は寮に行くなり探索するなり好きにしたらいい。解散!」


キャロル先生が言い終わると、俺たちの目線は地面が盛り上がる前まで戻っていた。


正直落ちないか心配でヒヤヒヤしてたんだよな。


話しかけようと思っていたサッチ君はもうおらず、女子は女子で話していた。

流石にあそこの和に入るのは気まずいので、俺もこの場を後にした。


通った道を戻ると、すぐに人の話し声が聞こえてきた。

この学園は賑やかだなあ。


「だーかーらー!ここに不審者がいたんですよ!ずっと辺りを彷徨いてたから声をかけたらどっか行っちゃったし!あれは絶対にやばい人ですって!」


話してる内容は物騒だけど。


「ってマシュー!さっきぶりだね!」

「ネモさん!」


物騒な内容を話していたのは、少し前に仲良くなったネモさんだった。

どーん!と言いながら俺をどついたネモさんの後ろに見覚えのある人がいた。


「アルヴィン先輩もさっきぶりです!」

「…ああ。」


さらにもう一人、アルヴィン先輩の横には白衣を着た青年が立っていた。


「…ネモさん、そちらの方は、」

「紹介するね、こちらイリオス先生!イリオス先生、この子は私の初めての後輩、マシューです!」


どうもこんにちはまた会いましたね。という言葉をぐっとこらえる。


絶対に俺に道を教えた人だよね?!

これは知らないふりをしたほうがいいのか?!

最適解求む!!

……いや、誰に求めてんだ俺。


「…名字はなんだ。」

「え?」

「君の名字だ。」

「あ、ペリーです。マシュー・ペリー。」


イリオス先生と紹介された青年は俺の顔や体をジロジロと見て、また口を開く。


「土の妖精の祝福を貰ったようだな。担任はローゼンか?」


キャロル先生って名字ローゼンだったよなと思い、首を縦にふる。


「ほら、土の妖精って言ったじゃん!」

「ネモ。静かにしろ。」

「マシュー!このネモ先輩が君に特訓をつけてあげよう!」


ネモさんに肩を掴まれ、思わず困惑する。


「ネモ。祝福は、」

「無闇に使ってはいけない。でしょ?大丈夫大丈夫!イリオス先生いるし!」


ネモさんはアルヴィン先輩とイリオス先生に向かって目くばせをし、親指を立てた。

アルヴィン先輩は眉間に皺を寄せ、イリオス先生は小さくため息をついていた。

そして何も知らない俺は作り笑いをしてその場を乗り越えようとしていた。

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