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ファーストペンギンズ

 どんぶらこ、どんぶらこ……。

 揺られる船上、俺たちは揃いも揃って困ったような表情で向き合っていた。

 すでに磔にされていた俺たちは解放されており、全員が面と向かっている状態である。そんな状況の中で、一人のプレイヤーがこう呟いた。


「……どうすりゃいいんだ、これ」


 ──そう、どうすればいいのか、という疑問である。

 俺たちはノリとその場の勢いで船に乗り込み、NPCたちに見送られて出航した。だが、俺たちにはジンベイやナミのような操舵手や航海士がいない。今現在、運任せの航海中である。


 ……俺たちプレイヤーは水中での活動ができない。

 正確には、海中にプレイヤーボディが浸かっていると、スタミナが消費され、それが尽きた時点で溺死するのだ。

 つまり、この船の外は俺たちにとってデスゾーン。一度海に飛び込めば、ほぼ死が確定するようなものだ。


「この後予定あるからとりあえず海飛び込んで様子見てくるわ」


 誰かがそう言って、船から海へと飛び込んだ。

 プレイヤーは例外を除いて教会でしか復活できないため、今死ねば船からの脱出はできるのだ。そのため、他にやることがあったり、船作りには惰性で参加していた奴はとりあえず死ねばいい。元々、地下労働施設にいた時も師匠にバレないように自殺をして街にデスルーラする奴も結構いた。だからこそ、人数不足を防ぐためにプレイヤーを餌にして俺のようなプレイヤーをあの場に誘っていたのだろう。


「達者でなぁ」

「ジンベイザメいたら教えてなぁ」


 入水前の準備運動を終え、ばしゃーんと海へと飛び込んでいったプレイヤーへとそう叫んだ。だが、次の瞬間──、



 ──人形じみた可愛い巨大鮫がばしゃんと海中から飛び上がった。

 その鮫の口元には、先ほど海へと飛び込んだプレイヤーがぷらぷらと揺れていた……。


「きゃ、きゃーッ!!!B級映画よォ~ッ!!」


 突然のB級映画ですら最早古いその光景に、身体を抱き合って悲鳴を上げる。


 ひ、ひぃ……!こ、この海、化け物の巣窟だ……!

 流石に運営にも良心はあるのか人形みたいなファンシーな鮫だが、それでもだ!や、やってらんねぇぞ……!

 俺が叫ぶと、更に幾人かのプレイヤーが自殺するように首を切った。俺の傍で首を切ったプレイヤーが俺へとのしかかり、咄嗟にその身体を抱きかかえる。


「お、俺……海洋恐怖症……」

「な……ッ!?ば、馬鹿野郎!規約に海中にも敵Mobがいるって書いてあっただろうが……!」

「こんな大きいとは、思わなかっ……た……」


 幾名もの魂が空を駆ける。

 航海士や操舵手がいないことは勿論、俺たちにはゾロやルフィのような戦闘員もいない。しかも、悪魔の実を食ってもないのにろくに泳げないのだ。


「は、覇王色の使い手はいねぇのか!?」

「いる訳ねぇだろ!俺たちは麦わらの一味じゃねぇ!東の海(イーストブルー)で消えるレベルの弱小海賊団だ!」


 三十人前後いた船員はいつの間にか半分の十五名程度にまで減少していた。

 く、クソ……!折角、あの大陸から海に出れたんだぞ!?新マップがあるかもしれねぇんだぞ!?


 あの造船がクエストだとして、それがもう一度発生する道理がどこにある!?

 師匠と多くのNPCが手伝ってくれたのは、間違いなく誰かがフラグを踏んだからだ!もしもこの船が壊れて、俺たちプレイヤーが次の船を作ろうとしても、NPCは金を払わないと手伝いやしない!そういう仕様だからだ!

 少なくとも、実質無料(タダ)で新マップを目指せるのは今しかねぇんだ!

 お前らだって”何かがある”と分かってたから逃げ出さなかったんだろ!?じゃなきゃなんであんなスキルレベルも上がらない強制労働を強いられてたんだ!?


 俺たちプレイヤーは飽きる生き物だ!

 次のマップを見つけて、新コンテンツを解放するべきなんだよ!そうやって食い飽きないように、飽食しないように、遊び続けるのが俺たちだろ!?


