ギルドでの出会い
《19話》
【魔界─地方都市サタノス】
───フィリスに連れられて俺はギルドの建物へと駆け込むように入っていく。
前回、前々回この地方都市サタノスのギルド本部に来た時はあくまで時間指定のない魔物討伐…いわば[雑魚狩り]だったこともあり自分以外に魔物討伐者の悪魔達は数人…しかも雑魚狩りな為ビギナーの魔物討伐者が大半であった。
しかし今回は全く別物だ。
[邪竜ファヴニアル]…コイツはこの地方都市サタノスのギルド本部で受ける事の出来る最大難易度のボスである。
今回ギルドに入った瞬間、そこに参加する者の圧で俺は怯みそうになる…俺は熾天使の瞳でだいたいの相手の力を見極めることができる。勿論フィリスやフィーゴのように普段時より戦闘時に加護の力が跳ね上がる場合には全てを測れる訳ではないが……
───そんな俺の目は[やはり、超級や上級の討伐者…凄まじい力だ]と語っている。それでも、やはり通常時のフィリスに到達していないことを見るに、フィリスと同程度の悪魔がほとんど居ないって言う発言が嘘ではないとわかる。
ちなみに、魔界には4大竜がいるとされ、地方都市それぞれで受けられるオファーは違うものの、基本的にドラゴンが大抵一番難易度が高い。
空を堂々と飛翔し、口からブレスを吐いたり、地面からえぐり取っだ大地を粉々にして流星のように降り注がせたりとドラゴンはやはりロマンを感じる───
俺が扉を開けて、ギルドの中に入るとほぼ一番最後の参加者だったこともあり…
本来であれば"一番最後に登場するヤツ…時間ピッタシに現れる奴"はなんか目立ちたがりというか、自分に酔いしれている奴で実際力も強いという…異世界転生あるあるだが
あいにく俺はそうではない、俺はだって数日前に始めたばかりの初級者だ。
俺の姿を見て[なんだ、コイツは初級者だな。]という失笑、[ビビらせやがって…俺より強い奴来たらどうしようかと思ったぜ]というような安堵、それぞれ反応はまちまちだが、おおよそコイツは"見学"に来たんだろうなという評価を下される。
────あれ?俺の前にフィリスが入ったのならもっと驚かれてもいいような…
いや待て、これフィリス気配消して姿も消してやがる!だってそうだよな、俺が入る前にフィリスが入ったはずなのに、俺にしか視線向いてなかったし!
「フィリス、それは狡いって…俺だけ嘲笑のような目線向けられてるってば…」
小声で俺はフィリスに文句を言ってみる。
「ニャハハ、ごめんごめんディガル君。流石に私は熾天使の姿ではここに来るとドラゴン討伐の前に熾天使討伐が開催されちゃうかもだし…しかも、熾天使討伐開催されたらドラゴン討伐に割ける人員が居なくなっちゃうから…私にボコボコにされて♪」
ともはや笑っていいのかわからないジョークを返してくる。俺はうーんと腑に落ちないが……
「フィリスの可愛さとさっきの契約に免じて許すしかないかな…」
「さすがはディガル君、心が広い…♪」
「次変な揶揄い方したら擽って無理矢理この悪魔衆の前に曝け出させるからな。」
「ちょいちょい…それは駄目でしょ。こちょこちょは立派なセクハラだよ、ディガル君」
「いや…こちょこちょはセクハラじゃないだろ」
「ディガル君のこちょこちょは絶対にいやらしい手付きで擽って来そうだし駄目。」
「俺全然信用されてねーな…」
と少しブツブツとフィリスと会話してたのだが、その超級者の数人の中から1人…多分一番強そうな悪魔が俺の方へと歩いてくる。
"うわ…厳ついおっさん"とか後ろで言うフィリスやめてくれ…今嘘でも笑ったら俺がぶん殴られるて…
確かに防備をしっかりと固めて、さらに威圧感マシマシで武士を彷彿とさせるようなその悪魔は厳ついという感想しか浮かばない…。
「君…」
「は、はい!」
「ドラゴン討伐は初めてか?」
「そうですね…見学だけでもさせてもらおうかなぁと…これから先の目標にしたい訳で…」
「見たところ、まだ初級者といったところか。それにしては纏っている気配が不自然だ…何かに取り憑かれてるという経験は無いか?」
「さ、さぁ……」
取り憑かれてるって……そういうことだよな…間違いなくフィリスのことだ。魔界の存在ではない力を纏っているから気配がよめる存在からすりゃ違和感あるのは当たり前だよな…
"ねぇ、誰が取り憑いているですって?失礼しちゃうなー、私は由緒正しき熾天使サマだぞー?"
