表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/59

趣味:PK

 

 プレイヤータウン某所――。


「どうしてこうなるんだろなぁ」


「――アッ!いたっ!いたぞ!手配書通り!」

「捕まえたら百万だァ!!大人しくお縄につけやゴミぃ」

「俺と遊ぼうぜぇ、ルノくぅん……?」


 この掃き溜めの様なゲームの配信が始まって数日、環境は目まぐるしく変わっていった。

 中身が有名人のプレイヤー以外は悉くがゴミみたいな本性を露わにしたし、そのゴミ化したプレイヤーのたちは血眼になって俺を探している。


 それ程大したことはしていない。

 やった事と言えば誰でも一度くらいは思いつく事だ。ただそれだけでこうも生き辛くなっちまった。有名税ってのは辛いもんだね。

 俺のプレイを覗き込んでいるリスナーも何故か俺が破滅することを祈ってる輩が多い。視聴者層がクソだ。


「さぁ皆さんご覧いただいていますでしょうか。あの背中こそ平和主義(グリーン)プレイヤー最大の怨敵と言われている人物、運営より与えられた数少ない【Nickname】保持者、その名は――」


 近場の家の屋根からそんな白熱した声が聞こえる。

 咄嗟にそちらを見ると、そこには情報屋を名乗る不審者がぺちゃくちゃと舌を回していた。


 ザッと花壇の土を掌に掠め取り、それを狙いすまして後ろへと放り投げる。それと同時に俺の影がずずず…と蠢き――、


「――”塵芥(ちりあくた)”」


 背後から聞こえる怒号に耳朶を震わせながら、俺はログイン直後の事をなんとなく思い出していた。


 ◇□◇


 ――視界が粒子に包まれたと思ったらなんか森の中に立っていました。

 右を向いても左を向いても緑緑緑。周りに俺以外のプレイヤーがいないことを見るにプレイヤーのスタート地点はランダムらしいな。

 果たして俺のスタート地点が当たりなのか外れなのかは置いてといて、さっさと拠点になりそうな(プレイヤータウン)でも探そうかね。MMOって謳うなら多分あるだろそう言うの。


 腰に装備された鞘からナイフを抜き取り、邪魔な枝を切りながら進んでいると、目の前に白い雲のような何かがふよふよと横切るように現れた。


「なんだこりゃ……」


 mob(てき)の一種だろうか。だとしてももっと分かりやすくゴブリンとかスライムとかが出てきて欲しいもんだが。

 とりあえずとばかりに近づいてみると、こちらに気付いたであろう白い雲が途端に黒ずみ出し、刺々しく姿を変え始めた。


「……反射ダメージ確定のクソキャラ臭いぞ」


 元々ふわふわとしていそうだったその身体は刺々しく変形し、こちらに迫ろうとしてくる。序盤に出てきていいタイプの敵じゃないねこれ。

 しかし、非接触式であろう《影魔法》ならば問題なしだ。俺は即座に目の前の敵へめがけて影をぶつける。すると――、


「わぁ!ぴんぴんだぁ」


 影からの殴打など痛くも痒くもないというかのように、奴はずずいとこちらに迫るのをやめなかった。ナイフを振るっても棘が硬くて碌にダメージ入ってなさそうだし、なんか反射ダメージでも食らったのかダメージ現象(ビリビリ)きやがった。


 ….…なるほどね、――《影魔法》、外れスキルっぽいわ!

 俺はそんなことを思いながら、逃げ出した背中を鋭い棘によってぶっ刺され、無事死亡したのだった。ちーん。


 ◇□◇


 ――目を覚ますとそこは教会でした。

 なるほどね、死んだら教会にリスポーンと。ザ・ゲームって感じの仕様だな。座っていた長椅子から立ち上がり、教会の扉を押して外に出る。

 眩しい光がこちらを照らし、咄嗟に片手で陰を作って目を細める。


 ……デスルーラする形ではあるが、無事目的地であるプレイヤータウンにはありつけたらしいな。

 往来する人々、俺と同じような初心者丸出しの格好をした挙動不審な人影を瞳に捉えながら、俺はにぃと笑みを浮かべた。




 ――どうやら俺は、最初のスキルビルドを大きく間違ったらしい。

 街中で情報収集をしながらそう結論付ける。

 なにせ、現状mob……正式には魔物と呼称するらしいが、魔物を明確に倒せる手段が《ナイフ》しかない。しかし、それも射程距離(リーチ)が短いから絶妙に扱い辛い。


 それを補うための《影魔法》だったのだが、先の魔物戦でこのスキルの致命的な弱点が露見した。


「火力がねぇ」


 最初の運営説明の際に、《影魔法》を使用してプレイヤーを屠った時はその殆どを空中に投げ飛ばす形で使っていた。そのくらいはできる。しかし、こと魔物はそうはいかない。人間よりも強いし、硬い。恐らくダメージを与える点だけでいえば、人間にも碌なダメージは期待できない。


