第四話 予定外の
タイトルを変更しました。
昭和のいつか。どこかの街にある高校。季節は春。
「おい」
「何だよ」
「何だよじゃねぇよ。黒瀬、何でまだいるんだ」
「変なこと言うな。いちゃいけないのか」
「昨日お前、いかにもどこかへ行くみたいなこと言ってたじゃねぇか」
翠の正体が猫、つまり妖怪みたいな存在だったとわかった昨日の出来事。
よく眠れないまま、それでも起こしに来た翠と一緒に登校してみれば、俺の後ろの席に黒瀬が座ってやがった。
『またこの街に来ることもあるかもしれん。その時にはまた会ってくれよ?さっきも言ったが、お前のことは友人だと思ってるから』
黒瀬は昨日俺にこう言ってたんだが。
「あー悪いな。予定外のことが見つかってな。もうしばらくはお前とクラスメイトだ」
「……何だよ、紛らわしい言い方しやがって」
黒瀬はどこか嬉しそうに笑うと
「寂しがってくれるのか」
と聞いてきた。
「そんなんじゃ……ねぇよ」
「隆晴……素直になろう?」
「ばっ! 翠、変なこと言うなよ」
工藤翠。俺が子どもの頃に助けた子猫がその正体で、そう言う意味では幼馴染かもしれない女子。
昨夜、黒瀬の戸籍上は妹である黒瀬瑛子が、翠のかけた術(?)周囲にかけ直して、違和感なく女子生徒として過ごせるようにしてくれたそうだ。
「黒瀬君、昨日はありがとう」
「俺の仕事だ。気にしなくていいよ」
「予定外のことって何だ?」
「山下は知らなくていいことだ。お前は工藤とイチャイチャしてりゃいい」
「なっ! なんつうこと言うんだよっ」
急に真顔になる黒瀬。
「真面目な話、そうしてくれ。巻き込んですまないが、お前と工藤には囮をやってもらう」
「囮?」
「工藤だけじゃなかったってこと。そいつらを炙り出す」
異界の神だったか?
そいつを召喚しようって奴らがまだいるのか。
「もちろんお前たち二人の安全は保証する」
「物騒なこと言うな……。本当に大丈夫なのか?」
「護衛をつけるから」
「護衛?」
ついと黒瀬が振り向いた先。
佐藤 優子と目があった。
吸血鬼だそうだな。
「彼女は頼りになる」
それはわかる。
昨日双眼鏡で見ていた限りじゃ、十人のクラスメイトをあっという間にのしていたし、目にも止まらぬ動きで翠を拘束していたからな。
「いっそあちらさんを煽ってみようと思うんでな、放課後付き合え」
「どこへ?」
「タティだ」
地元にある県最大のショッピングモール。
それがタティだ。
「いいけど、なんか奢れよ」
「おう。任せとけ」
黒瀬よ。
俺は確かにお前の言う囮になるって了承したけどな?
あんなに恐ろしい目に遭うなんて思わなかったぞ。