と後ろでフィリスがごちゃごちゃと文句を並べている…きっと拗ねてる顔は可愛いのだろうが今振り返って確認すればこの目の前のおっさんに怪しまれるだろう……
「とにかく、見学ならくれぐれも出しゃばって前に出たりしないことだ。私は超級討伐者を取りまとめていて、全責任は私が背負っている。君が初級者とはいえ、私には君を無事に返すという義務がある。忘れないように」
「…は、はい。」
"思ったより性格いいみたいだね、このおっさん"
だからおっさん呼びやめてフィリス…
「お前も、いきなりガイルのおっさんに目ぇ付けられたか!」
「え?」
あの厳ついおっさんが俺から離れていくと、その様子を見ていたのであろう…人間で言うと25歳くらいの若いお兄さん的な悪魔から話しかけられる。普通にどこにでもいると言えば語弊はあるが…大学時代にも仲良くはならないが、普通に良い人みたいな先輩は居たものだ…纏っている雰囲気は良い人、いや悪魔オーラを発している。この人も超級なのだろうか…
「ほら、あのおっさんな?ガイルさんつって、一応このギルドの取締役みたいなもんなんだよ。」
「あの…あなたは?」
「あーワリワリ、俺はヒューガっつうんだ。お前は?新人だろ?このギルドでは初めて見る顔だ。」
「ディガルって言います。はい、新人で見学を…」
「なるほどなぁ?ま、基本戦うのは俺達上級か超級の人らで戦力は事足りる。緊張しなくとも行って帰ってこれりゃ新人のうちは十分だ。」
「ヒューガさんはこの討伐参加は何回目なんです?」
「…それ言っちまうと、俺達が邪竜相手に結構これまで苦戦して封印が精一杯だったのバレちまうだろ?」
そうヒューガが言うと周りからギロッと睨まれるような視線が集まるのを感じる…
"ププッ……邪竜相手に苦戦だなんて悪魔もまだまだだねー…ザーコザーコ♡"
フィリス…聞こえないし、俺が話し相手しないからってキャラ崩壊するのやめて。まるでそれメス●キだよ…ハァ……
「今回は倒せそうなんです?」
「あぁ…今回は俺達の頭数もしっかり揃ってる。普段なら超級が5人、上級15人位居るんだが…今回は邪竜をそろそろ仕留めるっつーことで超級が10人、上級が25人来てる。まず負けねぇ。」
「悪魔で超級の討伐士って何人位いるんですか?」
「そうだな…100人いるか居ないか…かなり貴重な戦力だ。超級一人は上級の10人分くらいと言っても過言じゃない。それが10人だ…そうやすやすと負けないさ。勿論ここにいる10人の超級者は、あくまで地方都市の10人だ。中央の奴らはもっとつえーかもだがな。いや、口が滑りましたァ!!」
「あ」
ヒューガは後ろから超級討伐士数人につままれて、
「おい、ヒューガ!お前はそろそろ超級討伐士になれるかもって言われてんのに今から1からやり直すか?」
「おいおい、俺らが中央の奴らに負けるって言いてぇのかよ?」
「お前を超級に推薦した俺達を馬鹿にすんのか、若造ー!」
と軽くどつかれながら、勘弁してくだせーなどと苦笑いしている。
超級の方らもあくまで冗談なのは理解しているようだ。
───あぁ、結構仲良いんだなこの討伐メンバー達。本来仲良くなければあんな失言すりゃ本気でしばかれているだろうしな。
"ふーん…悪魔も意外とちゃんと仲間意識あるんだねー、意外。これならもし邪竜に全滅させられかけたらディガルだけじゃなくてもこの悪魔達も助ける価値もあるかも"
と後ろで、超級の方達よりふんぞり返ってるフィリス……
「フィリス…意外と悪魔も天使も変わらないかもな…」
"ま、天使と悪魔といえど戦争を望んでるのはホントに上の方であぐらかいてるような連中だけだよ"
「フィリスは熾天使で、トップレベルって聞いたけどそれに当てはまらないのか?」
"私はさ…熾天使の中でも次代のトップなんだよ…現環境を決めてるのは私らの親世代だよ。最近親は帰ってこないしなー"
「そういや…フィリスやフィーゴの親には天界でも出会わなかったもんな」
"まーね…兄の方が多分優しいからわたしの親には期待しない方がいいよ?"
「でも挨拶はしときたいよな…一応」
"ふ、ふーん…"
───あれ?フィリス今デレた?
「とにかく、ディガル!俺達に任せとけぇー!」
とそれを遮るようにヒューガの声と、超級討伐士の悪魔達が軽く手を挙げる。
ここで、ギルド内にアナウンスが流れ始める。
《邪竜討伐メンバーの皆さん、準備が出来次第、転送陣へお集まりください。繰り返します、邪竜討伐メンバーの皆さん、転送陣へとお集まりください。》
────さぁ、ついに邪竜とご対面と行こうじゃないか。
"ま、私らの出番は一番最後になるだろうけどねー?"
分かってるって…!
俺は見学だということもあり、すごく軽装だ。勿論フィリスがいるからそもそも準備物は要らない…
俺はフィリスに手を差し伸べる。
「さぁ…行こっか…フィリス」
「あ…ちょいちょい、それわたしのセリフなんだけど…!」
俺の手をぎゅっと握りしめるフィリス
さぁ…邪竜討伐一狩り行こうか…!!
《19話完》




