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色々あったが俺は奴隷を手に入れることに成功?した。

これで本来の目的を達成できるか定かではないが、俺はまだわずかな希望を抱いていた。



「……なかなか起きませんね」


檻の中を見つめながら奴隷商はそう呟いた。

檻の中の少女は名付けによって回復したように見えたが未だ眠りについたままだ。体の外傷は消え血色も良くなり、そしてなぜか体が成長している。これは一体……



「……中に入ってみましょうか?」


「……大丈夫なのか?」


「言い伝えによりますと、名付けをしたものの命令にはなんでも従うそうなので問題ないでしょう。」


「そ、そうなのか……なら入ってみるか」


俺がそう答えると奴隷商は頷き、腰にかけていた鍵を檻の鍵穴に差し込みゆっくりと扉を開けた。

奴隷商が中に入ったのを確認してから俺も中へと入った。



「生きてんのかこれ?」


「ーーどうやら眠っているようですね。」


奴隷商は恐る恐る横たわっている少女に近づき、口元に耳を近づけ少女が眠っていることを確認した。



「起こしてみるか?」


「そうですね。ではお願いしてもよろしいでしょうか?」


「え??俺が??」


「ええ。起きろと命じてみてください。」


「……わかったよ。」


少々不安だが俺は少女を起こすことにした。

まあ最悪襲い掛かってきても何とかなるだろ、俺には魔法があるし相手は猫耳が生えているだけの少女だそう考えていた。



「お、おい、起きろ!!」


「ーーん、んにゃ??」


俺が起きるよう命令を下すと少女は普通に目を覚ました。

どうやら寝ぼけているのか状況を理解していない様子でなんとも間の抜けた感じだ。



「おい、お前歳はいくつだ??」


「んにゃ、タマの歳はーーっ!!!!オ、オークがいるにゃーーーー!!!!」


「誰がオークだこの野郎!!!!人の古傷抉ってんじゃねーよ!!!!」


オークは俺の高校の時のあだ名だ。このクソ猫、思い出させるなよ。

全く躾がなってない……てかこいつ今自分のことタマって言わなかったか?

俺は気になったので苛々を抑え聞いてみることにした。



「俺は人間だ。お前タマっていうのか?」


「んーー……ほんとにゃ!!よく見たら人間に見えるにゃ!!にゃんだよもーー驚かさないでくれにゃーー」


「……このクソ猫、まあいい。いいから質問に答えろ」


「タマはタマにゃ!!両親にそう呼ばれてたにゃ!!」


「両親がって……お前ユキじゃないのか??」


「ユキ??何を言ってるにゃ??タマはタマにゃ。……なんかお前気持ち悪いにゃ。」


「っこのクソ猫!!さっきから失礼なことばかり言いやがって!!わからせるぞ!!!!」


「っ!!やめるにゃ!!近づくなにゃ!!怖いにゃ!!イカ臭いにゃ!!」


「イカ臭くはねーだろーが!!!!ったくちょっと可愛いからって調子に乗りやがって……」


性格こそ生意気なメスガキって感じだが見た目の印象はかなりいい。

銀髪の髪に褐色の肌、まん丸の目が猫らしくとても可愛いらしい。それに体も充分俺好みだ。

最初見たときはやせ細ったガキって感じだったが……



「名付け出来てんのかこれ??」


「どうなんでしょう……私も初めてのことなのでよくわかりませんな」


体の回復や見た目の変化は名付けの影響だろう。だが明らかに俺に服従している様子はない。むしろ敵意すら感じる。どういう状況だこれは。



「おいクソ猫、歳はいくつだ??答えろ」


「答えたくないにゃ」


「……は??命令だ!!答えろ!!」


「女性に歳を聞くなんてお前は失礼な奴だにゃ。」


タマはやれやれといった様子で歳を答えようとしない。

名付けをしたものの命令はなんでも従うって話じゃなかったのか??

名付けが出来ていないのかそれとも言い伝えが間違っているのだろうか……



「ところでそこのオーク!!お前さっきからタマのことクソ猫って呼んでるけど殺されたいのかにゃ……??それにそこのおっさんもタマをこんなとこにずっと閉じ込めやがって……」


「うっ!!!!……」


この雰囲気はまずい。タマは毛を逆立てて殺気を放っている。間違いなく襲い掛かってくる流れだ。

魔法を使って応戦するか??それともこの場から逃げ出すか??

パニックになった俺はその場から一歩も動けずにいた。俺がタマから視線を外したその瞬間だったーー



「にゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」


タマが俺に襲い掛かってきた。

タマは猫のような鋭い爪で俺の首元を狙ってきている。

このまま何もしないでいると間違いなく俺は首を搔っ切られるだろう。

極限状態に追い込まれた俺は脳ミソをフル回転させある一つの回答を導き出したーー



「ユキ!!!!お座り!!!!」


「にゃ!!」


「……」


どうやら正解を引き当てたようだ。

タマは何の疑問も抱かず無垢な瞳でお座りをしている。

名付け、命令、そういうことなのか……



「ユキ!!お手!!」


「にゃ!!」


「っ!!!!痛てぇーーーー!!!!爪が!!爪が刺さったーーーー!!!!」


「っ!!!!にゃ!!にゃんだこれ!!体が勝手に動いたにゃーーーー!!!!」


爪が刺さって悶絶する俺、体が勝手に動いたことに驚くタマ改めユキ、状況が理解できずオロオロしている奴隷商。現場は大混乱だ。

ともかくこれで……



「ユキ!!歳はいくつだ??」


「12歳にゃ!!」


「やっぱメスガキじゃねえか!!!!」


俺の僅かな希望は打ち砕かれた。

流石に未成年には手を出せない……俺にも良心というものがある。

名付け後体が成長したからワンチャン本来の姿を取り戻した的な感じかとも思ったが。

こうして俺はユキとの出会いを果たしたのであった。



「……クソがぁーーーー!!!!」

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