クールで紳士的なプレイヤーです
クソのような形で終わったイベントに俺達はため息をついた。
「運営の罠じゃんあれ」
「きめぇ奴ばっか集まってたぞ」
「喧嘩打ってんの?あんた」
「っつーかやっぱてめぇら信用できねぇわ。リビングアーマーと戦ってた時、さらっと魔法こっち飛ばしやがって」
他の場所は比較的平和に終わったらしく、一部では皆で宝を売った金を分け合ったという話すら聞く。なんという天国だろうか。俺もそっち行きたいね。
実際、最終的にプレイヤー同士のバトルが起きた場所が大半で、一つ二つほどが協力し続け裏切りもなくイベントを終えたらしい。凄いよそれもう、人間じゃねぇ。
「それ、アイドルいたとこらしいぞ。光に浄化されたんだろ」
はぇ~、やっぱアイドルすげぇわ。
一般人とは格がちげぇよ。どうせ今俺たちの配信見てる視聴者もニート率高いに決まってら。アイドルの配信が眩しすぎてこんなドブみたいなプレイヤーの配信に集まってんだろうよ。
血塗れからのPK判定で宝は取られるし、金もそこそこ奪われるしで踏んだり蹴ったりだ。俺はちょっと補填に力を入れることにするぜ。
「PKの隠語いらねぇんだよ。素直に言えや雑魚殺すって」
黙れや廃棄物、俺は体裁を気にすんだよ。
今回でよーく分かった。俺はやはり正常だ。だって血塗れの事怖いって感じたもん。あの感情に嘘はねぇ。
だが、それとこれとは話が別だ。
俺は血塗れが怖いし、性根が腐っているゲーマーと違って良心もある。それでも、金を稼ぐ手段として手っ取り早いのはPK。ただそれだけの話なのさ。
◇□◇
誰しも俺の金を稼ぐ常套手段がPK一択だと思っている。
舐めるなよ、種族人間風情が…!俺は新たに《窃盗》スキルをゲットしている。しかも相手に触れることで発動するという条件は《影魔法》で触れることでも達成できる。
「くくく…!」
盗賊稼業の始まりだ…!
――だが、そう簡単にはいかなかった。俺はまず地面に影を広く伸ばして街道に敷いてやろうと考えた。まぁ地面こそ黒くなるがテクスチャバグとでも思ってもらおう。そして、通った奴に影に触れた判定がつき《窃盗》を行使できる……、結果としてこれは機能しなかった。理由としては靴の裏は触れている判定にならなかったのだ。
一番楽で効率のいい方法は駄目となると、あとは普通に当たり屋になるしかない。とにかく肩をぶつけてさりげなく謝りながら《窃盗》を使う。単純明快だ。
ここまで来たら普通にPKした方がいいのでは?と思わなくもないが、PK情報が出回らずに金を稼げると考えれば悪くない。
PK情報を出回らせたくないなら魔物を狩れって?
……。シャラップ!プレイヤーからはレアアイテムだって盗れる可能性がある。そこにあるロマンに手を伸ばさずしてどうして生きていられるだろうか。…それでは、早速行ってみよう。
つったかたーと歩いているプレイヤーに肩を当て、謝りながらその場を離れる。
日本人は謝られたら基本謝り返す。相手に悪意がないと思えば許してしまう心優しい種族なのだ。だからこそ、隠された悪感情に気付けない。
《窃盗》はしっかりと発動した。
ただ今回は失敗しただけだ。これをこの街を回って繰り返し続ける。今日一日ずっとだ…!くくく…、あまり俺の忍耐力を舐めるなよ?
そうして、肩ドン参り2023が幕を開けた――。
結果として効率はそこそこだ。
思っていたよりも《窃盗》が成功する。どうやら《窃盗》はLvが上がる毎に成功確率が上昇するらしく、現在発動しまくったことによりLv.3になっているのだが、五、六回に一度は成功する。素晴らしい。所要時間も予想よりも掛からない。もう少しレベルを上げて、スキルも《窃盗》用に揃えられれば一つのビルドとして確立できるほどだ。
〔Item:「鉄鉱石」を獲得〕
「盗賊ビルド…夢しかねぇな」
窃盗を見事成功させながら、俺はそう呟いた。
自分のアイテムは増え、相手のアイテムは減る。普通に狩りをしてアイテムをゲットするよりも実質二倍の差ができるのだ。
俯き、にちゃにちゃと笑みを浮かべながらまた適当な奴にぶつかり、《窃盗》を発動しながら謝罪をする。ここでポイントなのが如何に申し訳なさそうにできるかだ。最早死んでしまいたいという雰囲気を醸し出して謝罪をすれば基本許されるもんさ。
〔Item:「苺のサンドウィッチ」を獲得〕
「あ、すいません…」
「ぁあ、いえいえ!お気になさらず!」
窃盗成功!二連続成功とは運いいじゃんね。しかも苺のサンドウィッチだぁ?見覚えのないアイテムだが、恐らく料理系のアイテムだろう。運がこっち向いてきやがったなぁ!?
