希望
ユキと別れた俺は新たに奴隷売り場を探すため町を徘徊していた。
「なかなか見つからないな」
飲み屋や風俗などはいたるところにあるが、なかなかお目当ての店は見つからない。
まさかとは思うが、この町には奴隷売り場が一つしかないのでは?そんな考えが頭に浮かんだ。
「仕方ない、ここは人に尋ねてみるとしよう」
正直俺は人と話すことが苦手だ。出来ることなら人との関わりは最小限に済ませたい。だが今はそんなことも言っていられる状況じゃない。
俺は勇気を振り絞りスーツを着たキャッチのような男に話しかけることにした。
「あ、あのー……」
「はい!!何かお探しですか??」
「そ、その……奴隷を……」
「奴隷売り場ならこの町にも一店舗ありますよ!!ご案内しましょうか??」
「い、一店舗……いや、大丈夫です。」
どうやらこの町には奴隷売り場は先ほどの店しかないらしい。ぴえん。嫌な予感が的中してしまった。
ならどうするか。ほかの町へと旅立つか?それとも、もう一度風俗にチャレンジしてみるか?
俺がそんなことを考えていると、
「戦闘用の奴隷をお探しですか??」
スーツの男が質問してきた。
さてはこいつも俺のこと魔法使いだと思ってやがんな……俺はそう考えた。まあ事実魔法使いなわけだが……ここは強く言ってみよう。
「せ、性奴隷を探してます!!」
「そうでしたか!!では、うちの店を利用してみませんか??」
「……と言いますと??」
「うちの店はレンタル奴隷と言って1日1万Gで奴隷をレンタル出来るんです!!」
「ほ、ほう??それはいいですね……そ、その奴隷には何をしても問題ないんですか??」
「殺したり手足を切断したりしなければ大丈夫ですよ!!売り物にならなくなってはこちらも困るんで……」
そんなことしねえよ!!俺は心の中でそうツッコミを入れた。
しかしレンタル奴隷か……悪くないな。元の世界でいうところのレンタル彼女みたいなものか。
しかも値段も1万Gか……これは決まりだな。
「……わかった。では案内してもらおう!!」
「はい!!では、ついてきてください。」
スーツの男はそう言い歩きだした。
どうやら神は俺を見放してはいなかったようだ。生きていれば良いこともあるものだと思いながら俺は男の後へとついていった……
「着きました!!こちらになります!!受付には念話で話してあるのでお会計だけ済ましてお好きな子をお選び下さい!!」
「ありがとう!!」
男はそう告げ急ぎ足でその場から去っていった。
「よし……行くか。」
今度こそは……!!そう覚悟を決め俺は店の中へと足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。お好きなのをお選びください。」
「は、はい……」
店に入ってすぐに受付の男に声をかけられ奥の部屋へと案内された。
少しこの状況に慣れてきたのかそれほど緊張はしていなかった。
「この中から好きなのを選んでください。」
「はい!!」
この町に来て一番初めに訪れた店のことを思い出す。
あの時のようにケモ耳、魔族、普通の人間といったように中々にバラエティーに富んでいる。
そして俺は前回と同じように人間の中から選ぶことに決めた。
「じゃ、じゃあ……この子で!!」
俺は人間の女性の中から一人を指差し男に告げた。
正直どれでも良かったのだが奴隷ということもあって見た目が一番タイプな子を選んだ。
「ではお客様どうぞご自由に。返却期限は明日中でお願いします。」
「は、はい……」
こうして俺は奴隷をレンタルすることに成功した。
とりあえずホテルに行こう。そう決めた俺はレンタル奴隷と共に店を後にした。
「そういえば代金払ってないな……後払いなのかな??」
そんなことを考えながら俺の少し後を遅れてついてきているレンタル奴隷に目をやった。
服はボロボロで奴隷らしい感じだが肌は綺麗で随分と健康そうに見える。奴隷と言ってもレンタル奴隷だからそれなりの生活は送ってるわけなのだろうか。
「な、なあ……君名前はなんてゆーの??」
「……」
極度の人見知りなのかそれとも奴隷としての決まりなのか、質問の回答はもらえなかった。
まあ俺も話すのは苦手だしヤルことヤレればそれでいいか。そう考え俺はこれ以上の意思疎通を放棄した。
「……とりあえず宿に行くけどいいよね??」
「……宿、こっち」
「あ、案内してくれるの??」
俺がそう尋ねたらレンタル奴隷は軽く頷き俺を先導するように歩き始めた。
俺は勝ちを確信した。この子はきっと奴隷としての仕事を全うしてくれる。もう言葉はいらない。
道中何の会話もなく宿へとたどり着き、受け付けで宿代の5000Gを支払い部屋に入った。
「早速だけどいいかな??」
俺は兎に角ヤリたかったので部屋に着いて早々ではあるがレンタル奴隷にそう尋ねた。
俺の問いかけにレンタル奴隷は首を縦に振り衣服を脱ぎ始めた。
ついに、ついにこの時が……。
レンタル奴隷は全ての衣服を脱いでベットへと仰向けで寝そべっていた。
俺は一旦深呼吸をした後にベットへと向かいレンタル奴隷に覆いかぶさる形でその時を迎えようとしていた……その時だった。
「きゃあああああ!!!!!」
俺の下に覆いかぶさっているレンタル奴隷が悲鳴を上げた。
そして、その直後に部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
俺は状況が全く理解できていなくてパニックになっていた。
「大丈夫ですか!!??どうされました!!??」
扉の向こうからそんな声が聞こえる。なんだこれは……
「入りますよ!!??」
そして一人の男が部屋の中に入ってきた。
「そこの男!!その子に何をしている??」
なぜか知らんが屈強な男が突然部屋に乱入してきた。そしてわけのわからないことを言っている。俺はただ奴隷と初めてを迎えようとしていただけだ。なんなんだこれは……
「お、俺はただ、れ、レンタル奴隷としようとしてただけで……」
「レンタル奴隷??なんだそれは??この町で奴隷売買が許可されているのはジャスパーの店だけのはずだが……レンタル奴隷なんて聞いたことがないな」
「ほ、本当だって!!ね??ね??ね??」
俺の下に覆いかぶさっているレンタル奴隷にそう問いかけるが何も答えてくれない。それどころか目に涙を浮かべている。
「……この状況見過ごすわけにはいかないな。おい、男!!とりあえずその子から離れろ!!」
「え??あ、はい!!」
「今から衛兵隊の元へと着いてきてもらうがいいな??」
「え??衛兵隊??なにそれ??」
「罪人のお前を衛兵隊に引き渡すんだよ!!」
「え!!??罪人??なんで……??」
ーー俺は頭が真っ白になった。