目が覚めると②
《16話》
【天界──中央都市エディン──】
──フィリスが夜食を持ってきてくれた。
裁判が終わり、結局シルヴィアやアデルに礼を言うことなく俺はぶっ倒れるように10時間近くも眠りこけてしまったのは正直情けない話である。
って言っても、それがフィリスの力が求める器の大きさに俺が全く到達していなかったというのだが…何せフィリスは天界の中でも最上位レベルの天使なのだから言い訳の一つくらいはさせてもらいたいものだが…
フィリスには先程自分の状況や、あの後の状況を大まかに聞いたもののやはり聴いただけでは実感は薄い。
特にシルヴィアに対しては俺は"ルクス家の儀式の間"にバルディオルが幽閉されている可能性が高いと裁判が始まる前に言ったっきり探してもらったままだし
「……あれ?」
もしかして、まだ儀式の間って見つかってない感じだったりは…しないよな?いや…待て…俺は何か重大な事を見落としているような…
流石にあの老天使が主犯だし、結局フィリスの極刑も無くなった訳だから…
それに…結局俺の録音機もとい盗聴器も証拠品として多分回収されてしまったよな。アデルが持ってるんだろうか…。
「ディガル君?食べないの?ボーッと神妙な顔してるけど…」
「あぁ…いや…ちょっとだけ考え事。」
「スープ冷めちゃうよ?」
「分かった。先に頂くよ…」
ひとまず思考にふけるのは後にして、フィリスが作ってくれたスープとおにぎりを食べ始める。
おにぎりには程よく塩がまぶしてあり、空腹の身体にはよく馴染む…おにぎりの握り方って意外と重要だよな…絶妙な力加減にしないと固くなったり米がバラけたり…。
フィリスのおにぎりはそれのどちらにも当てはまらない。
んー…フィリスは料理も普通に出来るようだ。ホント…少しくらい欠点が欲しい位に素晴らしい天使だと思う。
そして用意してくれた野菜スープを啜るとほんのりと野菜の甘みを感じ…身体が芯まで温まる。
「──優しくて懐かしいような味わい…好みの味だ…。」
「気に入ってくれた?私の得意な味付けなんだよね…♪」
確かにすごく美味しい。具材の味やダシの味がしっかりと出ていて…
…でもこの味…どこかで…。
割と最近この味を食べたような記憶がある。
どこだったか……。でも、インスタントとかではここまで野菜やダシの味は出ない。間違いなく手作りなのは事実だ。
とにかくさっきの疑問はフィリスに聴いてみるか…
「なぁ…フィリス」
フィリスはチラッと此方を見ながらどうしたの?と言うように少し首を傾げる。…相変わらず一つ一つの動作が可愛いのはズルい…(汗)
「ルクス家が隠してたっていう儀式の間について、シルヴィアには裁判中探して貰うように頼んでたんだけど…あ、多分シルヴィアは傍聴席には帰ってきてたから部下に押し付けてたんだろうとは思うんだけど……結局見つかったのか?」
「言いにくいんだけど…まだ見つかってないっぽいんだよね。」
「マジか…そんなに隠すのが上手い感じ?」
「というよりは徹底されてるのよね、少なくともアデルが見抜いた関与している天使達は場所をそもそも知らされてなかったみたいで…」
あ…確かに盗聴した内容でも老天使が話していた相手は初めてみたいな感じだったしなぁ…
「直接あの老害天使に尋問でもして口を割らせられないものなのか?」
「ディガル君その老害天使ってあだ名気に入ってたりする?」
「いや…なんかしっくり来るなー?って…」
「んー…しっくり…来るかなー?とにかく、そうも上手くいかないんだよね。いくら極刑を受ける天使にとはいえ拷問の類は勿論許されてないし……脅しの類はアデルが試したみたいだけどあの老天使は相当に口が堅いみたい。」
「厄介な話だな…」
「そうだねー…バルディオルは多分閉じ込められたままだと思うし。私は別にそれでも構わないんだけど、アデルは…ね。」
フィリスはやれやれというような顔をした後、耳元で
「でも、ディガル君と会えたのはアイツのおかげみたいなとこあるけどね…なんて…♪」
「…ッ……!」
マジでさっきからフィリスとの距離感みたいなのがバグってる気がするんだが…!というより裁判の後辺りからフィリスの方からグイグイ来てるような…
でもこれ多分ずっと揶揄われてるような気がする…。でも、それでも構わないと感じてしまってる俺自身も多分悪いんだろなー。
初対面の時のあのキリッとした真面目なフィリスの顔も俺は好みだが…今のこの小動物感?猫感?のある可愛らしい雰囲気のフィリスも好みだ。でも…どちらにせよフィリスの底は知れてない…気がするんだよな。
──本気で戦うフィリスの姿を見てみたい。
そんな欲求を俺は持つようになっている。
あ、でも少なくとも俺はアイツ(バルディオル)にもう一度会うことになれば…その時はもう一度謝らせよう。
結局アイツがこの件の全ての元凶になった訳だしな。俺とフィリスが出会うことになった直接的な要因ではあるけども…それが良い、マジで!
「ところでさ、私もそろそろ深夜だから寝ようかなとか思ってるんだけど…大丈夫?」
「あー、確かにフィリスも疲れてるだろうし…俺は寝過ぎて寝れないから散歩でもしてくるよ。」
「んじゃ、また明日。ディガル君♪」
「あぁ…うん。…………うん?」
ここはフィリスの部屋…なんだよな?でもフィリスは部屋から出ていった──
食器を片付けに行った訳でも無いし、明らかに寝る感じだし……この部屋にベッドあるけど流石に俺居るから警戒するのは当たり前か。
そんなことを考えていると、扉がガチャリと音を立てる。フィリスかな?やっぱりこの部屋で寝るのか…
───私の部屋で何してるの?
「へ……?」
ゆっくりと扉が空いて本当の部屋の持ち主が現れる、その髪は薄い青色で長髪……メイド服のスカートがチラッと視界に映る。
「ソ……」
あ、ヤバ…これ多分フィリスに嵌められた!詰んだ!やっぱり何かおかしいと思ったんだよな、だって部屋にメイド服の予備かかってたし!よく考えなくともさっきソニアが着てた服だし!
オワタ…マジでオワタ…
「……。」
「……………答えなさい?私の部屋で何をしていたの?」
「…………。」
《16話完》