「あちぃ演説じゃん」

「いいね、お前……アーロンくらいにはなれるよ」


 俺の演説が心に響いたのか、船上のプレイヤーたちが立ち上がり、すでに事切れた死体の山を海へとぽいぽい落とした。邪魔なものを掃除しようね。

 付き合ってられないと首を切って死んだ馬鹿共はもういい。奴らはこの戦いが長引くと予想し、今までの労力とこれからの拘束時間を考慮し、死んで現大陸に戻った方が得策だと考えた連中だ。


「新世界へは、この面子で行く……!」


 約十五名のカットインが次々と入り、俺たちは新天地を目指す。

 ──世は正に、大海賊時代……!時代がうねり、新世代が台頭する混沌の始まり……!




「──ぎゃーッ!!」


 格好つけたものの、結局のところ誰もこの船を思うように動かせないため、何も進展していない。今も、甲板に立っていたプレイヤーがポップな蛸足に巻き取られ、海へと引きずり込まれていった。


 海中生物は軒並みデカいが、その風体がやけにファンシーだ。恐らく、海洋生物に至っては下手にリアルにするのはよろしくないと運営側が判断したのだろう。

 カラフルな色付けの巨大な蛸足が一人、また一人と次々とプレイヤーの身体にするりと忍び寄り、そのまま海中に引きずり込む。


「悪魔の実さえあれば……!」


 船の周りの海中から生える蛸足は、俺たちの乗る船を幾度となく揺らし、それによって転げ出てきたプレイヤーを海へと誘う。十五名ほどいたプレイヤーの大半はルーキーだったため、蛸足を避けたり、船の揺れに適応できなかったルーキー共はことごとくタコによって海に還った。


「ちょっと、減り早くない!?船出から三十分も経たないうちにもう全然いないじゃんか!」


 蛸足を前飛びで避けながらゴミが叫ぶ。

 タコに絡まれたせいで船員はぐっと数を減らし、今や俺たちの船団は六名しかいない。雑魚……!圧倒的雑魚……!


 種族人間は弱い。

 特に海中に引きずり込めば基本死ぬんだから、そりゃこんなタコ君に絡まれればどんどん減りますわ。やっぱ海ステージってゴミだわ。


「塵芥ァ!てめぇ良い案だせ!このままじゃ俺たちもタコに絡まれ続けて触手ENDだぞッ!!」


「待て……ダンジョン飯でこんな感じのあったよな!?」


「ダン飯の話やめろや!何かのバグが起こって二部とかやれッ!!」


 ゴミがうるせぇ……!

 俺だってダンジョン飯の話してぇ。だが、連中は何がどうして思考停止して俺に指示を仰ぐ!クソ…!こういうのは向いてねぇってこちとら理解しとんじゃ!なんでやらせんだよこいつらは……!


「連携して船に引っ付いた蛸足を引き剥せ!攻撃加えればタコ野郎だって多少ビビんだろ!!」

「あいあいさー!」


 指示を出し、各々が武器を出して甲板に張り付いた巨大な蛸足に攻撃を加える。その最中、別の足からの追撃を避けながらだ。クソだねこりゃ。


「駄目だ塵芥!刃が通んねぇ!俺らとこいつじゃ適正レベルに差がある!」

「んじゃどうすんだよォ~ッ!!!」

「それを考えんじゃ~ッ!!」


 蛸足が次々と俺たちに襲い来る中、俺らは醜い口論を始める。

 このタコ、明らかに物理無効タイプだ!だが、今生き残っている中に魔法職はいねぇ!全員勝手に死にやがった!つまり、適正スキル持ちがいねぇ!


「お前の影魔法はどうや!?」


 ありゃ魔法の名を借りた物理型だ!魔力をろくに伴わねぇんだから、魔法と呼べる代物じゃねぇ!

 お前ら揃いも揃って物理型のせいでダメージを入れる手段がねぇんだよ!分かるか!?あ!?


「──詰みじゃんッ!?」


「──詰みだよッ!!」


 ゴミのその叫びに呼応するように俺も叫んだ。

 クソ調整が……!末期のスマホゲーじゃねぇんだ!ダメージが入らないにしても、もうちょいやり方があったろうよ!