ランラン気分を隠してそそくさとその場をあとにしようとするが、その瞬間、
「あ、あれ!?な、ない…ないないない…!!」
背後から焦燥の混じった声が聞こえた。
ふと後ろを振り返ると、それは先程俺が窃盗に成功したプレイヤーだった。輝く金の髪をポニーテールでまとめ、整った顔立ちを今は焦りに歪めている。
「も、貰ったサンドウィッチがない…!」
さぁっと俺の顔が青くなっていく。
まっずい、逃げるか?この状況、怪しまれるのは100%俺だ。つーか怪しすぎんだろ、明らかに。ぶつかられたらアイテム無くなってました?いや、お前じゃん。完全にさっきぶつかってきた奴じゃんってなるよ。
あー、まっずい。
今までそんな重要そうなアイテム盗ってこれなかったし、アイテムウィンドウ開いてるやつもいなかったしなぁ。これで相手が俺みたいなPK上等の奴なら喧嘩の売り合いで有耶無耶に出来るんだけどなぁ…。
俺はちらとあわあわと慌てるポニーテール女子を見る。
明らかにゲーム慣れしていない…、たまたま応募した抽選に当たってこのゲームに参加したクチだろう。やべぇ、心がズキズキする。やはり俺の良心は健在だ。
どうするべきだ。どうすればいい。
出来る事ならこのサンドウィッチは返してやりたい。俺は心優しいゲーマーだ。新参者に少しでもそのゲームを楽しんでほしくてちょっかいをかけるタイプのプレイヤーだ。その優しさが俺へと訴える。素直に返しておやり、と。
――だが、それでは駄目なのだ。
何故そのアイテムを持っているの?→まさか…盗み!?→おまわりさーん!となり、エンドである。
俺が《窃盗》スキルを持っているというのは今日一日は隠し通したい。どうせ明日になったらバレてるだろうし、それならば今日だけはその旨味を吸い続けたいのだ。
だが、慌てる彼女の後ろでずっと佇み続けるのも流石に怪しい。
俺は状況をより正確に把握するために、焦る彼女へと話しかけることにした。
「あのー…すいません、どうされました?」
「え、あ!い、いえ…ちょっとアイテムをなくしてしまって…」
「アイテム、ですか?」
「は、はい…、さっきまでは確かにあったと思うんですけど…」
うん、まっずいねこれ。
完全にアイテムがなくなったことバレてんね。《窃盗》ってアイテムウィンドウ開いてると突然消えたように映るんかな?次はしっかり前を向いて歩いている奴狙わねぇとだな…。
教訓を得ながらも、どう誤魔化そうかと考えていると、
「これって、”ばぐ”ってやつですかね…?」
彼女の言葉に俺の脳裏にビビッと電流が走る。
バグ――。
ゲーム上の不具合、運営の意図しない挙動等の事を指す言葉だ。
そうか、その手があったか!この世界は所詮データのゲーム。ならばこそ、必ずバグがついて回る。一日目の終了時点でも幾つかのバグ修正が報告されていた。
そうかそうか、あまりにもこの世界に現実味がありすぎてすっかり忘れていたぜ。バグ…、バグの存在があった。
俺は進むべき道程を提示され、そちら一直線に方向を定める。
「そうですね、突然アイテムがなくなったとなるとバグだと思いますね。ちなみに失くしたアイテムの名前とかって」
「あ、確か…苺のサンドウィッチって名前だったと…」
やはり俺が盗んでしまったもので間違いない。
料理系アイテムで、料理人NPCや《料理》スキルを持ったプレイヤーによって作られるタイプのものだろう。それならば…、
「それでしたら丁度持ち合わせがあるので私のを差し上げますよ」
「えっ、いいんですか?…あ、でも元々のものは友達が頑張って作ってくれたもので…」
とことん神様は俺の事が嫌いなのかな?
