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悪魔は異世界で禁断の恋をする  作者: サボり魔大学生ソニ
1章 フィリス極刑裁判編
13/21

レイ

《13話》

ナハス裁判所 法廷内 時刻12:40


───まさか裁判がここまでアッサリと結果が見えてくることになるとは思わなかった。最初からアデルが裁判する必要すら無いという発言から何か重要な証拠を掴んでいることは予想できたが…


俺としては今の状況はあまりにうまくいき過ぎていて、もはや不安に感じる位だ…。


今のところアデルが俺達に牙を向く気配は無い。それどころかむしろ俺達、いやフィリスに初め挑発と取れるような発言をしていたものの味方をしてくれている。


先程言っていた同じ学園だったってのが功を奏したのかもしれない…


ルクス家は完全に自分達の策を見抜かれたのだろうか…アデルの発言が当たっているのかもしれないがまだ弁論の余地はある…。


その時には決定的な証拠…あの老天使に付けておいた録音機───っと、それを言うには少し前に遡らないといけない。


〈初めてフィリスと出会う2日前〉

魔界─地方都市サタノス


俺が魔界に来てから4日になった。ここに来てからの4日間の流れをザッと紹介すると…


1日目はまずここがどこなのかを知る為に近場をウロウロしていた。勿論家も無く、行く宛も無く…


そもそも前にも言った通り大学の帰り道に「助けて……助けて!…ディガル君…!」という助けを求めるような悲痛な声が耳元で聞こえて振り返ると───次に意識がハッキリするとここ(魔界)に居た。


そもそも俺は向こう(転生?いや転移なのかもだが…)の世界で当然ディガルという名前では無かった。だけどアレは確実に俺を呼んでいたのだと思う。しかしながらここの世界に来ても助けを求めるような人は居なくて…。


だが自分が何故かディガルという名前であるという感覚がこちらに来てからは自然と頭にあった…。


「俺は"ディガル"だ!」


と認識すると身体にこれまでに感じたことの無いような力が流れてくる。


これが転生した世界で受け入れられた問い感覚なのだろうか…


そして周りを見渡すとツノと羽の生えた人が沢山街を行き交っていて…まさかと思い自分の背中を見ると自分にも翼が、頭を触れば短いながらも左側にハッキリと悪魔のツノらしき硬い感触があった。


「俺は"悪魔ディガル"として…この世界で俺に助けを求めていたあの声の娘を助けることを目的にしよう。それからの事はまた考えれば良いし…」


俺は自分の決意がブレないように小声で口ずさむ。


そうとなればやることは決まっている…異世界転生でお約束の『ギルド』とか『案内所』みたいな場所を探そう。まずはここがどこなのかを知る必要がある。


そして街をウロウロしていたが分かったことがある…


「この街…広すぎ……!こんなかでギルド探すとか無理ゲー過ぎる!!」


規模で言えば現実の京都の街なかくらいだろうか…しかも京都のように親切丁寧に案内板などは無いため、俺は既に諦めモードに入りつつある。幸いなことに何故か文字は読める…というより頭に文字が浮かぶから建物さえ分かればだが…


結局夕方になるまで俺はギルド探しをしながらももう観光気分でアチコチをダラダラと回っているだけだった。


不思議なことにこの世界に来てからお腹が空いたとか…トイレに行きたいとかいう感覚が全くなく、もしかして悪魔は人間と全然身体の作りが違うのか…みたいな発見も交えつつ…。


もう日が落ち始めていよいよ野宿もやむ無しか…と思い始めた頃


「ねえ、君…フラフラしてるけど大丈夫?」


と後ろから肩を叩かれて俺は驚いて振り返る。この世界に来てから誰にも話しかけられることもなかったし…まさか悪魔にも心配してくれる優しい人?いや悪魔が居るとは思わなかった。