「クソ!経験値だ……!魔法職も物理職も、どちらも必要になる盤面があるっつー裏付けになった!」


 俺たちはその垣根を軽んじた。

 別に魔法がなくてもどうにかなると踏んでいた部分があったんだ。その驕りがこの状況を生み出した。


「メラメラの実があれば……!」

「ヒエヒエの実だろ」

「いーやスナスナだね」


 スナスナは今一番なんもできねぇだろうがよ。

 結局オペオペさえあれば良かったんだ!オペオペの実よ、俺の前にリポップしてくれ!

 バキバキ、と船から嫌な音が鳴る。タコがずっと張り付いてやがるせいで限界が来てんだろう。元々、出航した時から、なんかミシミシ言ってたしね。


「まぁ、NPC連中が組み立てたってもパーツは全部プレイヤー(おれたち)産だしな」

「そりゃところどころにほつれが出ますわ」


 儚い航海だったぜ。

 結局この造船イベは何だったんだろうな。俺らに何をさせたいのかが分からないままだ。


「さぁな、NPC共は意味深な事しか言わねぇ。いつか全貌が明らかになるだろうよ」


 巨大な蛸足が数本、俺らへと迫る。

 どうせ船ももうじき沈む。それならさっさとタコ君に殺されてリスポーンするとしようかね。あーあ、無駄な時間を過ごしたぜ。次に航海に出るとき、どんだけの対価を払う事になるかなんて考えたくもないね。


 少なくとも、今回は大失敗だろう。

 俺たちプレイヤーは何一つ成果を持ち帰れず、ただ時間を取られた。各々が一様に溜息をついて、遠くを見た。すると──、



 ────そこには、先ほどまで見えていなかったはずの大陸が姿を現していた。



「は、ぁあああ!!!?」


 俺は叫び声を上げながら壊れゆく船上で蛙飛びし、迫っていた蛸足を寸でのところで回避する。

 そして、バッと周囲を見渡せば、俺以外のゴミ共も同様に間一髪のところで蛸足を避けて荒い息をついていた。


 ……ま、待て待て待て!!!

 おい、ありゃ幻か蜃気楼か!?大陸じゃん!新大陸じゃん!は!?さっきまで影も形もなかったじゃん!ふざけんなよ!?


「チャンクだ!描画距離に入ったんだ!」

「マイクラかよ!?」

「んなの遅いですよ!もう船は壊れかけですよ!?あそこまで持つわけがない!」


 最悪だ!新マップが見えてるってのにそこまで辿り着けないだと!?生殺しにも程がある!ダンジョン飯!あぁ、ダンジョン飯!


「ダン飯の煽り文句挟むな!」


 うるせー!俺もダン飯談義したかったんだよ!

 クソ!結局詰みじゃねーか!ただ目の前の新マップをちらつかされただけだ!気分が悪いとはまさにこの事だ!


「風の向きは新大陸の方だ!ワンチャンあるんじゃねぇの!?」

「ねぇよ、馬鹿か!?船の底は浸水し始めてんだ!ゴーイングメリー号だ!」


 見えてんのに辿り着けねぇ……!

 屈辱だ!このクソタコのせいで全てが狂った!やっぱり海洋生物はクソだ!俺は怒りのままに甲板にへばりついている蛸足へと斬りかかる。ダメージが入らなくともサンドバッグにしてやるぞァ~!!


「御供しよう……!塵芥さん!」

「八つ当たりいこうぜ~」


 蛸足へと怒りをぶつけに行く俺の背後に眼鏡をかけたゴミたちが加わる。

 俺たちは、せめて一矢報いようと蛸足へと迫り──!


「──……あ?」

「──……え?」

「──……ぉ?」



 ──突如として太陽が陰り、ばさりという音が聞こえた。

 そして、目の前のサンドバッグにしようとした蛸足がぶちぶちと音を立てながら千切れていき、その傍にいた俺たちもそれに巻き込まれる。


「わ、わ、わぁ~!!?」

「僕が死ぬ確率は何%だ……!?」

「た、たしゅけ……」


「塵芥!?眼鏡のゴミ!?ただのゴミ~ッ!?」

「……冗談きついぜ」

「前やってたゲームで空を飛びたがる馬鹿がいたなぁ……!」


 ばさばさ、と翼を羽ばたかせる音がする。

 ──そうして、俺たちは咥(・)え(・)ら(・)れ(・)て(・)大空へと連れ去られた。


 遥か下方に崩れゆく船が見える。

 冷たい風が頬を晒し、目を細めるとすぐ傍にいるゴミと目が合う。俺たちは互いに顔を見合ってフッと笑う。そして──、


「ど、どうする……?」

「分かんないっピ……」

「わ、ァ……ッ!」


 ──ゴミ、海に続き大空へ……!