 まぁ、総括するならば――、


「《影魔法》は完全に搦め手スキル……、火力を期待はできねぇ」


 そういうことである。

 《ナイフ》は扱い辛く、《影魔法》は火力なし、最後の希望の《隠匿》は火力スキルではないから追々としても困ったことだ。


 ――困った困った、とても困った。

 最初にプレイヤーを殺して稼いだ(ドロップした)金もどうやらデスペナルティでかなり無くなってしまっている。

 魔物を倒して稼ごうにもスキルのせいで碌に稼げない。

 クエストなるものもあるらしいが、どこでそれを受けられるかもわからない。


 ならばできることは一つしかないよなぁ。



「――プレイヤーキル(PK)


 そう呟いて、街中をきょろきょろと見回しているプレイヤー達を見て、俺は舌をぺろりと出した。


 ◇□◇


 約三百名。

 それがこの”配信決戦!Abyss Grow”に参加しているプレイヤーの人数だ。

 街にいるプレイヤーの人数を見るに、恐らくは幾つかの街にプレイヤーは分散している様で、俺が今いる街もそれ程プレイヤーでごった返しているわけではない。裏路地なんかは特に人気もなく、現実かくやとばかりにしんと静まり返っている。


 ゲーム内時間は深夜。

 街灯だけが薄らとつく暗道に一人のプレイヤーが歩いてくる。

 そしてそれを家の屋根上から見つめる一人の男の姿があった。――はい、俺です。こんばんは。


 なけなしの金をはたいて買った黒い外套を被り、ナイフに光を反射させないように気を付けながら握る。

 ステルス行為により《隠匿》が発動し、俺の姿が更に夜に溶け込む。プレイヤーが表の街道に戻ろうとした瞬間、俺は伸ばしに伸ばした影を隆起させ、プレイヤーの顔に纏わりつかせた。


「え?なにっ?は!?バグっ?」


 影による視界不良に陥っている間にさっさか屋根から降りて騒いでいるプレイヤーに近づいてナイフでさくっと刺し殺す。わーい、切り裂きジャックも大喜びの殺人完了だぜ~!

 プレイヤーが倒れこみ、粒子となって消えていく。夜だとこの光景は意外と綺麗だ。ドロップアイテムは金と魔物の肉。いい金になるぜぇ。


 このゲームの所持品は、念じれば出てくるメニューから”アイテム”項目をタップすれば確認できた。今日の夜だけで十近いアイテムをぶん取れた為、中々にうまあじだ。

 しかし、落ちたアイテムはどれも魔物の肉や牙といった普通のものばかり。流石に武器が落ちるとかはそこまで期待していないが、もうちょい上振れも欲しいところだ。


「んーんんー」


 鼻歌を奏でながら、ステータスを開く。

 ささーっとPK現場から離れて、外套をしまい込み、何気ない顔で表の街道に合流する。



『ルノ』Rank.1

Perk(パーク)】1/1

 〈初心者〉

Skill(スキル)】3/7

 《ナイフ》Lv.2

 《影魔法》Lv.1

 《隠匿》Lv.1

Nickname(ニックネーム)】0/1 



 所持スキルの中でレベルアップしたのは《ナイフ》のみ。どうやらあまり簡単にレベルは上がらない仕様らしい。未だにRankやPerk(パーク)Nickname(ニックネーム)については分かっていない。進めていけば自ずと解明されると信じるしかないだろうが、気になるものは気になる。

 唯一判明したスキルの増やし方だって、クエストやアイテムの効果で増えるらしいという情報しかない。


「ゲーム初日って感じがすんなぁ」


 それも、(いなご)のようにMMOからMMOに移動する廃人のゲーマーが殆どいないからか、かなりの牛歩スタートダッシュだ。


「まぁ、寧ろそれが有難い限りだな」


 あと数千K(カルト)稼げれば相当動きやすくなる。この夜が明ければ情報は一気に回りだすだろう。下手したら討伐隊が立ち上がる可能性もある。その前に精々しゃぶらせてもらうとするかね。いやはやPK様々だな。


 そうして俺は再び黒の外套を纏い、裏路地に入っていくのだった。


 ◇□◇


【鬼畜】プレイヤーNo.114とかいうヤベー奴【AbyssGrow】

 

129:名無し ID:Qkm14OARx

誰の話してるんここ?

 

131:名無し ID:BqIil4SQo

>>129

書いてあるやろが、114のやつだよ

 

133:名無し ID:8yuAirpyn

>>129

No.114の配信画面見て来いよひでーぞ

 

136:名無し ID:6keTMjqUB

初日からPKとかやってんねぇ!