茶髪で顔の整った……という印象だが…やはり悪魔、翼と角はキチンと生えていて…俺は事の顛末を話してみた。


「ハハ…ギルドは君が来た方向の真逆だよ?とにかくもう遅いから、明日暇だし、ギルドまで案内するよ。泊まるとこ無いって話だけど部屋の下の階空いてるからそこ好きに使ったら良いよ。」


まさに地獄に仏とはこのことだ…。お礼はギルドで稼いだ金でいつか焼肉でも奢ってくれれば良いという…所謂出世払いって訳だ。


こんな提案をしてくれたこの悪魔にはいつかきっと良い肉を奢りたい…。名前は「皆はレイと呼ぶ」らしく、俺もレイと呼ぶことにした。


その後軽くレイからこの土地について話を聞き、借りた部屋で生活を始めることになった。


2日目はレイに案内してもらいギルドへ…、魔界の居住許可証や魔物討伐許可証を発行してもらうことができた。


3日目…昨日はほぼ朝から晩まで自分のレベル上げ的なものを行った。低級魔物がよく湧くスポットをレイに教えてもらい、ひたすら雑魚狩りに専念した。


勿論この世界にレベルという概念自体は存在しないようだが、倒せば倒す程肉体強化や武器強化が悪魔には入るという話をレイから聞いた。


勿論ドラゴンのような強力な敵を倒せば一気に強くなれるというがどう考えてもリスクが大きすぎる。


「やはり最初はコツコツ雑魚狩りで小銭稼ぎついでに自分の力を上げてくのが無難だよな…」


いつか自分の実力がそれなりについたら強い敵にも挑戦したいとは思う。


最初は小さい雑魚魔物にも正直苦戦…はしなかったものの、というか、死ぬ事は無いしむしろ全然攻撃も痛くは…例えるなら小型犬に思いっきりタックルされるくらいの?ダメージ程しかない。


肉体は悪魔の力が守ってくれているのだろう、正直簡単な攻撃で死ぬ事はなさそうだ。


しかし問題は自分の攻撃が簡単に当たらないという事だった…。


ゲームではあんなに簡単にクリティカルヒットを連発していた剣技はまだまだこれからというレベルだ。


ギルドから支給された剣すらもまだ扱いきれていない状態だ…俺は認識をまだ自分は"レベル1"なんだと切り替える事にした。


異世界転移で神様から都合よくスキルが貰えて俺つえーが出来てもきっと俺は楽しめないタイプだ。すぐに飽きることになるだろう…だからコツコツ努力して俺は強い悪魔になるんだ…。


そしたら隠れた才能みたいなものが俺にもあるかもしれない。(まさかこの後俺はイレギュラーだの、特異点だの、悪魔もどきだの言われるとは知る由もない。)


夕方頃、レイが迎えにくる。


「ディガル、君は努力家だね。そろそろ夕飯にしようか……って、1日でかなり狩ったね。すごい集中力だよ」


と言いながら、レイは俺にポーションを渡してくる。俺はちょうど疲れてきたこともあり受け取ると一気にガブ飲みする。


ほんのり甘いそれは、俺の身体に生命力を吹き替えしてくれるような感覚がする…。味は現実世界で言えばオロナ●ンCとポ●リスエットを混ぜた所謂オロポに近いかもしれないw


「多分雑魚はザッと200は倒したと思う…。昼過ぎ位には、身体のキレが増してきたし…それでもまだまだだけど。」


そうレイに報告してみると


「んーと…なら明日、ギルドに討伐報告しに行こうか。強くない魔物だとしても100体以上倒せたらビギナーから初級者の位に格上げされるはずだから…。コインの他に何か報酬も貰えるかもだし…」


レイの話によると、今ギルドでは魔物討伐者を志す悪魔はあまり居ないらしい。


というのも一流の魔物討伐者はうじゃうじゃ居るが"超級"の魔物討伐者はほんの一握りで…だいたいの悪魔がそれなりのレベルで頭打ちを食らってしまうこと、一流の魔物討伐者は雑魚敵や中級程度の敵には目もくれない為、中級程度の魔物が増えているが対処する悪魔が少ないことなどがあるらしい。