友達が作ってくれたんだね。そっかそっか、それじゃあ俺から渡されるサンドウィッチなんて毛ほどの価値すらもないゴミだよね、でもね…このサンドウィッチ本当は君のものだったんだよ。言えないけど。
「なるほど、ご友人が手掛けたものだったのですね。それはお気の毒に…。――であれば猶更こちらを受け取っていただきたい」
「…え?」
「バグで消えてしまったものは戻りません。だからせめて私が同じアイテムで補填します。きっと元々のものとは天と地ほどの差があるでしょうが、許していただきたい。――そして、またご友人に作って貰えばいいんです。失くしてしまったと謝って、もう一度だけ作って欲しいと願えば、きっと作ってくれますよ。だって、――友人とはそう言うものなのですから」
風が吹く。
彼女の金色の髪が舞い、俺の深く被っていた外套も風に吹かれて取れる。白い髪の先がふわりと浮き、俺は焦りを気取られないように外套をゆっくりと被り直した。
――決まった。
完璧だ。天才的な台詞回しに、ここぞの言うタイミングでのそよ風…!全てが嚙み合って、天才的な場面を描写できた。こりゃ傑作だね。これ以上に完璧な場面は最早再現できまいよ。
紳士プレイも見事にはまったし、文句のつけようもないだろ。
「わ、わぁ!あり、ありがとうございます…!た、確かにそうですね!うんうん!凄い!その通り!」
俺からサンドウィッチを受け取り、金色のポニーテールをぴょこぴょこと揺らして早口で捲し立てる彼女を見て、俺はうんうんを頷く。完璧だ。俺の事をなにも疑っていない。そりゃそうだ。俺だってこんな対応されたら疑わないとも。完璧すぎて参っちゃうねこりゃ。
「それじゃあ私はこれで…」
取れかけた外套をしっかりを被り、その場から去ろうとする。
紳士はクールに去るぜ、いつボロが出てもおかしくないからな。このまま逃げ切る…!
そうして、その場からの逃走を図ろうと背を向けた時、
「あ、あのっ、お名前は…!」
「……フレンドシステムが解放でもしたらきっとまた会えますよ」
体の良い断り文句である。
仕方ないよね、なんで俺の悪事の一端がバレかけたプレイヤーに名前を名乗らにゃいかんのですか。そんなリスクある行動、紳士はしませんよ。
つかつかと靴の音を鳴らしながら、俺は彼女の下から逃げる。下手な情報をこれ以上与えるわけにはいかないからな。
「きっと…絶対ですからね…!」
そんな言葉を聞きながら、俺は安堵しながらその場からそそくさと離れるのだった…。
「必ず、絶対…」
そんな言葉が、再び彼女の口からぽつりと漏れた。
◇□◇
【配信決戦】塵芥・ルノについて語る part8【AbyssGrow】
232:名無し ID:uhYg2c+WH
窃盗スキルゲットしてからあいつは変わったよ
237:名無し ID:HMZ3bALpT
>>232
悪い方にな
244:名無し ID:/b7XXRPMi
あれさぁ影魔法に窃盗効果乗るの流石におかしくない?
実質影魔法の範囲=窃盗範囲じゃん影魔法の射程長いんだから馬鹿だよ
247:名無し ID:ng1KIIR15
>>244
それ修正くるらしいよ
窃盗スキルは自分の範囲10mにしか適応されなくなるってよ
254:名無し ID:GhW/Cliz7
最初からそうしろボケと言いたい
256:名無し ID:YYGtS3QeZ
>>254
正解
257:名無し ID:oGUi7t5Ra
まぁ想像以上に窃盗スキル持ちが暴れすぎたんだろ
264:名無し ID:ZRaV4DM/1
塵芥以外にも何人か窃盗で暴れてたしな
268:名無し ID:ZaQZzGpPt
それより塵芥のコメ欄どうにかしろよ運営は
もうぐちゃぐちゃだぞ、アンチと擁護民と杞憂民と何でもいい連中でぐちゃぐちゃだ
270:名無し ID:DroCgRf3Z
もうあいつんとこはそれでいいよ受け皿的役割だ
277:名無し ID:J5ONyP+4V
必要悪と化したよ塵芥のコメント欄は
278:名無し ID:WJj+IvQYu
民度悪すぎんだろ
281:名無し ID:ytCrSsBw1
血塗れのとこから流れてきた連中も怖いやつ多すぎんよ
286:名無し ID:x6BYaEL8V
コメントしてる奴なんてどうせ実際の視聴者の数%しかいねーんだし気にすんな
292:名無し ID:7B59y7yh2
どうにか塵芥をゲームから引きずりおろせねぇかな
299:名無し ID:o3WRXyg4D
>>292
無理に決まってんじゃんバーカ
303:名無し ID:UZMnyNYXQ
>>292
嫉妬?w嫉妬かな??wwwゲームできなくてイライラしてんねぇww
304:名無し ID:6CKwYyoUr
PKしなくなっただけましだろこいつ
307:名無し ID:GbTftlrLB
>>304
その分手口が悪質になったんだから変わんねぇよ
312:名無し ID:vKiEogmhy
救いようがないタイプのクズ、それがこいつだよ
319:名無し ID:O5weIk3ey
>>307
殺されねぇだけいいだろーが
323:名無し ID:6wcUyLUF6
平行線の話すんナ
329:名無し ID:ThaJylBdd
たまねぎ
豚肉細切れのやつ
じゃがいも
にんじん
335:名無し ID:QwiMCSMeh
>>329
こーれ肉じゃがです
341:名無し ID:Sj7Vfj1yu
>>335
馬鹿めすき焼きだよ
345:名無し ID:TDoAhcmhY
>>341
すき焼きは牛肉だろうがガイジ
352:名無し ID:AD5mX2D03
>>329
しらたき入れない肉じゃが認めないんだワ
357:名無し ID:H5zeTl31G
こいつが窃盗成功しまくってるの見るのキモチェー!