 

137:名無し ID:a+4PsaEMB

おれはすき

 

140:名無し ID:DDe/gvWDR

アンチになります

 

142:名無し ID:fEzgoDT83

っぱMMOはこうでなくっちゃなぁ

 

144:名無し ID:77+82+VuZ

でもPKだけだろ?

 

147:名無し ID:Qhn+2f8OX

>>140

無名にアンチもくそもねーよ

 

148:名無し ID:kmXkLp4Eh

配信見てる限りこいつPKは前段階としかとらえてねーよ

 

151:名無し ID:Vr19NFxaZ

>>148

んだよ前段階って

 

152:名無し ID:WQsMIlL1s

それよりナンバー329ちゃんが可愛い話しない?マジでいいよ

 

155:名無し ID:kmXkLp4Eh

>>151

俺だって知るかよ

何キルかした後にもうちょい溜まったら準備はいいか~って言ってたんだよ

 

157:名無し ID:supV53DrI

結局この114番はなにしたん?

 

160:名無し ID:MGXaztGF2

影魔法は結局どうなんだろな

 

162:名無し ID:wxfR/oksm

>>157

闇に紛れて無差別PK

 

164:名無し ID:yfGFABd0q

あ、こいつやん最初のブロック殺戮魔

 

166:名無し ID:CL15czfQT

>>164

ブロック殺戮魔?街でのPKのせいでもうそんな変な呼ばれ方してんの?

 

168:名無し ID:0iIRWsTEk

あー確かに言われてみりゃこいつ白髪だし似てんね

 

170:名無し ID:nFuuFffUT

なに何の話

 

173:名無し ID:yfGFABd0q

いや、SNSでも話題になってたじゃん

最初のプレイヤー紹介でブロックごとに映し出された時に一人だけのブロックがあったやん

 

あれ、そのブロックだったプレイヤー達が言うには、白髪のプレイヤーが殺し回った結果、たった一人になったらしい

 

175:名無し ID:MxmKJYv2X

>>173

えぇ

 

178:名無し ID:T4Gw6ycmE

>>173

こっわ

 

179:名無し ID:6jc0eKZGV

>>173

それが114番って言われてもまぁ不思議じゃないわなこのプレイスタイルを見るに

 

182:名無し ID:cizRsVt2/

だとしたら最高だわこいつ面白過ぎる

 

183:名無し ID:ZhxOMZ+PJ

>>173

あの時戦闘行為できるんかよ、運営無能やん

 

185:名無し ID:32e89hVlH

まぁ街中の戦闘行為も禁止してない時点で運営の無能さはお察しだろ

 

186:名無し ID:E0iAlMVSu

MMOにしちゃ確かに欠陥だよ安全地帯ねーじゃん

 

187:名無し ID:bPG24CFXN

>>186

店の中とかは安全みたいだぞ

あと宿屋とか

 

189:名無し ID:YIREKWcaG

とりあえずこいつ含めプレイヤーキラー連中は絵面がおもろいから追うわ

 

190:名無し ID:WCAfTu7+M

アイドルとかキルして炎上しねーかな

 

192:名無し ID:w3WiRiRF9

大抵のプレイヤーキラーは返り討ちに合ってるか、一回目上手くいってもそのあとで結構失敗してるけど、成功してるやつもいるってのが怖えよ

 

193:名無し ID:SdWu1I4TQ

>>192

本物ってことだよ

 

194:名無し ID:9J20QV1E+

化け物発掘コーナーだよこれ

 

196:名無し ID:iH37OojRZ

やっぱ日本産のプレイヤーはゴミばっかだ

 

198:名無し ID:sJZvJYvgn

ゲーマー廃人みたいなやつがいない分ましだろ

 

201:名無し ID:i4m6VEY8L

114視聴者数えぐいなめっちゃ見てるやん

 

203:名無し ID:d2pYEzGKT

>>201

そらこんなプレイングしてればな

 

207:名無し ID:PRB9W+0ae

一日目の接続数トップは決まったんちゃう?

 

213:名無し ID:77LN2LZox

いや流石に有名人枠が強えわ

 

216:名無し ID:/TtuWQjyI

>>213

そこはしゃーなしだわな

寧ろそこと張り合おうとしてる時点ですげーわ

 

217:名無し ID:7q5DoEWGe

マップにはボスもいるらしいし、はよ色々起きてほしいわ

ボス倒せば色々システムも解放されるらしいしな

 

219:名無し ID:qTTAcVKdZ

>>217

初耳だわ

 

222:名無し ID:2ZFq6H6iR

なんにせよこいつでも誰でも台風の目になることを願うわ

 

224:名無し ID:G6u9iCnXa

114さっきから不穏な動きしだしたし、色々楽しみだわ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想・評価を下さると更新速度が上がる可能性があります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