 ◇□◇


 ──俺たちは恐らく巻き込まれた。

 ちらと上を見ると、そこには巨大な鳥の嘴と顔が見えた。翼の音がやけにうるさい。

 更に鼻腔には生臭い匂いがツンと鼻を抜ける。その原因は、この鳥が咥えているタコの足のせいだ。


 ──恐らくではあるが、この鳥は海面で暴れていたタコを狙って降りてきた。

 その目論見は成功し、蛸足を見事千切り取り、この鳥はそのまま空に逃げた。しかし、そこにはなんと微生物の如く俺たちがひっついていた。

 俺たちは見事巻き込まれ、今に至るというわけだ。


 ばさりばさりと巨大な翼が羽ばたき、俺たちはどこかへと運ばれる。危機を脱したと思えば、新たな危機とは恐れ入るぜ。

 この短期間で陸海空全制覇だ。実績解除のトロフィーくらいくれていい気がすんね。


 唯一の救いと言えばこの鳥の向かう先が、船から見えていた新大陸だという点だ。それもかなりの速度が出ている。船の数十倍だ。クソ速い。速すぎて微弱なダメージ判定が止まらん。

 このままこの鳥が新大陸に降り立てばワンチャン新マップの大地を踏みしめられる。それはデカい。

 だが、問題はぎりぎりと俺たちの身体がこの鳥の嘴によって持続ダメージを受けている点だ。


「結局これ海で死ぬか、空で死ぬかだったんじゃないですか?」

「さぁな。ワンチャンス生まれたんだから喜んどこうぜ」

「はぁ~、船もうあんな遠い……流石に死んだくせぇな」


 んでどうするよ。

 俺は回復を取り出して、摩耗するHPを保ちながら会話をする。


「あ、ずりぃ。くれよ」

「買うか?割り引かねぇぞ」

「わーったわーった。二つくれ。オーブ型」

「毎度ォ!」


 こういうところでも商売魂を忘れちゃいけねぇ。

 俺はほくほく顔で入金と同時に回復アイテムをゴミに送る。んで、結局どうするか。このまま大陸に入ったらこいつが下りるのを待つくらいしかできることは無いと思うが。


「まぁ、でしょうね」

「街を発見できればこっちの勝ちなんだがな」


 ──街の発見、それは引いては新たな転移門の発見だ。

 新大陸で街を発見できれば、その街中に転移門がある筈だ。誰か一人でもプレイヤーが街に侵入できれば、その街の転移門が活性化され、全プレイヤーがその街の転移門を使用できるようになる。


「……にしてもペリッパーみてぇな鳥だな」

「蛸足ブチぎってたんだぞ。相当強ぇ」

「もしかしたら新マップのボスかもしれませんね」


 あぁ、かもな。露骨にデカいし、可能性はある。


「……しりとりでもする?」


 ゴミがそう言って、俺たちは暇だからと頷くと奴は手始めに「リンゴ」と呟いた。俺も適当に続く。


「ゴール」

「ルール」

「る……ルーマニア」

「あひる」

「ルーブル」

「”る”攻めやめてッ!?」


 ゴミが俺たちにそう叫ぶ。

 いや、しりとりっつったらる攻めが基本だろ?それにまだ”る”のレパートリーあるって。ルカリオもルチャブルもルギアだっているぞ。


「なぜポケモンばかり……?」


 そうしてしりとりが盛り上がる中、突如として俺たちの背中にぞくりと嫌な予感が走る。

 一体何が、と俺たちは揃いも揃ってぶんぶんと首を振って周囲を警戒する。そして、ようやく気付く……!



「──わぁ……!ちょ、ちょっとうるさかったかな?」


 先ほどまでこちらを気にも留めていなかった巨大な鳥の眼光が、気付けば俺たちを睨みつけていた。

 そして次の瞬間、鳥は嘴を少し開けてぐるんとその場で横に勢いよく回転した。その重力に負けて、嘴に挟まっていた俺たちはものの見事に振り落とされ、「あ~……」と声に出しながら大空を落下し始めた。


 しまった、ご近所トラブルだ!