その為ギルドは新しく討伐者を探し、色々キャンペーンをやっているそうだ。なら、それを利用しない手はない。余っている敵をどんどん俺が倒していければいい話だ。


そして今日4日目、朝起きるとレイが既に朝食を作ってくれていた。ここに来てからレイは朝晩毎食料理を作ってくれる。悪魔は1日2食が一般的らしく、人間のように3食食べなくとも空腹感は全く無い。


しかし、こう毎回作ってもらうと居候中なので申し訳無い気持ちもある、それにいつもかなり美味しくて…尚更…


「レイ、おはよう。毎朝作ってもらって悪いな…。」


「ディガルおはよ…いやいや、料理好きで好きにやってる訳だからお礼しようとか思わないでいいよ。一人分も二人分もそんなに変わらないから…。それより謝られるくらいなら普通に感謝されたいかな?」


と困ったような表情で笑いかけてくる。


「あぁ、毎食ホントに助かってる。ありがとう」


そういうと俺は食べ始める。レイはそれを見て満足そうにこちらを見てくる。その顔を見て俺は何か懐かしい感覚というか既視感というかを感じたが…その理由は分からないままいつものように朝食を終える。


食べ終わると俺達は再びギルドへ…討伐数が100を超えたことをギルド職員に報告する。


ギルドにはそれが嘘でないかを見分ける水晶があり、そこに手をかざすと討伐数に応じて色が変わる。


討伐数が100を超えると緑色になるらしい。俺が手をかざすと水晶は黄緑色へと変化する。


ん?失敗か?…と思うがどうやら黄緑は200匹討伐達成の色であり…やはり200以上討伐を達成していたようだ。


ギルド職員から討伐数200を記念して


「まさか1日で200討伐完了するなんて…近年稀に見る結果ですよ!これからの活躍に期待してこれをお渡しますね」


と記念品と称して小さな箱に入ったものを渡される。見ると白いイヤホン?今話題のワ●ヤレスイヤホンに形状が似ている。


レイがそれを後ろから覗き込むと


「あ、これ最近便利になったって話題の録音機かつイヤホンかつ補聴器だよ」


とまるで自分が貰ったかのように喜びながら…


「ここに自分の魔力を貯め込んでおくと使えるんだけど…ひとまず普通に耳に付けると補聴器で…だけど普通の補聴器というより自分が普段聞こえない位の音を聴ける聴力の拡張が近いかな…。


次に、録音機能とイヤホンは片方を録音モードにしておけば録音したものを片方の方で聴けるって感じ、録音機というより盗聴機が近いと思う。悪用厳禁だけどねー♪」


自分も持ってるんだ、意外と便利だからね。とレイも似たようなイヤホンを見せながら実演で説明してくれる。


戦闘時に相手の動きを音で把握したりとか…色々使い方には工夫が出来そうだ。


───────────────

ナハス裁判所 法廷内 12時42分


というのが長くはなったが魔界に来た直後のだいたい出来事である。


俺はあの老天使が俺達を煽った後、立ち去る瞬間に彼のフードの中に俺の録音機もとい盗聴器を投げ入れたのだ。


フィーゴは気づいたようだが、俺達を馬鹿にした老天使は散々煽って油断していたのだろう…全く気づく様子は無かった────



アデルが再び口を開く


「んで、ルクス家さんよォ?何か言い訳かそれとも何か反論はあんのかよ。ねぇならそろそろ閉廷してーんだが?」


その瞬間に、少し苛立ち紛れにルクス家の席の2列目に座っていたあの老天使が立ち上がる。


「反論も何もまだお主らの推察が正しいとはワシは認めておらん、熾天使同士が庇い合う等よくあることじゃしの。特に、そこの悪魔…いや、シエル家と共謀を図った不届き者の証言が正しい証拠が無い!」


ともはや自分達の怪しさなど棚に上げ、声を荒らげる"老害天使"…


俺はここだなとスッと立ち上がった。


《13話完》

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