363:名無し ID:bcnkmnBwK
>>357
ちょっとわかるわ
364:名無し ID:UMzbn7WBV
>>357
俺はいらいらする
367:名無し ID:yh5lMhpoU
えー、塵芥、窃盗バレました
373:名無し ID:/Y/L6hzV8
>>367
マジ?
377:名無し ID:IYzKnilo1
>>367
草
380:名無し ID:uGAGUjT3W
いや、バレてないだろ
385:名無し ID:74FCN48NC
こっからどうするか次第やな
386:名無し ID:nrLMvS4n7
いやむりだろこれおわりだよ
387:名無し ID:RoheZbQJ7
待て、この盗まれた方見覚えあるんだが
393:名無し ID:siPXWa7KG
>>387
あ
400:名無し ID:9e4ab3JiN
あ
402:名無し ID:9Zl6utlZg
あー
409:名無し ID:kEr/NVP90
やっばい
412:名無し ID:ZwIwZukVQ
なにだれ
418:名無し ID:Aqmqi/UfU
あー、すっごい言いくるめてる
420:名無し ID:Vvw6L65ad
やばいこれ、まずいこれ
427:名無し ID:5JFsy+dyI
アンチスレになっちゃう!ここがアンチスレになっちゃうよぉ
433:名無し ID:jh5PvsDTT
>>427
もう半分くらいはなってるだろ
439:名無し ID:YY4ruy7+W
待てこの子あれか?三人組アイドルの一人だ
446:名無し ID:ldiIkHBKa
>>439
その子が今見事言いくるめられて運命的な別れをしているのですが
451:名無し ID:ZftX7q6vo
うわあああああああああああああああ
453:名無し ID:omNnqqnD3
モモちゃんとこの子か
テレビ見ねぇからわかんねぇよ
456:名無し ID:8pIMq5zxP
アイドルに手出したら終わりよ
461:名無し ID:HKiFdkUgi
あーあ、終了だわこりゃ
463:名無し ID:q6vx/dzK0
あと一分もしないうちにここもぐちゃぐちゃになるよ
464:名無し ID:YGplziDUO
アイドルのもの奪って、しかもバレずに好感度も稼ぐんだからとんでもねーや
468:名無し ID:XoMglBxab
一生ついていくぜ!このカス
469:名無し ID:lWPCkphnG
名前なによあの子
472:名無し ID:IljpUzr29
>>469
包梨
479:名無し ID:sNuSSpxes
>>472
なんて読むねん
480:名無し ID:IljpUzr29
>>469
>>479
ホウリ
482:名無し ID:yQ/y7zw49
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
489:名無し ID:TFmHaYC3w
こんにちはー
495:名無し ID:i2dfbg1pe
この人死ぬべきだと思う
496:名無し ID:hv/9ve4ig
よっしゃー!宴だぁ
レスバトル祭りだァ
499:名無し ID:FjuFLo2m6
お問い合わせにみんなで行きませんか?そうすれば粛清されます
504:名無し ID:iSw63LBta
塵芥の事は嫌いだけどよぉ、奴のおかげでこんな祭りが開かれんなら最高だぜ
509:名無し ID:CPZ1FNplb
もっと暴れろ塵芥
俺たちに暴力をふるわせる機会を作り続けろ
512:名無し ID:BFZTm6uk/
ルノというプレイヤーをたたける場所はここですか?
515:名無し ID:M2qkHxxDE
いらっしゃいホウリちゃんの信者共
とりあえず挨拶がてら土下座でもしてもらおうか、わかるかジャパニーズDOGEZA
516:名無し ID:NFxsTVAsA
ゴミ捨て場の決戦
522:名無し ID:8KtSn6qtx
>>516
穢すな
524:名無し ID:nVmY6Nrm3
あーもうめちゃくちゃだよ