「俺たち馬鹿すぎん!?なぁ、流石に馬鹿すぎんか!?」

「万事休す……」


 やっちまったもんは仕方ねぇ!

 俺たちは確かに馬鹿だった!だが、それもこれもお前がしりとりをしようなんて言ったせいだ!暇だったから乗っちまった!お前は悪魔だ!しりとりの悪魔が!こうなったらテメェは空葬じゃァ~!!!


「喧嘩っ早さに磨きがかかったな塵芥!俺がお前を育てた!」


 俺を育てたのはアンパンマンだよぉ~ッ!!!

 俺たちは落下しながら互いに獲物を持ってぶんぶん振るうが、全く届かずにおままごとの如く空振りする。



「──……あ、あれ……あれ街じゃないですか!?」

「あ!?」

「んだ!?」


 突然、眼鏡がどこかに吹っ飛んだゴミが下を指差してそう叫ぶ。

 そのゴミの指の先に視線を向けると、そこには新大陸の海辺付近に密集する何か……、恐らくは人工物の集合があった。マジか……街だ!飛ぶ速度が速すぎて気付かなかった!やっぱ新大陸にも街がある!つまりは俺たちの新天地だ!


 風が眼球を乾かし、口内の水分を奪う。

 あと十数秒もしたら俺たちは地面にべしゃりだ。ふざけは無しだ!──ワンチャンスを狙う!


「──了解!」

「──あいよ」


 切り替え百点!校長先生嬉しいね!

 俺は影魔法を手に纏わりつかせるとそれを勢いよく伸ばし、眼鏡のなくなったゴミを掴んでそいつをこちらへと引き寄せる。

 もう一人のゴミは加速スキルでちびちびとこちらへと勝手に近づいてきていた。邪魔くさ!


「いいかゴミ、テメェを影魔法で一気に吹っ飛ばす。回復やるからそれ飲んで耐えながら飛距離伸ばして街に入れ。そうすりゃ転移門が活性化する。街に入る事だけを考えろ。死んでもいい」


 俺たち三人は、ハンターハンターのグリードアイランドよろしくゴミ、俺、ゴミと中空で固まって、ゴミの背中に足裏を当てる。

 もう時間がねぇし、一気に行くぜ。


「──《影魔法》ッ」


 祈り、願い、足裏から爆発した黒い塊が形を伴って勢いよく噴出し、ゴミの体躯を無理に前へと飛ばす。その反動を俺の後ろにいるヒソカ役のゴミが加速スキルを使って無理矢理に抑え込み、更に遠くへと飛ばす。無茶させた影が一瞬にして形を保てなくなり、ぐずぐずに消失する。


「《一陣の──」


 飛んでいった奴がスキルを叫ぶ声が一瞬にして聞こえなくなる。

 俺とゴミは発射されたロケットの一部が切り離されるように、前へと加速していくゴミを見届けながら落下する。


「フン、成長したなあいつも」

「お父さんったら……素直じゃないんですから」


 子供を見送る老夫婦ムーブをかましながら、俺たちはばちゃーんと海へと身体をぶつけて死んだ。高所から水面に落ちるとコンクリ並みに硬いって聞いたことあったけど、マジだったんだな。一瞬で死んだわ。


 俺とゴミが魂となって海中を漂う。

 教会へとルートが提示され、遠いからさっさと行こうかと俺たちは手を繋いでそちらへと向かおうとしたその時──、


「……またですよぉ?さっきからなんでしょうねぇ」

「ほんとぉ、不思議だねぇ」


 魂となった俺たちの耳に、そんな舌足らずな会話が聞こえてきた。

 俺たちは引っ張られる身体を必死に抑えながらそちらへとバッと振り向く。


 ──そこには、下半身に魚の尾を携える俺たちとは別種族の生き物がいたのだった。


『ま、まままま、人魚(マーマン)!?』

『あぇ~???』


 俺たちの魂はそれ以上そこに滞在することは許されず、とんでもない速度で教会へと引き摺られていくのだった……──。


 〔新たな街が発見されました!〕

 〔固有転移門が解放(アンロック)されます!〕

こちら、実際はマーマンではなくマーメイドですが、あまりその二つの差が分かっておらず塵芥は適当に叫んでおります。

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